マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

第23回

MCSにおける配置・育成

落藤 伸夫 2017年9月22日
 
「上級マネジャーの役割について、最後の最後は『配置・育成』ですね。」

「そうだな。」

「上級マネジャーの役割として『配置・育成』は、あまりにも当たり前だと思うのですが、MCSの観点からすると何か示唆はあるのでしょうか?」

「MCSが最も目に見えるのは人事だからな。皆が一番知っている側面だろう。」

「そうなんです。特に、欧米企業では成果主義でバッサバッサと首を切られていくのが印象的です。これがMCSなのですか?」

「それだけがMCSだとは思わないけれど、でも、一つの現象と言えるだろう。」

「MCSとは、恐ろしいのですね。」

「いや、そうとも限らないと思う。」

「本当ですか?では、教えてください。」


マネジメントと現場仕事

「最初に、『マネジャー』というポジションについての考え方が、日本と欧米では異なる場合があるということを、言っておこうか。」

「マネジャーというポジションについての考え方が、日本と欧米では異なるのですか?どんな風にですか?」

「日本では、どのようにして、ある人材がマネジャーになるかどうか、決まるのだろうか?」

「ある課長代理について『彼は課長代理として頑張ってきた。大過なく過ごしてきたので、そろそろ課長にしてやるかな』という感じでしょうか。」

「そうだな。そのように決まっていくこと、多いと思う。」

「欧米では違うのですか?」

「俺が思うにはな、『現場の仕事』の上に『マネジメントの仕事』があるのではないんだ。『現場の仕事』とは別に『マネジメントの仕事』があるんだよ。」

「どういう意味ですか?」

「言葉の通りだ。『現場の仕事』では、働き手は、下積みから熟練工に成長していく。同じように『マネジメントの仕事』でも、マネジャーは、下積みから熟練のマネジャーに成長していくんだよ。」

「なるほど。」

「だから学校を卒業したての新人が、マネジャーになるという現象が発生する。」

「日本では考えられない状況ですね。」

「でも、欧米では当たり前なんだ。技術の勉強をした者が製造現場に就職する。マネジメントを勉強した者がマネジャーになる。」

「なるほど、それなりに辻褄が合っているわけですね。」

「そうなんだ。」


現場叩き上げのマネジャー

「欧米では、日本のように、現場で叩き上げのマネジャーはいないのですか?」

「そうでもないだろう。現場の働き手は、『熟練工』のレベルよりもさらに上がって『他人を巻き込んで仕事をしていく』というレベルに登ることがある。もっと上には『他人に仕事をしてもらって、自分は成果に責任を持つ』というレベルがあるだろう。」

「なるほど。現場の働き手が熟練工になり、『他人を巻き込んで仕事をしていく』や『他人に仕事をしてもらって、自分は成果に責任を持つ』というレベルに達した時、マネジャーとしての側面も持つようになるのですね。」

「そうなんだ。」

「こういう状況で、ある現場の働き手について『彼は熟練工として長らく頑張ってきたから、ご褒美でマネジャーをやらせよう』という発想になるだろうか?」

「ならないでしょうね。現場の仕事をしていた働き手の中で、マネジメントができる者が、もしくはマネジメントができると解釈できる相当の理由を持っている者が、マネジャーになるんだと思います。」

「そうなんだ。」

「欧米では『ジョブスクリプト』という考え方が一般的だからな。若手マネジャーを上位のポジションに移行させることができるかどうかを『上級マネジャーのジョブスクリプト』で判断するならば、同じジョブスクリプトを使って、現場叩き上げからマネジャーに昇進しようとしている者を判断すれば良い訳だ。」

「なるほど。」


適材適所

「このように考えると、適材適所がとても大切だということ、理解できないか?」

「分かります。ジョブスクリプトに書かれている要件を満たさない人材を配置すると、自分の責任になりますからね。」

「はは、『自分の責任になる』とは、いかにも中川部長らしい発想だな。ここは『本人のためにも、部下のためにも、ひいては会社のためにもならない』と言って欲しかったところだ。」

「失礼しました。でも、揚げ足を取らないでくださいよ。」

「一方で、ジョブスクリプトに書かれている要件を満たした人材を配置しても、うまくいかない時がある。」

「そういう時は、どうするのですか?」

「簡単だ。交代させるのだ。」

「ああ、だから欧米の企業では、マネジャーの首がすぐにすげ替えられるのですね。」

「そうだよ。但し、それは必ずしも降格を意味しない。その人物について『上級マネジャーとしての適性を有するが、ある仕事については強みが発揮できない場合がある』という注記が付くだけに止まることもあるだろう。」

「いくつかのポジションを経験させて、強みを発揮できる場所を探すわけですね。」

「そうだ。それがもう一つの『適材適所』の意味でもある。」

「なるほど。」


育成

「マネジャーへの任命が『熟練工として長らく頑張ってきた者に褒美で昇進させよう』ではなく、『マネジメントができる者に、もしくはマネジメントができると解釈できる相当の理由を持っている者に昇進させよう』という発想でされるとなると、でも、一つ問題点が生じますね。」

「何だ?」

「今やっている仕事よりも上位の仕事ができる、もしくはできる可能性があるということを示さなければならないということです。それって、負担ではないですか?」

「だからこそ、育成が大切になるんだよ。」

「そうか。私は、自分が就いたポジションの仕事がきちんとできるようになるための育成かと思っていました。」

「もちろん、それもあるだろうけれどな。しかし、将来に就くべきポジションに向けての育成も大切だ。」

「なるほど。MCSでは、人材育成をそのように考えているのですね。勉強になりました。」

 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

昨年まで、現場マネジャーが行うマネジメントについて、世界標準のマネジメント理論である「MCS(マネジメント・コントロール・システム)論」をベースに考えてきました。日本では「マネジメント」について省みることがほとんどないようですが、世界では「マネジメントとはこういうものだ」という姿がきちんと描かれていて、それを学ぶように促されています。日本のホワイトカラーの生産性が低迷している原因は、もしかしたら、このあたりにあるのかもしれません。

昨年度は約1年かけて、現場マネジャーのマネジメントについて考えてきました。現場マネジャーは、現場で働く人たちが高いパフォーマンスをあげられるよう促すマネジメントを行なっています。一方で現場マネジャーも、マネジメントを受けます。現場マネジャーが行うマネジメントが現場の力をあますところなく引き出しているか、企業として目指す方針や戦略を実現できるよう導いているかという観点でのマネジメントを必要としているのです。

今年度は、連続コラム「マネジメントを再考してみる」の後編として、上級マネジメント(上級マネジャーの行うマネジメント)についてMCS論をベースに考えます。上級マネジャーがどんな役割を担っているか、それをどのように果たしていくかについて、体系的にご説明します。 企業パフォーマンスを向上させる世界標準のマネジメントに関する解説は、日本初の試みです。是非、お楽しみください。

コラム マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

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