マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

第20回

上級マネジャーが行うフィードバック

落藤 伸夫 2017年9月1日
 
「前回、上級マネジャーのマネジメントとして『現場目標・現場戦略の策定・伝達』についてお聞きしました。」

「そうだな。今回は次の『結果のフィードバック』に行くとしようか。」

「期初に提示した『現場目標・現場戦略』について、期末にパフォーマンスを測定・評価して部下、ここでは現場マネジャーになるかと思うのですが、彼らに伝えるというだけではないのですね。」

「よく分かったな。」

「どう複雑なのかは分かりませんが、MCSは単純でないということだけは分かりましたから。」

「いやいや、MCSはイタズラに難しい話ではないぞ。しっかり聞いてもらえれば『なるほどな』と納得感のあるものだ。」

「そうですね。では、それを教えてください。」


誰にフィードバックするか

「ここでポイントになるのは、誰にフィードバックするかということなんだ。」

「誰に?ですか?部下である現場マネジャーではないのですか?」

「残念ながら、そんなに単純なものではないんだ。」

「やっぱり、複雑なんですね。」

「自分が期初に指示したことが、期末に実現していない。何がいけないんだ?」

「部下に責任があるのでしょうね。もっと、頑張ってもらわなければならなかった訳です。」

「本当か?中川部長は、私の部下としていたときに、いつもそう思っていたのか?」

「はい。そう思っていましたよ。」

「本当にそうかな?ある時など、私の指示が悪かったのではないかと、かなり機嫌が悪かったように記憶しているが。」

「そう言われてみると、そんなこと、ありましたね。よくそんなこと、覚えていますね。」

「いや、私も、あれは印象に残る事件だった。盗人にも三分の理というだろう。聞き捨ててはならないなと考えたのだ。」

「これは大変な暴言ですね。私のことを盗人だとは。」

「いやいや、これは失礼した。ただ、社内で、それもかなり厳しいノルマなどを巡って議論しているときには、自分こそ善人、相手は盗人という意識になってしまうのが当然だと言いたかったんだ。その時、『自分は善人なので盗人である相手のことは斟酌しなくても良い』と考えてしまうと、全く何も前に進まない。つまり、ノルマを果たせないということだ。それでは部下にとっても、自分にとっても、メリットにならない。」

「何か、うまく誤魔化された気がしますが。まあ、気を取り直して話を前に進めましょう。確かに、社内で話をしているときには、自分が善人、相手は盗人という意識になってしまうこと、多いです。相手が部下であっても、上司であってもですね。」

「そうだろう。特に上司という人種は、部下が言うことを聞かないと『あいつは何を考えているんだろう?ノルマを果たせなくても大口を叩くとは。盗人みたいなものだな』と感じてしまうことが、多いのではないか?」

「そうですね。そうやって、一般論として言ってくれれば、私も気を悪くしなかったのに。」

「まあまあ。ということで、インパクトのある例えを使ったので、俺の言いたいこと、分かってくれただろう。フィードバックが、単に部下にパフォーマンスの測定・評価結果を伝えるだけのものではないことを。」

「自分自身にも、フィードバックするという意味ですか?」


2方向のフィードバック

「そうなんだ。特定の成果を目指してマネジメントをしたにもかかわらず、それが達成できなかった場合には、フィードバックは2つの方向性で行わなければならない。」

「部下へのフィードバックと、自分自身へのフィードバックですね。」

「そうなんだ。自分のマネジメントに改めるべきところがないか検討し、必要があれば改めなければならない。」


マネジメントのフィードバック

「でも、上司にとっては、自分のマネジメントを改めるのは難しいですよね。負けを認めているみたいで。」

「誰が『負けを認める』なんて言った?」

「だって、そうでしょう?特定の成果を目指してマネジメントをした。しかし目標は達成できなかった。なので目標を下方修正する。マネジメントにとって敗北以外の何ものでもありません。」

「どうして、そんな感覚になるんだろうね。マネジメントを改めるとは、目標を下方修正することではない。目標を達成できるように、自分が行なったマネジメント方法を改めることなんだ。」

「言われている意味が、よく分かりません。」

「例えば我が社の営業部門が、売上目標を達成できなかった。毎月、進捗会議をしてきめ細かくマネジメントしたつもりなのに、だ。どうする?」

「きまっているじゃ、ありませんか。ノルマ未達成は受け入れるしかありません。そして来期については、実現可能なレベルに目標を下げるか、それとも今までの水準を維持するかの判断になると思います。」


フィードバックをもとにマネジメントを改善する

「そうかな。例えばマネジメントとして従来は毎月に進捗会議を行っていたが、来期は毎週に行うことができるのではないか?」

「そう言われれば、確かに。」

「それに、今まで行ってきたのは進捗会議だった。これからは、毎週もしくは毎月の目標を達成できない場合には、対策会議を合わせて行えるのではないか?」

「対策会議とは?」

「部署としては目標を達成できなかったとしても、個人では達成できた者がいるかも知れないだろう。そういうメンバーのノウハウを、共有できるかもしれない。」

「そう言われてみると、そうですね。」

「やろうと思ったら、他にもいろいろ、できることはあるのではないか?」

「例えば小集団で競わせてみて、ノルマを最高レベルで達成したチームは表彰することができそうですね。」


3つのコントロールを活用する

「そう。そうやって、アクション・リザルト・ピープルの3つのコントロールを改善するんだ。」

「え?!」

「成功者のノウハウ共有は、アクション・コントロールだよな。」

「そうですね。『何をするか』を教えることになります。とすると、競わせて成績優秀チームを表彰することはリザルト・コントロールですね。」

「そうだ。そして小集団を組織したり、対面での話し合い頻度を毎月から毎週に増やすのは、ピープル・コントロールに該当すると言えるだろう。」

「なるほど。現場があげたパフォーマンスを測定・評価したとき、現場にフィードバックするだけでなく、このようにして自分自身のマネジメントを改善できるのですね。」

「そういうことだ。」

 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

昨年まで、現場マネジャーが行うマネジメントについて、世界標準のマネジメント理論である「MCS(マネジメント・コントロール・システム)論」をベースに考えてきました。日本では「マネジメント」について省みることがほとんどないようですが、世界では「マネジメントとはこういうものだ」という姿がきちんと描かれていて、それを学ぶように促されています。日本のホワイトカラーの生産性が低迷している原因は、もしかしたら、このあたりにあるのかもしれません。

昨年度は約1年かけて、現場マネジャーのマネジメントについて考えてきました。現場マネジャーは、現場で働く人たちが高いパフォーマンスをあげられるよう促すマネジメントを行なっています。一方で現場マネジャーも、マネジメントを受けます。現場マネジャーが行うマネジメントが現場の力をあますところなく引き出しているか、企業として目指す方針や戦略を実現できるよう導いているかという観点でのマネジメントを必要としているのです。

今年度は、連続コラム「マネジメントを再考してみる」の後編として、上級マネジメント(上級マネジャーの行うマネジメント)についてMCS論をベースに考えます。上級マネジャーがどんな役割を担っているか、それをどのように果たしていくかについて、体系的にご説明します。 企業パフォーマンスを向上させる世界標準のマネジメントに関する解説は、日本初の試みです。是非、お楽しみください。

コラム マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

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