新規事業開発の勘所

第1回

成長の方向性を考える

瀧田 理康 2020年5月19日
 

「新規事業を何かやらなくては」と、多くの経営者の方が真剣に考え始めているかもしれません。新規事業を検討するにあたって大切なことは、会社をどの方向に成長させるのか、その全体像をロジカルに(=つじつまが合うように)考えることです。


そうでないと、「とにかく成長するぞー」という意気込みが大切だ、となります。たいがいこういう場合、このあと述べる一番リスクの高い領域にむかって、こぶしを上げているだけです。そして、残念なことにほとんど失敗してしまうでしょう。 


なぜかというと、そこには無理がたくさんあるからです。うまくいったケースもありますが、それはどんな困難が来てもめげずに立ち向かう強靭な精神力と、奇跡的に何かが味方する強運の持ち主が事業を行う場合ではないでしょうか。


ほとんどの人は、私も含めて、残念ながらそんな能力も強運も持っていません。そういう人が会社や自分の事業部の成長の方向性を定める場合には、山登りでいうときちんと登山道をのぼっていくしかないのです。時間はかかるかもしれませんが、命を落とすことなく頂上まで行けます。それが成長の方向性を考えるということなのです。


成長の方向性には次の4つがあります。

第一の方向性 既存の市場に既存の商品を売る

第二の方向性 既存の市場に新商品を売る

第三の方向性 新しい市場に既存の商品を売る

第四の方向性 新しい市場に新しい商品を売る


おわかりになりますね。もっともリスクの高い、でもとってもダイナミックな、そして誰もが新規事業というと連想するのは第四の方向性です。


第一の方向性は一番地味です。そして、「これって新規事業??」と疑問を持たれると思います。そうです。これは既存事業を今よりもっと市場浸透させるという方向性です。たとえば新規事業に使うリソースを既存事業に割いて、もっと既存事業の売上を上げるといった戦略です。


したがって、新規事業として考えたいのは第二の方向性か第三の方向性になります。


第二の方向性はいわゆる新商品開発です。シュンペーター(=経済学者)がいうイノベーションであれば、かならずしも商品のイノベーションでなくてもいいですが、いずれにしても今の市場で行うことです。これはとても大事なことです。とにかくお客様さえいれば、事業ができます。そのお客様が望むものを提供すればよいのです。それが新商品開発の意味です。


勘違いすると、勝手に自分たちが「これがいい!!」と思うものをつくるのが新商品開発だと思ってしまうことがあります。しかしこれは多くの場合間違いです。自分たちがいいと思う=お客様がいいと思う、ということであればよいのですが、そうでない場合はお客様がいいと思う、お客様がほしいと思う、という方向に切り替えていくべきでしょう。


第三の方向性は、今持っている商品を新しい市場に売ることです。例えば商品を実際に持っていて、その知見も競争優位もあるのであれば、あとは新しい市場に出ることも新規事業です。今まで国内だけでやってきた商売を、例えば東南アジアで展開するなどがこれに当たります。


その場合、必ず考えておかなければならないのは、ローカライズ(=地域に合わせて工夫)することです。いくら思い入れのある商品でも、その市場に合わせて変化させる必要があります。「そのまま現地に持っていったら売れまくった」というのはラッキーですが、なかなかそういう場面には出くわしません。


ローカライズは言うのは簡単ですが、けっこう難しいことです。なんせ、まったく新しい土地柄、文化のところにいくので、変化させようにもニーズが正確に把握できません。だから往々にして失敗してしまうのです。 そこをうまく進めるためには、該当する市場を事前に可能な限り調査して特性を把握する必要があります。その際、現地の状況に詳しいコンサルタントを起用するのもよく使われる手法です。 


そして第四の方向性です。新規事業を行う最終目的地は、第四の方向性であることはまちがいありません。しかし前述したように、第一の方向性の立ち位置から一気に第四の方向性を目指すのは、失敗の確率が高いといえます。だから第二の方向性、あるいは第三の方向性にまず進んで、そこで実績ができてから、第四の方向性に行くのがおすすめです。一足飛びに行かないで順を踏んでいったほうが事業の継続という面からみて、確実と言えるからです。 また併せて、この手順でいくと「事業をわかりやすく説明できる」ということに気づきます。このことは事業の成長に欠かせないポイントです(このコラムで順次取り上げます)。


どのような新規事業をするかを検討する際に、もっとも効率よく第四の方向にむかって進み、成功を手にするにはどのようにしたらよいか、これらのことを考えていくことが「成長の方向性を考える」という意味です。実は当社自身も、まさに成長の方向性を考えているところです。課題山積で「言うは易し」であることを実感していますが、必ず新たな事業が見えてくると信じて歩を進めています。

 
 

プロフィール

株式会社アルゴマーケティングソリューションズ
代表取締役社長 瀧田 理康

東京理科大学卒。自動車関連部材メーカーで、事業企画担当に抜擢され、本部長直下で一人で事業企画を担当。全国の販売会社、子会社と本社との橋渡し、各種会議、社長会、イベントのファシリテーションを行う。軌道にのったところで、社内ベンチャーの立ち上げメンバーに指名され一からやり直し。行ったこともなかったシリコンバレーや欧州への売り込みから工場生産管理まで行い、利益率20%の事業まで作り上げた。独立性が高く事業価値が高かったため、最終的に事業売却となる。アルゴマーケティングソリューションズでは、新規事業開発、広報・PR&販促の分野で技術がわかる点を強みに、BtoB企業のクライアントを広げている。事業売却とそれに至った経験と理論を体系化して、新規事業開発の支援を本格稼働。単なるコンサルティングではなく、最終的に実務を伴うソリューション提供をモットーとしている。

・中小企業診断士、リスクマネジメントプランナー(一般財団法人リスクマネジメント協会)、PRプランナー(PRSJ)
・著書は「新規事業開発」「経営基本管理/マーケティング」(ともに日本マンパワー出版)等
・2020年、「新規事業実務研究会(旧:ステージゲート法実践会)」立ち上げ


HP:株式会社アルゴマーケティングソリューションズ

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