マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

第2回

何が問題なのか

落藤 伸夫 2017年4月14日
 
「上級マネジャーのマネジメントを見直すようにとのご指示でした。三上取締役の問題意識を、もう少し詳細に教えてもらって良いでしょうか?」

「もちろんだとも。」

「取締役は、営業本部の四人の営業部長がうまく機能してくれない、だけれど、それは部長の問題というよりマネジメント・システムの問題だと仰りました。」

「その通りだ。システムが悪いから、そこで働くマネジャーが上手く機能しない。部下はそういう上司しか見ていないので、自分がそのポジションになっても、同じようなことしかできない。」

「いちいち、ごもっともです。ただ、私自身、耳が痛いです。取締役は私のことも、そのような目で見ておられるのでしょう?」

「それはその通りなのだが、中川部長だけではない。その批判は、とりもなおさず、部長時代の自分にも向けられているものだからだ。」

「部長時代の取締役自身ですって?取締役が自己批判されるようなかたとは、思いもよりませんでした。」

「おいおい、俺のこと、そんなにエゴイストだと思っていたのか?」

「冗談ですよ。で、どのようにご自分のこと、思われていたのですか?」


システムが悪いと個人の力は及ばない

「思ったようにできないんだ。部長時代の俺は、MCS(マネジメント・コントロール・システムの考え方にのっとって自分の仕事を定義して、それに基づいて行動した。自分の仕事だと判断したものはきっちりとやる一方で、部下がやるべき仕事は部下に権限委譲し、上司が判断すべきものは上司に判断を求めた。上司や部下に、部長としての俺が発信すべきだと考えた情報を提供した。」

「三上取締役らしい、ロジカルなやり方ですね。でも、反発はなかったのですか?」

「あったよ、大ありだ。部下は今までなかった仕事を押しつけてきたと騒ぐし、上司も『そんなの、君が適当にやっておけばよい。いちいち判断を仰ぐなんて、無粋だ』なんていう。」

「ありそうな話ですね。」

「一番、不本意だったのは、役員会への報告内容を刷新した時だ。俺としては、決算数字を改善していく、つまり利益を上げていくことを目的として、目標への影響度が高いKPIを選択して報告するように改めたのだ。しかし、役員会は以前の報告が良いんだとの一点バリだ。」

「その話、私のところにも聞こえてきましたよ。あんな一件があったのに、良く取締役に昇進されたなと思ったほどです。」

「俺もまあ、バカではないからな。結局は、長いものに巻かれたよ。言われた通りしたのだ。」

「なるほど。」

「それはそれは、悔しい思いをしたよ。偉くなったら絶対に改善してやると心に誓ったんだ。」


偉くなっても個人では改善できない

「ということで、自分が取締役になって、その辺を改善しようとした。自分が欲しかった数字をもらい、自分がやるべき判断をし、自分が行うべきマネジメントを行おうとしたんだ。」

「で、どうなったのですか?」

「こんどは部長たちが、それには対応できないと言うんだ。売上は結果論だし、利益は他の部門の働きの影響も受ける。そんな数字でもってマネジメントして欲しくないんだそうだ。決算数字は財務部のテリトリーだと。」

「そう言われると、部長たちの気持ちも分かるような機がします。」

「じゃあ、売上や利益について、財務部が責任を持つとでも言うのか?」

「いや、それは、そうではありませんよね。」

「じゃあ、誰が責任を持つんだ。」

「そう言われたら、そうですよね。誰なんでしょう?」

「そんなことだから、我が社のパフォーマンスはいつまで経っても向上しないんだよ。それを、MCSで整理していくんだ。」

「なるほど。」


決算数字への責任を明らかにする

「確かに、売上が100%、営業部門の責任だとは思わない。魅力的な製品があるかないかが大きく影響するからな。」

「そしてもちろん、利益も100%、営業部門の責任ではありませんよね。」

「もちろんそうだ。しかし、だからといって営業部門が売上や利益に責任を持たないとすると、誰も責任を持たないことになってしまう。」

「では、どうすれば良いのですか?」

「社内のどのポジションが、決算のどの数字に責任を持つのかを明らかにするんだよ。その数字を改善していくために、マネジメントをするんだ。」

「大がかりな話ですね。営業部門だけの問題ではないような気がします。」


組織全体でマネジメントを見直す

「だから組織戦略部の中川部長を呼んだんだよ。今のところは営業部門としてマネジメント改革を進めていく。しかし、じきに全社的な取組みが必要になるだろう。その時に対応できるように、最初から組織戦略部に関わっていて欲しいんだよ。」

「そういうことなんですね、分かりました。」

 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

昨年まで、現場マネジャーが行うマネジメントについて、世界標準のマネジメント理論である「MCS(マネジメント・コントロール・システム)論」をベースに考えてきました。日本では「マネジメント」について省みることがほとんどないようですが、世界では「マネジメントとはこういうものだ」という姿がきちんと描かれていて、それを学ぶように促されています。日本のホワイトカラーの生産性が低迷している原因は、もしかしたら、このあたりにあるのかもしれません。

昨年度は約1年かけて、現場マネジャーのマネジメントについて考えてきました。現場マネジャーは、現場で働く人たちが高いパフォーマンスをあげられるよう促すマネジメントを行なっています。一方で現場マネジャーも、マネジメントを受けます。現場マネジャーが行うマネジメントが現場の力をあますところなく引き出しているか、企業として目指す方針や戦略を実現できるよう導いているかという観点でのマネジメントを必要としているのです。

今年度は、連続コラム「マネジメントを再考してみる」の後編として、上級マネジメント(上級マネジャーの行うマネジメント)についてMCS論をベースに考えます。上級マネジャーがどんな役割を担っているか、それをどのように果たしていくかについて、体系的にご説明します。 企業パフォーマンスを向上させる世界標準のマネジメントに関する解説は、日本初の試みです。是非、お楽しみください。

コラム マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

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