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マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

第35回

現場マネジャーへのマネジメントを改善する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「上級マネジャーが自分のマネジメントについてコントロールする、つまり改善する時には4つの役割で考えると良いと教わりました。『戦略創造・ブレークダウン』、『現場マネジャーへのマネジメント』、『部門間連携』そして『マネジメント体制の再構築』です。」

「そうだったな。」

「ここでもし良かったら、深掘りしてお聞きしたいことがあるのです。」

「何だ?」

「現場マネジャーへのマネジメントです。」

「なるほど。」

「先日、高級化路線への対応が求められている場合に、マニュアル整備はスケジューリングされていたけれど、それが実行されていなかった場合について考えてみました。」

「そうだったな。それで、現場マネジャーがしっかりと取り組むように動機付けすべきだろうという話になった。」

「進捗報告させるというマネジメントを加えることでしたね。」

「それが何か?」

「それはマネジメントの改善として、あるべき姿の一つだとは思います。でも、それだけではないような気もするのです。」

「そうだな。もう少し、現場マネジャーをしっかりとマネジメントする必要がある場合もあるだろう。」

「それを、お聞きしたかったのです。」


現場マネジャーへのマネジメントの本質

「だったら考えてもらおう。『現場マネジャーへのマネジメントの本質』は何だ?」

「なるほど。何でしょう?彼らがきちんとマネジメントをするよう、促すことですか?」

「そうだな。しかし、促すだけで現実に現場マネジャーは、自分の仕事を果たせるのだろうか?」

「それは、うーん、難しい場合はあると思います。例えば、あるマネジャーはその現場が初めてだったとか、不幸にして今直面しているような問題に遭遇したことがないという場合だったら、自分の仕事を果たすのに相当な困難を感じていると思います。」

「そうだよな。そのような場合に『促す』だけでうまくいくだろうか?」

「水が怖い子供の背中を押して海に飛び込ませるようなことに、なりかねませんね。」

「とすると、現場マネジャーへのマネジメントの本質は?」

「うーん。」

「俺は『現場マネジャーがうまく仕事してくれるよう、何が何でも、自分ができることをすること』だと考えている。」

「また相変わらず、三上取締役らしい表現ですね。ものすごく強制感があります。」

「いや、強制ではない。というより、現場マネジャーがうまく仕事してくれるよう、自分ができることを最大限にするということだ。促しや強制で仕事してくれるなら、そうする。しかし、それではうまくいかないなら、その他の方法も取る。」

「総論理解、各論見当つかず、といった心境です。」


現場マネジャーのマネジメントとは

「じゃあ、聞こう。中川部長は、自分のノートに聞いてくれ。現場マネジャーが果たすべき役割とは、何だった?」

「それは、この5年間で覚えました。『現場パフォーマンス向上への貢献』、『連携』、『戦略対応』、『矛盾解消』、そして『環境整備』でしたね。」

「そうだな。覚えているとは、立派ではないか。」

「お誉めいただいて、光栄です。」

「これらは、何のために行っているのだったかな?」

「はい、ええ・・・。これはノートを見させて頂きます。ああ、分かりました。『短所・長所メカニズムを働かせる』、『方向合わせメカニズムを働かせる』、そして『知的外段取りを行う』ということでしたね。」

「そうなんだ。」

「だんだん、分かってきましたよ。現場で働く人々が『他人の短所を自分の長所で補ってパフォーマンスを高める』ように、『方向性を合わせて無駄のない仕事ができる』ように、そして『現場が自分の仕事に集中できる』ように、マネジメントを行うということですね。」

