マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

第10回

上級マネジャーの役割(マネジメント体制の再整備)

落藤 伸夫 2017年6月16日
 
「上級マネジャーの役割について、次はマネジメント体制の再構築ですね。」

「良く覚えていたな。」

「最初は、良くわからなかったのです。『マネジメント体制の再整備とは何ですか?』と、三上取締役にお聞きしたくらいですから。」

「そうだったな。俺も思い出したよ。」

「取締役は、意地悪をして教えてくれませんでした。」

「いやいや、教えたではないか。『その言葉通りだ』と。」

「だからそれが意地悪だというのですよ。」

「では君は何か?自分の部下から『マネジメント体制の再整備とは何ですか?』と聞かれたら何と答える?後学のために聞いておきたいよ。」

「いや、私も『その言葉通りだ』と答えると思います。」


マネジメントをコントロールするためにシステムをも見直す

「最初に基本用語を復習しておこう。『マネジメント・コントロール』とは、どういう意味だった?」

「コントロールとは、望む成果を得られるように行うべきことを調整することでした。マネジメント・コントロールとは、マネジメントで望む成果が得られるように、マネジメントに調整していくことです。」

「合格だ。ではもう一つの肝、システム化とは何だ?」

「担当者と役割を決めることではなかったでしたっけ?」

「当たらずとも、遠からずだ。組織や社会で特定の目的を実現するためのシステム化とは、担当者と役割を明確化した上で、うまくいかなかった場合にはコントロールできる仕組みを備えることだと俺は思っている。」

「なるほど。」

「マネジメント体制とは、とどのつまり、マネジメントできるように、それがうまくいかなかったら修正を加えられるように、担当者と役割を明確化したものと言えるだろう。」

「なるほど、なるほど。」

「とすると、ある体制でどうしてもうまくマネジメント出来なかったら、うまくマネジメントができる体制を作り変える必要が出てくるわけだ。」

「それをすることが、上級マネジャーの仕事な訳ですね。」


システムを見直す:担当者と役割を決める

「マネジメント・コントロール・システムを見直すとは、実際には何をすることなのだろう?」

「先ほどの話だと、システム化の第1歩は担当者と役割を決めることでしたね。それから、コントロールの仕組みを作ること。」

「そうだな。そのうち「コントロールの仕組み」の方は非常に奥が深いので、本当に説明するときにしっかりと伝えようと思う。今日は前半部分について触れよう。」

「担当者と役割ですね。」


誰が何を言うか

「我が社が最も得意とし、一方で苦労しているのが品質だな。」

「おっしゃる通りです。我が社は蛇口など水道用品の中堅メーカーとして、高品質の製品で知られていました。しかし、同業他社の製品も品質が上がってきた中で、その差別化が難しくなっていたのです。」

「でも今は、取組みが軌道に乗ってきた感があるな。どうやって、それを解決した?」

「品質管理部を置いたからですね。」

「そうだな。どうして品質管理部を置いたら、うまくいったのだろう?」

「責任の所在がはっきりしたからですか?」

「そうだな。それまでは、品質は社長じきじきの指示で、各部署がそれを実現するという位置付けだった。」

「それでは、事実上、誰の仕事でもなかったということですね。」

「そうなんだ。そこに品質管理部を置いて品質管理という仕事を一元的に任せたことで、仕事が回るようになったんだ。」

「それが『担当者と役割を決める』という意味なのですね。」

「そういうことだ。」


指示アプローチ

「この例から、仕事をやってもらうために2つのアプローチがあるのではないかと思うようになりました。」

「どういうことだ?」


「一つは『指示する』というアプローチです。」

「品質管理ができていないので、それをやれと掛け声をかけるというアプローチだな。」

「そうなんです。確かに、品質を実現するのは現場です。現場がきちんとした仕事をしなければ高い品質は実現しません。」

「ではなぜ、その現場に指示しても動かないんだ?」

「現場で考えなければならないことが、多すぎるのでしょうね。現場は進捗管理もしなければなりませんし、コストも考えなければなりません。もし進捗に問題が生じたら、もしくはコストが大きく嵩むようなことがあったら、一大事です。」

