マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

第17回

日常業務と経営戦略実行を両立させるマネジメント

落藤 伸夫 2017年8月4日
 
「戦略形成において上級マネジャーがどのように関与していくか、ご説明頂きました。」

「そうだな。上級マネジャーは、経営戦略の策定において、経営陣とも現場とも連携することで、社内の軸を一本通させるという役割を果たしていた。」

「上級マネジャーがこの役割をしっかりと果たさないと、社内は揺らいでしまいますね。大切な役割ですね。」

「そういうことだ。」


現場マネジャーのマネジメント

「そして次は、現場マネジャーをマネジメントすることだ。まず、上級マネジャーが現場の仕事について、どのように関わりあうかを考えていこう。」

「どのように、ですか?ちょっとご質問の意味が分からないのですが。」

「現場マネジャーは、現場の働き手が日常業務をうまく遂行できるようにマネジメントしていたよな。では、上級マネジャーは、その業務を行なっている現場マネジャーを、何を目的にしてマネジメントしていくのだろう?」

「確かに。現場の仕事については現場マネジャーがマネジメントしていますからね。単純に、屋上屋を重ねるようなマネジメントを行う必要はないと言えるのかもしれません。」

「そうだよな。もちろん、社内他部署との折衝など、上級マネジャーが関わらなければうまくいかない仕事もあると思う。しかし、上級マネジャーの真骨頂はそれだけではない。」

「とすると、上級マネジャーによる現場マネジャーのマネジメントは、何を目的としているのでしょうか?」

「それが、ここのところ強調している経営戦略なんだ。」

「なるほど。日常業務と経営戦略を融合させるマネジメントなんですね。」


戦略と日常を融合させていくマネジメント

「上級マネジャーは、経営戦略が確立した後では、それを現場にしっかりと実行させるというマネジメントを行うことになる。」

「確かに、それはそうですね。」

「それプラス、上級マネジャーは、現場が日常業務をきちんと果たしていくこともリードしていかなければならない。」

「確かに。上級マネジャーは、現場が日常業務をきっちりと果たしつつ、戦略を実行していくように仕向けなければならないという意味ですね。」

「そうなんだ。ここで気をつけなければならないのは、どういうことだと思う?」

「何度かお聞きしていますよね。経営戦略を実行するとは、多くの場合、『日常業務』とは別に『経営戦略』という業務を果たしていくという意味ではないということですね。」

「そうなんだ。経営戦略は、多くの場合、日常業務を変えていくことなんだよ。」

「例えば水道の蛇口を組み立てている我が社の工場の場合、日常業務が『水道の蛇口組み立て』で、経営戦略が『組み立て作業以外の何か他の業務』という訳ではありませんね。経営戦略を実施していくとは、『経営戦略で定められた、今までよりもはるかに高い品質を実現する水道の蛇口組み立て』という意味でした。」

「そうなんだ。それを行なっていくということが、経営戦略を実施していくということなんだよ。」

「了解です。」


駅移転プロジェクトに例える

「こういう仕事、何かに例えられないですかね。」

「何かに例えるとは?」

「私、この話を聞くたびに、東急東横線渋谷駅の移転のことをイメージしてしまうんです。」

「どういう意味だ?」

「以前に東急東横線渋谷駅は、地上2階にありました。」

「そうだな。」

「それが2013年3月15日深夜に、地下駅に切り替わりました。」

「うんうん。」

「東急東横線渋谷駅は2013年3月15日の移転まで、地上2階での仕事を100%きっちりと果たさなければなりませんでした。」

「そうだろうな。」

「一方で、地下駅に切り替わった瞬間から、また100%きっちり仕事ができるよう、配慮しなければなりません。地下駅への切替え準備として、3月15日のずっと以前から、いろいろな仕事があったと思います。」

「それこそ、膨大な仕事をこなしたんだろうな。」

「例えば、部下が新しい駅でもきちんと仕事をこなせるように、役割分担を再検討したことでしょう。」

「役割そのものも、変えたかもしれないぞ。新たに増えた仕事もあり、逆に不要になった仕事もあるだろう。不要になった仕事をやり続けて新たな仕事が忘れられるなんてことがないように、手配したはずだ。」

「それを規則やマニュアルの形で見える化したでしょうね。」

「マニュアルの書き換えが実際に、適切に行われたかどうかのチェックもあっただろう。」

「そういうことを一つ一つこなすことで、渋谷駅の移転が実現したのでしょうね。」

「ああ、俺もそう思うよ。」


「仕事を続ける」と「仕事を変える」のマネジメント

「ということは、我が社で経営戦略を実施する時にも、上級マネジャーは同じように動かなければならないという意味なんでしょうね。」

「そうだな。経営戦略の実行と一口で言うけれども、そのあり方は千差万別のバリエーションがあると思う。その中には、中川部長が言うように、東急東横線渋谷駅の移転に例えられるようなものもあるだろう。」

「もちろん、他のあり方もあるでしょうね。」

「でも、中川部長が言うように『日常業務をこなしながらも、それを変えていく段取りをつける』という仕事がどのように行われるか、一つの具体的なイメージを持っておくのは良いと思う。そうすることで、いざという時にしっかりと対応できるだろうかなな。」

「はい。」


 
 
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プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

昨年まで、現場マネジャーが行うマネジメントについて、世界標準のマネジメント理論である「MCS(マネジメント・コントロール・システム)論」をベースに考えてきました。日本では「マネジメント」について省みることがほとんどないようですが、世界では「マネジメントとはこういうものだ」という姿がきちんと描かれていて、それを学ぶように促されています。日本のホワイトカラーの生産性が低迷している原因は、もしかしたら、このあたりにあるのかもしれません。

昨年度は約1年かけて、現場マネジャーのマネジメントについて考えてきました。現場マネジャーは、現場で働く人たちが高いパフォーマンスをあげられるよう促すマネジメントを行なっています。一方で現場マネジャーも、マネジメントを受けます。現場マネジャーが行うマネジメントが現場の力をあますところなく引き出しているか、企業として目指す方針や戦略を実現できるよう導いているかという観点でのマネジメントを必要としているのです。

今年度は、連続コラム「マネジメントを再考してみる」の後編として、上級マネジメント(上級マネジャーの行うマネジメント)についてMCS論をベースに考えます。上級マネジャーがどんな役割を担っているか、それをどのように果たしていくかについて、体系的にご説明します。 企業パフォーマンスを向上させる世界標準のマネジメントに関する解説は、日本初の試みです。是非、お楽しみください。

コラム マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

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