知らなかったでは済まされない著作権の話

第7回

好きな音楽をダウンロードしただけで逮捕されるの!?
~違法ダウンロードの刑事罰化にまつわる話

 

違法ダウンロードは10月1日より刑事罰が科される場合があります

アメリカのテレビドラマシリーズ「24」が大好きな営業二課のA課長。主人公の捜査官ジャック・バウアーの生き方に憧れ、アグレッシブな毎日を過ごしています。今日も元気に自ら率先して得意先回りをし、外出先から同じ課のB山さんに報告の電話を掛けてきました。
B山さん 「はい、営業二課のB山でございます。」
A課長  「クロエ!俺だ!!」
B山さん 「A課長ですか?クロエじゃありません、B山です。」
A課長  「B山?誰だ!?クロエはどうした!?」
B山さん 「・・・・・・。」

そんな熱狂的な「24」ファンのA課長も、不況の影響でお給料が上がらず、全シリーズをDVDで買い揃えるという夢はなかなか叶えられません。悶々とするA課長は、ある晩、家で何気なくインターネットを見ていると、なんと「24」全シリーズを無料でダウンロードできるサイトがあることを発見しました。
「うっ、これは著作権がない奴が勝手に作っているサイトだな・・・。ここからダウンロードすると、いわゆる『違法ダウンロード』ってことになるんだな。でも悪いのはサイトを作った奴だから、俺はダウンロードしても捕まったりはしないよな。早速ダウンロードするぞ!」
A課長は、市販のDVD-Rにしっかりとコピーすると、この日から毎晩、少し夜更かしして「24」を満喫し、会社の疲れを癒してから就寝する生活を送るようになりました。

夜な夜な「24」漬けとなり幸せな日々を過ごすA課長。しかしその幸せは長くは続きませんでした。ある休日、A課長の自宅に、警察官が訪ねて来ました。
警察官 「この度『24』の動画ファイルを違法ダウンロードさせるサイトを摘発したのですが、Aさんもこのサイトからダウンロードされましたよね。」
A課長 「・・・ダウンロードしましたが・・・。」
警察官 「著作権法違反で逮捕します。」
A課長 「タタタタ、逮捕??これは大統領命令ですか!?」
警察官 「大統領命令ではありませんが逮捕します。」

実はA課長がした違法ダウンロードの行為は、このコラムが公開となる9月27日の時点では逮捕されることはありません。今年に法律が改正となって、2012年10月1日から違法ダウンロードした一定の場合に、刑事罰が科されるようになったのです。

音楽ファイルの違法ダウンロード数は正規有料音楽配信数の約10倍にもなるのです!

A課長のような動画ファイルの違法ダウンロードも問題ですが、音楽ファイルの違法ダウンロード数は殊に顕著で、ここ数年は尋常でない状況となっています。一般社団法人日本レコード協会の調査によると、2010年は正規有料音楽配信が4.4億ファイルだったのに対し、違法ダウンロード数はなんとその10倍の43.6億ファイルもあったということです。これを金額ベースに換算すると、音楽業界の被害金額は、年間6,683億円にものぼると言われています。

一向に減少しない違法ダウンロードに対して法律もどんどん厳しくなっています!

違法ファイルをアップロードする行為は、以前から著作権侵害行為として刑事罰の対象となっていますが、違法ファイルをダウンロードして個人的にその音楽等を楽しむことは、あくまで「私的使用」として、2009年までは著作権侵害行為とはならないとされていました。しかし、音楽をカセットテープに録音していた時代とは異なり、瞬時にファイルを複製でき、世界中に配信できるデジタル時代・ネットワーク時代の今日では、事情は変わってきました。いくら「私的使用」とはいえ、こうした状況を放っておくと、音楽業界は大きな損害を受けるようになってきたからなのです。
そこで、2009年には、いくら「私的使用」だとしても、違法であることを知りながらダウンロードした場合には、著作権侵害行為として民事的責任(差止請求や損害賠償請求を受けることなど)を負わせることにしたのです。そして本年、更に、違法ダウンロードをした人に対して、「2年以下の懲役または200万円以下の罰金(併科あり)」という厳しい刑事罰規定が導入されることになりました。

しかし違法ダウンロードをしたからといってすべて刑事罰の対象となるわけではありません。
ダウンロードしたファイルがそもそも有償で販売されているものであること、そのファイルが違法であることを知っていたこと、そのファイルをデジタル方式で録音・録画することなど一定の場合に限られています。例えば、YouTubeで違法にアップロードされた動画を見ても、ハードディスクなどに記録しなければ、ダウンロードではなく単なるストリーミングなので、刑事罰を科されることはありません。また違法ダウンロードの刑事罰化は、被害を受けた著作権者などが訴えなくては逮捕できない親告罪となっています。

私たちが正規のお金を支払うことで、エンターテインメントは発展していくのです

「なんだよケチ!」と言う人もいるかも知れません。ただ映画や音楽を制作しているアーティストも、それを企画し販売している関係者も、それを販売して得られる収入によって生活しているのです。またいくらヒット作を発表しても、みんなが違法ダウンロードにより無償で手に入れてしまっては、まったく儲からないため、新しい作品を制作しようという意欲は失われてしまうでしょう。A課長のような人がたくさん現れたら、結局は将来「24」の新シリーズや劇場用映画が製作されることはなくなり、ファン自身も残念な思いをすることになるのです。

A課長はすっかり反省したものの、警察官に「もうしませんから、免責にしてください。もちろん大統領の署名入りで。」とお願いし、すっかりあきれられてしまったそうです。

※コラムは執筆時の法令等に則って書いています。
※法令等の適用は個別の事情により異なる場合があります。本コラム記事を、当事務所に相談なく判断材料として使用し、損害を受けられたとしても一切責任は負いかねますので、あらかじめご了承ください。

 
 
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ボングゥー特許商標事務所/ボングゥー著作権法務行政書士事務所
所長・弁理士 堀越 総明 (ほりこし そうめい)

日本弁理士会会員 日本弁理士会著作権委員会委員 東京都行政書士会会員 東京都行政書士会著作権相談員
東京都行政書士会任意団体著作権ビジネス研究会会員 株式会社ボングゥー代表取締役


「ボングゥー特許商標事務所」の所長弁理士として、中小企業や個人事業の方々に寄り添い、特許権、意匠権、商標権をはじめとした知的財産権の取得・保護をサポートしている。

特に、著作権のコンサルタントは高い評価を受けており、広告、WEB制作、音楽、映画、芸能、アニメ、ゲーム、美術、文芸など、ビジネスで著作物を利用する業界の企業やアーティスト・クリエイターを対象に、法務コンサルタントを行っている。

現在、イノベーションズアイにて、コラム「これだけは知っておきたい商標の話」、「知らなかったでは済まされない著作権の話」の2シリーズを連載し、また「ビジネス著作権検定合格講座」の講師を務める。

また、アート・マネジメント会社「株式会社ボングゥー」の代表取締役も務め、地方公共団体や大手百貨店主催の現代アートの展覧会をプロデュースし、国立科学博物館、NTTドコモなどのキャラクター開発の企画を手掛けた。


○ボングゥー特許商標事務所
http://www.bon-gout-pat.jp/
○ボングゥー著作権法務行政書士事務所
http://www.bon-gout-office.jp/
 
【著書】

「知らなかったでは済まされない著作権の話」(上)・(下)
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弁理士が、“ありがちな著作権トラブル”をストーリー形式で紹介し、分かりやすく解説していく1冊です。
法律になじみのない人でも読みやすく、“ここだけは注意してほしい点”が分かる内容となっています。

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