「その点、品質上の問題は、現場にとっては間接的だからな。品質でクレームが生じても、現場は営業部から小言を言われるだけだ。」

「比較すると、進捗やコストほど、品質に注力するモチベーションが持ちにくいという状況なのかもしれません。」

「だから品質は、後手後手に回るのだろう。」

「それともう一つ、品質は、きちんと管理すればするほど、自分たちが辛くなるという性質があります。」

「自分たちがきちんと管理しなければ、問題があることも認識せずに済むということだな。」

「私は取締役のように、実もフタもないことは言いにくいですが、本音を言うと、そう言うことです。」

「こういうメカニズムが働いているから、この場合、指示アプローチは機能しなかったと言うことだな。」


システム・アプローチ

「で、もう一つのアプローチは何だ?」

「もう一つは『システムを見直す』というアプローチです。」

「なるほど、具体的には。」

「品質管理部を置いたということは、不良品でクレームが来るようなことがあったら『職務怠慢だ。唯一の仕事でヘマをしてどうする!』と非難されるポジションを置いたということです。」

「品質に取り組むモチベーションが、格段に高くなるな。」

「もちろんです。」

「品質そのものが自分の役割となったので『管理しない方が楽だ』なんてことは言っておられなくなるだろう。」

「そうなんです。職務怠慢で叱られたくなかったら、きちんと管理しなければなりません。効果的な管理方法を考え、それを実行していくのです。」

「そういうメカニズムが働くから、システム・アプローチが有効だった訳だ。」

「そうなんです。」


指示アプローチからシステム・アプローチに切り替える

「ということは、取締役がおっしゃる『マネジメント体制の再構築』というのは、『もし指示アプローチでうまくいかないことがあったら、システム・アプローチを試してみる』と言い換えられるかもしれませんね。」

「ああ、確かにな。もちろん、それだけではないだろうけれど。」

「もちろん、マネジメント体制の再構築は、指示アプローチからシステム・アプローチへの転換に限ったことではないとは思います。」

「そうだとも。しかし良い指摘だと思う。指示が守られず、その指示の言葉を激しくしても守られない場合には、マネジメント体制を再構築するというアプローチに切り替える。これは素晴らしい、マネジメント・コントロールの方法だと思う。みんな、そこに気が付いてくれれば良いのだが。」

 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

昨年まで、現場マネジャーが行うマネジメントについて、世界標準のマネジメント理論である「MCS(マネジメント・コントロール・システム)論」をベースに考えてきました。日本では「マネジメント」について省みることがほとんどないようですが、世界では「マネジメントとはこういうものだ」という姿がきちんと描かれていて、それを学ぶように促されています。日本のホワイトカラーの生産性が低迷している原因は、もしかしたら、このあたりにあるのかもしれません。

昨年度は約1年かけて、現場マネジャーのマネジメントについて考えてきました。現場マネジャーは、現場で働く人たちが高いパフォーマンスをあげられるよう促すマネジメントを行なっています。一方で現場マネジャーも、マネジメントを受けます。現場マネジャーが行うマネジメントが現場の力をあますところなく引き出しているか、企業として目指す方針や戦略を実現できるよう導いているかという観点でのマネジメントを必要としているのです。

今年度は、連続コラム「マネジメントを再考してみる」の後編として、上級マネジメント(上級マネジャーの行うマネジメント)についてMCS論をベースに考えます。上級マネジャーがどんな役割を担っているか、それをどのように果たしていくかについて、体系的にご説明します。 企業パフォーマンスを向上させる世界標準のマネジメントに関する解説は、日本初の試みです。是非、お楽しみください。

コラム マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

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