マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

第34回

4つの役割を見直す

落藤 伸夫 2017年12月8日
 
「先週、上級マネジャーが財務的成果コントロールを行う場合の出発点についてお聞きしました。改善したい指標を選び、達成を目指す目標を提示することでしたね。」

「そうだ。そして今日は、それでもって何をコントロールしていくのか、考えてみようと思う。」

「これはもちろん『マネジメント・コントロール』というくらいですから、『マネジメントをコントロールする』ということで答えは決まっているのではないでしょうか?」

「そういうことだ。が、それだけか?」

「いや、『それだけか?』と聞かれると困ってしまうのですが、それ以上あるのですか?」

「もう少しブレークダウンしないと、何をどう改善できるのか分からないのではないか?」

「そうですね。では、ご説明をお願いいたします。」


マネジメント・コントロールの対象

「上級マネジャーは、KPIを設けて目標値と実績値を見比べ、問題があったら今までのやり方を変えていく。さて、何をだ?」

「うーん。それが分かれば苦労はありません。」

「そんなふうに言われると、自分が何を説明してきたのか、自信を持てなくなってしまうな。」

「あ、わかりました。マネジャーは、自分が果たすべき役割をきちんと果たせているかを見極め、もし不足があれば改善していくことになります。」

「そういうことだ。ちなみに、上級マネジャーの役割とは、何だった?」

「4つの役割ですね。『戦略創造・ブレークダウン』、『現場マネジャーへのマネジメント』、『部門間連携』そして『マネジメント体制の再構築』です。」

「そうなんだ。これは口で言うのは簡単だが、実行するのはとても難しい。だからこそ、上級マネジャーというのだろうな。」

「課題がハイクラスなので、ハイクラスのマネジャーが対応し、その給料もハイクラスという意味なんですね。」

「中川部長がそういうのは、もしかしたら皮肉なのかもしれないが、本当に、その言葉通りだよ。」

「わかりました。」


マネジメント・コントロールにならない例

「この点について、もう少し掘り下げげ考えてみよう。先日から何度か使っている例だ。あるラインを普及品生産から高級品生産に切り替えようとしているが、うまくいかない。目標としたKPIが実現できないんだ。上級マネジャーとしては、どうすれば良い?」

「ここであえてダメな例を言って良いですか?」

「お得意のヤツだな。」

「私はそうならないように気を付けていますが、でも、いつの間にかそうならないように気を付けなければなりません。『お前たち、あれほど言ったのに、目標を実現できないとはどういうことだ。なんとかしろ』と言うことですね。」

「そう。そういう言い方をしてしまうとしたら、MCSのことが全く分かっていないと言って良い。そういうマネジャーは、マネジメントを改善することを、その言葉をエスカレートさせることだと考えてしまいがちだ。」

「次は『何度言ったら分かるんだ?目標が達成できなかったら、泣くことになるのはお前たちなんだぞ』というのでしょうね。」

「そう。でも、それって、マネジメントを改善していると言えるか?」

「そうとは言えませんね。逆に、職場が殺伐としてしまうでしょう。」


4つの役割を改善していく

「では、MCSのことがわかっているマネジャーとしては、どうすれば良いんだ?」

「上級マネジャーは4つの役割を果たしています。『戦略創造・ブレークダウン』、『現場マネジャーへのマネジメント』、『部門間連携』そして『マネジメント体制の再構築』です。そのうちのどれか、もしくは複数がうまくいっていないから、現場が目標を達成できないのだろうと考えます。これら4つの役割のうちどれがうまくいっていないのかを明らかにし、改善していくのがマネジメント・コントロールなのですね。」


戦略創造・ブレークダウンの改善

「そうなんだ。例えば現場が、普段の仕事に熱中するあまり、戦略対応としての高級化路線への変更への準備を全く取り組んでいなかったとしたら、どうだ?」

「あります、あります。そんなこと。例えば、現場作業を変更するためのマニュアルを準備しなかった場合などがあります。」

「その原因は、何だと考えられる?」

「それは、もしかしたら、戦略対応としての高級化路線変更が現場に伝わっていなかったのかもしれません。つまり、上級マネジャーとしての『戦略創造・ブレークダウン』がうまくいっていなかったと言えるかもしれませんね。」

