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マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

第5回

上級マネジャーの役割(現場マネジャーの戦略機能)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「三上取締役の問題意識について、基本の基本、基礎の基礎のところは理解できたような気がします。ということで、ぼちぼち、本題に入ってもらいましょうか?」

「そうだな。上級マネジャーの役割だな。」

「そうなんです。と言いながら、これって実は5年前にお聞きしていたのでしたね。もしやと思って、昔のノートを見返してみたんです。」

「それは、優秀じゃないか。で、見つかったのか?」

「見つかりました。」

「だったら、俺の説明は不要なのではないか?」

「いえいえ、だからこそ、もう一度お聞きしたいと思ったのです。より深く理解するために。」

「了解だ。」


5つの役割

「ところで、上級マネジャーの役割。大きく分けて幾つあった?」

「上級マネジャーには5つの役割があると、5年前に教えていただきました。」

「ご名答。その中身は?」

「戦略に関わる『戦略創造・ブレークダウン』、そして『現場マネジャーへのマネジメント』と、複数の現場部門や経理部門などの管理部門を上手く連携させる『部門間連携』がありました。プラスして『マネジメント体制の再構築』と、『ファイナンシャル・リザルト・コントロール』がありました。」

「そうだな。よく覚えていたではないか。」

「当時の私のテイク・ノート能力を褒めてください。」

「そうだな。今ではもうろくして、ろくにノートは取れないだろうからな。」

「口の悪さは変わらないですね。」


戦略創造機能

「戦略創造とは、ものものしいですが、企業の方針等に関わる決定を行うことですね。」

「そうだ。経営理念、基本的方針、経営戦略それも基本戦略を決めることだ。」

「会社として何を目指すか?それをどうやって実現していくか?そうすることで、顧客や社会にとってどういう存在であるべきか?を決めていくということですね。」

「そういうことだ。例えば我が社では『みんなの生活を便利に楽しくする製品を提供する』という経営理念、『堅実な品質管理による低コスト・良質な製品の提供』という基本的方針、そして『今後は新製品の企画・開発にも重点を置く』という経営戦略を描いている。」

「そうですね。」


戦略解釈を現場と調和させていく

「ただし戦略を作れば実現するというものではない。」

「現場に実行してもらう必要があります。文書として存在するだけなら絵に描いた餅です。だから、現場に伝えていく必要がありますね。」

「ただ伝えるだけではない。ブレークダウンしながら伝えるんだ。」

「と言いますと。」

「現場部門が動けるような計画や指示に落とし込んでいく訳だ。」

「なるほど。」

「そうだ。さっき例に挙げた我が社の戦略で考えてみよう。新製品の企画・開発に注力するというが、今までは大手の模倣品ばかり作っていた。」

「仕方ないですよ。それが我が社にとっての新製品なのですから。」

「しかしそれで売上げが上がったか?利益が上がったか?」

「それは耳に痛いですね。」

「そうなんだ。いくら当社にとって新しいからといって、大手の模倣では売上にも利益にも貢献しないと分かった。」

「戦略の正しくないブレークダウンだったと言いたい訳ですね。」

「ご名答。だから経営陣は『大手の模倣ではないものを開発しよう』と、ターゲットを絞った。」

「リーダーシップを発揮して正しくブレークダウンし直した訳ですね。」

「そうなんだ。トップが方針などを決めた時に、現場には必ず解釈の幅が残されている。これを現場任せにしておくと、成果が出ない場合も少なくない。トップの意図と、現場のオペレーションを調和させることが必要なんだ。」

「それがブレークダウンなのですね。」


アクションプランを立てる

「そうだ。だが、それだけではないぞ。大手の模倣ではない新製品開発のため、我が社では何をした?」

「専門に担当する部門が存在しなければ、ユニークな新製品企画・開発はできないとなりましたね。だから設置しました。」

「そうだな。しかしこれも、口で言うほど簡単ではなかった。」

「既存の製造部門に企画・開発を担当する部署を設けるのか、専門に担当する部門を設置するかで大揉めになりましたね。」

「そうだ。専門担当部門を置くにしても、製造部門担当執行役員の配下とするか、営業部門担当執行役員の配下とするかでも揉めた。」

「最終的には、社長直下になりました。」

「その後、組織の担当や定員、要求される人物像などが検討された。」

「もう、終わりがないのかとさえ、感じましたよ。」

「ところでこの検討は『ユニークな新製品企画・開発』という戦略において、どういう位置付けなのかな。」

「さあ、考えたことがありませんでした。ただ・・・。」

「ただ・・・。」

「戦略計画を実現するための実行計画といえるのではないでしょうか。」

「ご名答。俺も、そう思うよ。」

「抽象的な言葉で表現された戦略を現場が実現するためには、具体的に動けるアクションプランを用意しなければならない。それも『戦略ブレークダウン機能』なんだ。」

「先ほど、戦略の解釈を調和させていくというお話がありましたが、実際には、今言った戦略のアクションプランを立てていくことと同時に行われていくのでしょうね。どんなアクションプランにするかと調整することが、戦略の解釈を調整していくことになるという。」

「素晴らしい。その通りだよ。」

「逆に『アクションプランは現場に任せる』というスタンスでは、トップが期待する成果は得られないのかもしれません。」

「まさに、その通りだ。戦略のブレークダウンは、だからこそ、上級マネジャーの重要な役割なんだということですね。」

「そういうことだ。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

昨年まで、現場マネジャーが行うマネジメントについて、世界標準のマネジメント理論である「MCS(マネジメント・コントロール・システム)論」をベースに考えてきました。日本では「マネジメント」について省みることがほとんどないようですが、世界では「マネジメントとはこういうものだ」という姿がきちんと描かれていて、それを学ぶように促されています。日本のホワイトカラーの生産性が低迷している原因は、もしかしたら、このあたりにあるのかもしれません。

昨年度は約1年かけて、現場マネジャーのマネジメントについて考えてきました。現場マネジャーは、現場で働く人たちが高いパフォーマンスをあげられるよう促すマネジメントを行なっています。一方で現場マネジャーも、マネジメントを受けます。現場マネジャーが行うマネジメントが現場の力をあますところなく引き出しているか、企業として目指す方針や戦略を実現できるよう導いているかという観点でのマネジメントを必要としているのです。

今年度は、連続コラム「マネジメントを再考してみる」の後編として、上級マネジメント(上級マネジャーの行うマネジメント)についてMCS論をベースに考えます。上級マネジャーがどんな役割を担っているか、それをどのように果たしていくかについて、体系的にご説明します。 企業パフォーマンスを向上させる世界標準のマネジメントに関する解説は、日本初の試みです。是非、お楽しみください。


Webサイト:StrateCutions

マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

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