マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

第19回

現場目標・現場戦略の策定・伝達を行う方法

落藤 伸夫 2017年8月25日
 
「現場マネジャーへのマネジメントとして『現場目標・現場戦略の策定・伝達』と『結果のフィードバック』、『モチベーションアップ』そして『配置・育成』があり、これらがそれぞれ大切なこと、そしてこれらを連携させることが重要なことをお聞きしたところです。」

「その、現場マネジャーへのマネジメントの目的は何だ?」

「現場オペレーションがうまくいっていることを確認することと、経営戦略を実現できるよう現場オペレーションを変えていくよう促すことでした。」

「そうだな。」

「ということで、そろそろ各論をお聞きできればと思うのですが。」

「そうだな。そうしよう。」


現場目標・現場戦略の策定・伝達

「最初は、やはり、『現場目標・現場戦略の策定・伝達』ですかね。」

「そうだな。」

「これについては、以前に簡単にお聞きしました。全社目標として『売上を10%伸ばす。利益を20%アップさせる』と決めたとしても、それをそのままセールスパーソンに伝えれば実現できるという訳ではない。そういうお話でした。」

「現場マネジャーが、上司から聞いたことをそのまま伝えても、セールスパーソンの行動には繋がらないだろうかなら。」

「ということで、全社目標を部門目標にブレークダウンすることが必要だとお聞きしました。『わが部門では新規取引先100社開拓』などと現場目標を打ち出すのです。」

「そしてこれは、部門戦略を定めたことにもなる。」

「戦略とは、目標実現のための経路を定める意味合いがありますからね。売上や利益の拡大を、既存取引先への売上拡大によるのではなく、取引先数の拡大により達成しようと決めた訳です。」


現場目標・戦略を策定・伝達するプロセス

「さて、ここを少し詳細に眺めてみよう。上級マネジャーは、現場マネジャーに経営戦略を伝える時に、ブレークダウンしながら伝えていく。現場目標や現場戦略を明確化しながらだ。」

「はい。」

「その、現場目標や現場戦略は、上級マネジャーが独断で決めるものなのだろうか?」

「それではいけないのですか?」

「もし、現場が『私たちがいつも訪問している顧客企業の多くから「貴社では、貴社製品を使う時に同時に使うことになる消耗品を取り扱っていないの?」と聞かれる。これを取り扱えるようにすれば、10%の売上アップは簡単に達成できるだろう。卸売なので高い利益率も実現できそうで、20%アップも可能かもしれない』と言ってきたらどうする。それでも新規顧客開拓を命じるのか?」

「いや、その場合には、既存顧客への売上拡大に取り組むよう指示しますね。」

「そうだな。とすると、現場目標や現場戦略というのは・・・。」

「現場の知恵を取り込んだり、現場の状況を斟酌して決めなければならないという意味ですね。」

「そうなんだ。でも、それだけではないぞ。」

「それだけではないとは?」

「現場は、一方的に押し付けられた戦略を実行し、目標を達成したいと思うかな。」

「それは難しいでしょうね。」

「そう。戦略や目標を固めるには、現場と合意することが肝心なんだ。そうしないと、現場のモチベーションは上がらない。」

「だから現場との擦り合わせが大切なんですね。」


擦り合わせを行う仕組み

「実際、上級マネジャーによる現場マネジメントが成果を出せるかどうかは、この擦り合わせに大きく依存しているといって、過言ではないだろう。」

「ひどくもったいぶった言い方ですが、要は『コミュニケーションのやり方を工夫せよ』ということですね。」

「そうだとも。どういうコミュニケーションをすれば良い?」

「そうですね。コミュニケーションすれば良いことはすぐに分かりますが、どのようなコミュニケーションが良いのかを具体的に考えていくのは難しいですね。」

「我が社のように硬直化していると、難しいだろな。しかし、この取り組みについては、気を付けていると情報が入ってくるものだ。」

「そうなんですか?」

「これはテレビ番組で紹介されていたのだが、例えばあるコンビニエンスストア・チェーンでは、地域マネジャーが傘下の店長を集めて、定期的に会議を開いているそうだ。」

「ノルマを伝える会議ですね。」

「そうなんだけれど、それを実現するために行う具体策を、その場で発表してもらうそうだ。」

「なるほど。」

「いつもノルマ未達の店舗が、また以前と同じ策を打ち出してきた。とすると・・・。」

「マネジャーとしては、それでは今期も未達になってしまうのではないかと警告するでしょうね。」

「では、他に打つ手はあるかというと・・・。」

「それを考えるのが大変なんですよ。現場マネジャーとしては。」

「しかしその会議は、他の店舗がどのような取組みをしているのか、発表しているんだぞ。アンテナを高くしていれば、参考になりそうな策が一つや二つ、あるだろうに。」

「そう言われれば、そうですね。」

「一回限りや数回止まりだと、会議で良さそうな案を聞いたとしてもすぐに取り入れるという訳にはいかないかもしれない。」

「でも、例えば毎月開催されるなら、会議で聞いてきた案を店舗に持ち帰り試してみることができますね。次回の会議で報告できそうです。」

「まさに、そのように活用しているようだった。」

「なるほど。会議っていうと、何となく上位下達のしゃちほこばった場のように感じてしまいますが、そうではない活用法もあるのですね。」

「うまく利用すれば、現場目標や現場戦略について上級マネジャーと現場マネジャーが擦り合わせていく、効果的な場になると思う。」

「了解です。」

 
 
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プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

昨年まで、現場マネジャーが行うマネジメントについて、世界標準のマネジメント理論である「MCS(マネジメント・コントロール・システム)論」をベースに考えてきました。日本では「マネジメント」について省みることがほとんどないようですが、世界では「マネジメントとはこういうものだ」という姿がきちんと描かれていて、それを学ぶように促されています。日本のホワイトカラーの生産性が低迷している原因は、もしかしたら、このあたりにあるのかもしれません。

昨年度は約1年かけて、現場マネジャーのマネジメントについて考えてきました。現場マネジャーは、現場で働く人たちが高いパフォーマンスをあげられるよう促すマネジメントを行なっています。一方で現場マネジャーも、マネジメントを受けます。現場マネジャーが行うマネジメントが現場の力をあますところなく引き出しているか、企業として目指す方針や戦略を実現できるよう導いているかという観点でのマネジメントを必要としているのです。

今年度は、連続コラム「マネジメントを再考してみる」の後編として、上級マネジメント(上級マネジャーの行うマネジメント)についてMCS論をベースに考えます。上級マネジャーがどんな役割を担っているか、それをどのように果たしていくかについて、体系的にご説明します。 企業パフォーマンスを向上させる世界標準のマネジメントに関する解説は、日本初の試みです。是非、お楽しみください。

コラム マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

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