知らなかったでは済まされない著作権の話

第5回

007シリーズの格安DVDはいつ発売されるの??
~保護期間にまつわる話

 

本屋さんやコンビニでよく売っている格安DVDって違法な海賊版なの??

007映画が大好きな自称「営業三課のジェームズ・ボンド」のA係長。パソコンに向かって仕事をするときはいつも「デンデケデケ♪」とテーマ音楽を口ずさんで隣の同僚に迷惑を掛け、女子社員には自分のことを「ジェームズ!」と呼ぶように強要するなど、その熱狂ぶりは半端ではありません。

残業で帰宅が遅くなったある日、深夜まで営業している家の近所の本屋さんにふと立ち寄ったA係長は、レジの前にあった「懐かしの映画DVDコーナー」で足をとめました。
「えっ、『ローマの休日』のDVDが500円!?はは~ん、これは海賊版だな。」
正義感の強いA係長は、店員さんに「違法なDVDを売ってはいけませんよ!」と注意したところ、店員さんからは「これは海賊版ではないんですよ。」という返事が・・・。

この一件が腑に落ちなかったA係長は、後日、法律家である親戚のおじいさんにきいてみました。すると「映画の著作権は50年で消滅するからじゃよ。『ローマの休日』は1953年の映画だから2003年に著作権は消滅しとるんじゃろうな。著作権が切れた映画は、もう公共のものだと考えられるんで、誰が利用しようが自由なんじゃよ。Aだって昔の映画のDVDを製作して売ることだってできるんじゃよ。」という答えが返ってきました。
これを聞いたA係長の顔には喜びが溢れてきました。「それじゃ、今年は2012年だから、1963年に公開された007シリーズ第1作『007ドクター・ノオ』の著作権ももうすぐ切れるんだね!ボクのマニアックな解説付DVDを作ってインターネットで販売するぞ!」
みなさんがA係長のマニアックな解説を読みたいかどうかはさておき、A係長は果たして無事に『007ドクター・ノオ』(A氏解説付)DVDを発売することができるのでしょうか?

著作権は永遠の権利ではありません!

法律家のおじいさんが言う通り、著作権には保護期間というものがあり、一定期間を過ぎると権利は消滅してしまいます。創作しているアーティストからすると、何で!?と言いたいところでしょう。しかし多くの創作は、それ以前の他の人の創作に何らかの影響を受けて成り立っているわけですから、著作権を永遠の権利として認めてしまうと、かえって新しい創作を制限してしまうことになりかねません。著作者の権利の保護も大切ですが、そのために文化の発展を阻害してしまってもいけないのです。

それでは著作権の保護期間とはいったいどのぐらいなのでしょうか??
イラスト、音楽、小説、写真などの著作権の保護期間は、通常は著作者の「死後50年」とされています。著作権者に経済的な権利を与える期間として、50年ぐらいあれば十分だということなのでしょう。ただこれにもいくつかの例外があります。例えば、会社などの団体名で発表している本などご覧になったことがあるでしょうが、団体は人と違って死にませんので「死後」と言っても何のことだかわかりません。ということで、団体名義の著作物は、「公表後50年」を著作権の存続期間としています。

映画の著作権の保護期間は50年から70年に延長されました

さてそれでは映画はどうでしょうか?映画は多数の著作者によって製作されることが一般的で、やはり特定の人の「死後」を基準にすることは難しいため、「公表後」を基準に定められています。そして保護期間は、通常の著作物の50年とは異なり、「公表後70年」とされています。実は映画も、以前は他の著作物同様に50年となっていました。それが2004年から、法律の改正により70年になったのです。それは、1940年代までの映画は、クラシックな作品が多く商業的価値もそれほどは高くなかったため、著作権が50年で消滅してもそれほど大きな問題にはならなかったのですが、1950年代以降の映画は、製作に巨額な資金が投入されることが増え、著作権を持つ製作会社などから著作権を延長するよう声が上がったからなのです。また、アメリカやヨーロッパの国々では著作権の保護期間が70年ということも、この改正の理由のひとつだったのでしょう。

法律が改正され映画の著作権が公表後50年から70年に延長されたとはいえ、一度消滅した著作権が復活することはありません。ということで、1953年公開の『ローマの休日』の著作権は、2003年に消滅してしまいました。しかし、1954年公開の映画の著作権は、2024年まで存続することになったのです。

法律家のおじいちゃんが、法改正があったことに気がついて、慌ててA係長に電話を掛けてきたときは、すでにA係長はマニアックな解説を書きあげてうっとりしているときでした。A係長さん、残念でしたが、定年後の2034年まで楽しみはとっておきましょう!

