マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

第48回

(まとめ:3)マネジメントを成功させる秘訣

落藤 伸夫 2018年3月30日
 

「上級マネジャーのマネジメントを改善する方法として、役割を意識することと、その方法論に熟達することを教えて頂きました。それ以外に、気をつけるべきポイントはあるでしょうか?」


「そうだな。いろいろあるといえばあるが、特にここで言っておきたいことがある。」


「はい。それは何でしょう?」


「どんなマネジャーでも経験したことだと思うがな。『このように方向付けすれば、きっと部下はきちんと仕事してくれるはず』と思った通りには動いてくれないということだ。」


「部下は、思ったよりも無能だと考えた方が良いということですか?歯に衣着せぬ三上取締役らしいご発言ですね、久しぶりに。でも、取締役の厳しい言葉は部下よりも上司に向けられているものだと思っていました。」


「その通りだよ。俺は、上司には遠慮なく物申すが、部下にはよく考えて、思ったことの5割引で話すことにしている。どうしようもなく物分かりの悪い部下に対しては、時々、難しくなるがな。」


「もしかして、私がその『どうしようもなく物分かりの悪い部下』なのですか?」


「ご明察。」


「えっ、それは何故ですか?」


「そうではないか。マネジメントする上で『このように方向付けすれば、きっと部下はきちんと仕事してくれるはず』と思っても、その通りに部下は動いてくれないことについて、それは多くの場合、マネジメントの問題であることをしっかりと伝えたはずなのに。」


「そうでした。改めて復習させてください。」



マネジメントの近視眼問題

「では聞こう。部下がマネジャーの言うことを聞かない、少なくとも意図とは異なる言動をすることについて、その原因がマネジメントにある場合、それを何と言っていた?」


「マネジメントの近視眼問題ですね。特に短期的な視野、つまり手軽に成果が出るが、長い目で見るとデメリットが多いことをやってしまいがちであることを指して言った言葉です。」


「我が社でも時々、見受けられるな。売上目標を達成するため、決算月、息のかかった販売会社に商品を受け入れてもらい売上を水増ししてしまうなどという現象だ。」


「そうですね。数字を追求マネジメントには、そのような性質があると思います。」


「その原因は、何だった?」



原因(その1)目標の不適正

「一つ目は『目標の不適正』でしたね。」


「そうだな。どのようなことだった?」


「会社として一番に目指すものを目標とするのは、意外と難しいのです。例えば会社としては利益を出したいのだけれど、それでは営業部門の目標として提示できないので『売上』を目標にする。すると近視眼が引き起こされるのです。」



原因(その2)ロジカルな誤導

「では次は、ロジカルな誤導だ。どんな問題だった?」


「例えば会社全体として『営業利益率は現在5%だが、今期目標は10%にする』と提示したとしましょう。経営者は利益率の高い製品を開発してその販売に注力して欲しかったのに、現場はコストを下げる、それも研修費を削ったり、経験のない熟練者を未熟練者に置き換えるなどするという現象が生じることがあります。」


「まさに、近視眼的な対応にロジカルに誘導された現象だな。」



原因(その3)ゲームズマンシップ

「3つ目は『ゲームズマンシップ』でした。初めて聞いた言葉ですが、あまりにもはまっていたのですぐに覚えました。スポーツマンシップとは勝利と正々堂々を天秤にかけると、正々堂々を重視する姿勢でしたが、ゲームズマンシップとは勝利を重視する姿勢ですね。」


「勝つためには姑息な手段を厭わないという意味だな。」


「その、姑息の矛先が会社に向けられるとは、何とも悲しい話です。」


「それは多くの場合、同時に、顧客にも矛先が向けられていることになるな。」


「本当にそうです。」



マネジメントの改善(その1)目標の改善

「目標をベースにマネジメントすると、以上3つの弊害が生じる可能性が高くなる。それにどのように対処すれば良いのだろう?」


「第1は『目標の改善』でしたね。一つの方策として『指標をミックスする』という方法がありました。」


「そうだな。例えば?」


「例えば、押し込み販売をすると既存特定顧客への販売ウエイトが高くなります。なので、売上拡大目標と共に、既存顧客と新規顧客の販売ウエイトも目標に加えられます。」


「新規顧客開拓数(口座数)を目標を加えると、新規顧客への開拓をもっと強力に推進できるだろう。」



マネジメントの改善(その2)活動コントロールを活用する

「近視眼を防止するために、目標以外のツールも使えましたね。」


「そうだな。何があった?」


「どんなにノルマがシビアでも、マニュアルに沿った作業手順は遵守するという活動コントロールは、わが社でもしっかりと取り組んでいます。」


「ノルマのために急いで仕事をやり、不良品ばかり生産するのを避けなければならないからな。」


「本当に、そうです。」



マネジメントの改善(その3)人的コントロールを活用する

「では、人的コントロールの併用について考えてみよう。」


「はい。例えば作業現場で毎日行うことになっている朝礼は、ノルマ実現のためにどんなに急いでいる時でも、手順をないがしろにしないようにする雰囲気を醸成するのに役立っていると思います。自分が手を抜くと、いつも朝礼で集まっている仲間の迷惑になりますからね。それを避けたいと思うようになります。」


「そうだな。『人間関係』や『人の気持ち』はないがしろにされがちだが、実は結構、大切なんだ。もっと言えば、現場の働き手もマネジャーも、会社にいる全員が『我々は、会社を盛り立てることで自分自身も繁栄でき幸せになる、そういう一つの船に乗っている仲間だ』という意識を共有できることが、マネジメントの究極の目標なのかもしれないな。」


「私もそう思います。」


「では、ぜひ、そういうマネジメントを、MCSを活用することでわが社に持ち込み、浸透させて欲しい。」


「わかりました。来年度から、つまりは来週ということですよね、しっかりと、進めていきたいと思います。」


「期待しているよ。」




<マネジメントを再考してみる(上級マネジャー編) 完>

 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

昨年まで、現場マネジャーが行うマネジメントについて、世界標準のマネジメント理論である「MCS(マネジメント・コントロール・システム)論」をベースに考えてきました。日本では「マネジメント」について省みることがほとんどないようですが、世界では「マネジメントとはこういうものだ」という姿がきちんと描かれていて、それを学ぶように促されています。日本のホワイトカラーの生産性が低迷している原因は、もしかしたら、このあたりにあるのかもしれません。

昨年度は約1年かけて、現場マネジャーのマネジメントについて考えてきました。現場マネジャーは、現場で働く人たちが高いパフォーマンスをあげられるよう促すマネジメントを行なっています。一方で現場マネジャーも、マネジメントを受けます。現場マネジャーが行うマネジメントが現場の力をあますところなく引き出しているか、企業として目指す方針や戦略を実現できるよう導いているかという観点でのマネジメントを必要としているのです。

今年度は、連続コラム「マネジメントを再考してみる」の後編として、上級マネジメント(上級マネジャーの行うマネジメント)についてMCS論をベースに考えます。上級マネジャーがどんな役割を担っているか、それをどのように果たしていくかについて、体系的にご説明します。 企業パフォーマンスを向上させる世界標準のマネジメントに関する解説は、日本初の試みです。是非、お楽しみください。

コラム マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

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