「そうだな。そうすると?」

「マニュアル整備をスケジューリングする必要がありそうですね。」

「そうだな。現場マネジャーにマニュアル整備への取組み日程を明確化させることができるだろう。」

「そうやって自分の『戦略創造・ブレークダウン』を改善していく訳ですね。」


現場マネジャーへのマネジメント

「では、マニュアル整備はスケジューリングされていたが、それが実行されていなかった場合はどうだろう。」

「なるほど。この場合は現場マネジャーがきちんとマネジメントしていない可能性がありますね。マニュアル整備のための時間を設けていないなどが考えられます。」

「そうだな。この場合は、どうする?」

「現場マネジャーが高級化路線へのシフトにしっかりと取り組むように、動機付けしなければならないでしょうね。」

「例えば?」

「進捗状況を報告させるという方法があると思います。」

「そうだな。そうやって高級化路線にしっかりと取り組むよう動機付けすることが『現場マネジャーへのマネジメント』と言えるだろう。」


部門間連携

「では、マニュアル整備をしようとしたのだが、品質管理部門へ照会していた特性値目標の返答がなく、それでマニュアルができていなかったとしたらどうだろう。」

「ああ、典型的な『部門間連携』のパターンですね。そういう場合には、上級マネジャー同士で協力関係を築くようコミュニケーションできると思います。」

「そうだな。現場マネジャー同士でコミュニケーションしても前に進まない時には、上級マネジャーが乗り出して連携関係を築いてやることができるかもしれない。」

「部長同士で連携を調整しておいてくれると、効果てきめんです」


マネジメント体制の再構築

「では、高級化路線を進めると、今まで想定していたのとは違うレベルの問題が出てきて、それがネックになっている場合はどうだ?」

「今までの検査能力では実現できない精度で製品チェックをしなければならない場合などですね。その場合には、それに対応できる人材と機材を導入する必要があると思います。」

「そうだな。それを言い換えると?」

「まさに『マネジメント体制の再構築』ですね。」

「そうなんだ。今までは工程に『品質管理担当』がいればなんとかなったかもしれないが、レベルが高くなると『品質管理部』を設けて、品質管理担当を指導していく必要があるかもしれない。」


「こうやってみると、KPIをベースに上級マネジャーが4つの役割を見直さなかったら、戦略の実現なんてできませんね。」

「そうなんだ。これを是非、みんなに理解してもらいたいと思う。」

「了解いたしました。」
 
 
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プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

昨年まで、現場マネジャーが行うマネジメントについて、世界標準のマネジメント理論である「MCS(マネジメント・コントロール・システム)論」をベースに考えてきました。日本では「マネジメント」について省みることがほとんどないようですが、世界では「マネジメントとはこういうものだ」という姿がきちんと描かれていて、それを学ぶように促されています。日本のホワイトカラーの生産性が低迷している原因は、もしかしたら、このあたりにあるのかもしれません。

昨年度は約1年かけて、現場マネジャーのマネジメントについて考えてきました。現場マネジャーは、現場で働く人たちが高いパフォーマンスをあげられるよう促すマネジメントを行なっています。一方で現場マネジャーも、マネジメントを受けます。現場マネジャーが行うマネジメントが現場の力をあますところなく引き出しているか、企業として目指す方針や戦略を実現できるよう導いているかという観点でのマネジメントを必要としているのです。

今年度は、連続コラム「マネジメントを再考してみる」の後編として、上級マネジメント(上級マネジャーの行うマネジメント)についてMCS論をベースに考えます。上級マネジャーがどんな役割を担っているか、それをどのように果たしていくかについて、体系的にご説明します。 企業パフォーマンスを向上させる世界標準のマネジメントに関する解説は、日本初の試みです。是非、お楽しみください。

コラム マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

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