ここで補足ですが、「古い映画だから著作権が消滅している!」と単純に思うのは少し危険です。ずっと以前の著作権法では、監督など個人の著作者の死後38年まで著作権が存続するという規定があったため、当時のチャップリンや黒澤明の古い映画の中には、たとえ団体名義で発表された映画であっても、現在でも著作権が存続しているものがあります。

文化庁への「実名の登録」で保護期間が延長されることも!

また個人で創作したイラスト、音楽、小説、写真などを、ペンネームで発表したり、無名で発表したりした場合の著作権の保護期間はどうなるでしょうか?個人なので「死後」が基準なのですが、有名なペンネームの場合を除き、一般の人から見て誰が著作者かわからないようなときは、死亡時が特定できないため「公表後」が基準になります。通常の場合は、生きている間に公表することが一般的ですので、「公表後」が基準になってしまうと「死後」の場合よりも著作権の保護期間は短くなってしまうでしょう。
そんなときは、文化庁に「実名の登録」をしておくことをお薦めします。ペンネームや無名で作品を発表した場合でも、文化庁に「自分が著作者ですよ!」という実名の登録をしておけば、自分が著作者であると推定され、また著作権の保護期間は「公表後50年」から「死後50年」に延長されるメリットがあります。ご興味のある人は、是非著作権を専門に扱う行政書士にご相談ください。

※コラムは執筆時の法令等に則って書いています。
※法令等の適用は個別の事情により異なる場合があります。本コラム記事を、当事務所に相談なく判断材料として使用し、損害を受けられたとしても一切責任は負いかねますので、あらかじめご了承ください。

 
 
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ボングゥー特許商標事務所/ボングゥー著作権法務行政書士事務所
所長・弁理士 堀越 総明 (ほりこし そうめい)

日本弁理士会会員 日本弁理士会著作権委員会委員 東京都行政書士会会員 東京都行政書士会著作権相談員
東京都行政書士会任意団体著作権ビジネス研究会会員 株式会社ボングゥー代表取締役


「ボングゥー特許商標事務所」の所長弁理士として、中小企業や個人事業の方々に寄り添い、特許権、意匠権、商標権をはじめとした知的財産権の取得・保護をサポートしている。

特に、著作権のコンサルタントは高い評価を受けており、広告、WEB制作、音楽、映画、芸能、アニメ、ゲーム、美術、文芸など、ビジネスで著作物を利用する業界の企業やアーティスト・クリエイターを対象に、法務コンサルタントを行っている。

現在、イノベーションズアイにて、コラム「これだけは知っておきたい商標の話」、「知らなかったでは済まされない著作権の話」の2シリーズを連載し、また「ビジネス著作権検定合格講座」の講師を務める。

また、アート・マネジメント会社「株式会社ボングゥー」の代表取締役も務め、地方公共団体や大手百貨店主催の現代アートの展覧会をプロデュースし、国立科学博物館、NTTドコモなどのキャラクター開発の企画を手掛けた。


○ボングゥー特許商標事務所
http://www.bon-gout-pat.jp/
○ボングゥー著作権法務行政書士事務所
http://www.bon-gout-office.jp/
 
【著書】

「知らなかったでは済まされない著作権の話」(上)・(下)
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弁理士が、“ありがちな著作権トラブル”をストーリー形式で紹介し、分かりやすく解説していく1冊です。
法律になじみのない人でも読みやすく、“ここだけは注意してほしい点”が分かる内容となっています。

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