「それを実現すべく『現場パフォーマンス向上への貢献』、『連携』、『戦略対応』、『矛盾解消』、そして『環境整備』という役割を果たす訳だ。」

「しかし、このようなマネジメントが簡単に、完璧にできる訳ではありません。試行錯誤することになります。」

「成功確率の高い試行錯誤の方法論を『PDCAを回す』と言うよな。」

「そうか、現場マネジャーが自分のマネジメントについてPDCAをうまく回せるようにする。それが現場マネジャーへのマネジメントの本質なんですね。」

「そうだ。そのためにできることなら、何でも行う。」


部下がPDCAサイクルを回すための支援

「先ほどの『高級化路線対応でマニュアル整備が実行されない場合は、進捗報告させる』というマネジメントが行えるというお話について、分かったことがあります。」

「何だ?」

「これはまさに、現場マネジャーに自分の仕事についてPDCAサイクルを回すように促す手段だったのですね。」

「そうだな。例えば進捗が遅れていることを報告する場合に、その事実だけを報告する現場マネジャーはいないだろう。」

「そうですね。そんなことをしたら、取締役から大目玉を喰らってしまいます。進捗報告書を書く時に『対策部分が足りないな。きっちりと対策を考えて、一部は実行してからでないと叱られてしまう』と考えて、有効な策をひねり出し、実行すると思います。」

「あはは。少し本末転倒な気がするが、しかしみんなそんな時期を経験するのだよな。それを積み重ねることで、自発的に、自分の頭で考えて、うまくマネジメントができるようになる訳だ。」


もう少し踏み込んだ支援

「でも、それだけで問題が解決できなかった場合は、どうすれば良いのでしょうか?」

「中川部長は、どうすれば良いと思う?」

「分からないから、お聞きしているのです。」

「そうか。では、今の例でいうと『プロジェクト進捗報告書』を、『日報』に置き換えたら、どうかな。」

「あ、そうか。現場マネジャーは、日報を見て、現場で働く人々が気付いていないポイントや、もっとうまくやるヒントなどを伝えますね。」

「そうだろう。だったら同じようなことが、上級マネジャーから現場マネジャーに対してできるではないか。」

「そうですね。例えば『部下に何度指示しても実行してもらえない場合には、彼には従えない理由があるのではないかと仮説を立てて検証してみろ。もしあったら、それを取り除いてやるのが現場マネジャーの役割じゃないのか』とアドバイスできるかもしれませんね。」

「そうだな。また例えば『部下が他部門との連携で困っているならば、現場マネジャーである君自身がそちらに出向いて話をまとめてやることもできるのではないか』と示唆できるかもしれない。」

「よく分かりました。現場マネジャーへのマネジメントとは、現場マネジャーがPDCAサイクルを回して彼らの仕事を改善できるように、上級マネジャーができることは『何が何でも』やることなのですね。」

「そうなんだ。」
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

昨年まで、現場マネジャーが行うマネジメントについて、世界標準のマネジメント理論である「MCS(マネジメント・コントロール・システム)論」をベースに考えてきました。日本では「マネジメント」について省みることがほとんどないようですが、世界では「マネジメントとはこういうものだ」という姿がきちんと描かれていて、それを学ぶように促されています。日本のホワイトカラーの生産性が低迷している原因は、もしかしたら、このあたりにあるのかもしれません。

昨年度は約1年かけて、現場マネジャーのマネジメントについて考えてきました。現場マネジャーは、現場で働く人たちが高いパフォーマンスをあげられるよう促すマネジメントを行なっています。一方で現場マネジャーも、マネジメントを受けます。現場マネジャーが行うマネジメントが現場の力をあますところなく引き出しているか、企業として目指す方針や戦略を実現できるよう導いているかという観点でのマネジメントを必要としているのです。

今年度は、連続コラム「マネジメントを再考してみる」の後編として、上級マネジメント(上級マネジャーの行うマネジメント)についてMCS論をベースに考えます。上級マネジャーがどんな役割を担っているか、それをどのように果たしていくかについて、体系的にご説明します。 企業パフォーマンスを向上させる世界標準のマネジメントに関する解説は、日本初の試みです。是非、お楽しみください。


Webサイト:StrateCutions

マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

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