どうしたら「利益を出し続ける」会社になれるのか

第8回

役割と責任がない

山中 一郎 2017年7月14日
 

会社にはいろいろな側面があります。

顧客に商品を販売する、商品を仕入れる、製品を造る・・・、資金を循環させて利益を得る。

そして「人の集まり」であるという側面です。

このブログのテーマは、会社がどのように「利益を出し続ける」のかにありますが、今回は、会社が「人の集まり」であるという側面に注目して、それを考えてみましょう。

 

以下は海外の会計事務所で聞いた話です。

日本からA社がB国に進出するにあたって、課長が会計事務所に話を聞きに来ます。その会計事務所は、A社がB国に進出したときにお客さんになって欲しいため、B国について丁寧に説明します。その後会計事務所は、課長から、私には決定権がなく、今度は部長が来るので、部長に説明してほしいと頼まれました。

そこで会計事務所は、次にB国にやって来た部長に丁寧に説明します。そこで言われたのは、今度は取締役が来るので、取締役に説明してくれという言葉です。そこで今度は取締役に同じことを説明します。

既にここまで、その会計事務所は3回同じ説明をしているのですが、今度は社長がやってくることになりました。会計事務所としては同じ説明を4回するわけで、さすがに「うんざり」しています。ただ社長なので今度こそ最後だろうと考えて、4回目の説明をしたそうです。

ここで社長が最後に会計事務所に言ったのは、「私一人では決められない。取締役会の議題にかけるので待って欲しい」という言葉でした。

 

A社にしてみれば、海外進出は大事な事項であり、慎重に事を図ろうとしたのでしょう。また業務権限規定によって、決裁権限が決まっているため、最終的には取締役会に諮らなくてはならないことも理解できます。

ただここで考えなくてはならないことは、この4名の役割と責任です。

 

一般的に日本の会社は、集団で意思決定を行って、その決定責任を曖昧にしがちであると言われています。意思決定のための社内コンセンサスを得るためには、情報を共有して、かつ互いの考え方をすり合わせる必要があるため、どうしても時間がかかります。

さらに組織は意思決定をする際、「将来に向けて正しい意思決定」をすることが求められますが、それを慎重に行おうすると、関連する情報を集めて分析する必要があるため、どうしてもスピードが犠牲になります。

A社はまさにその典型例です。

 

聞いた話を上司に報告し、上司は同じ話を自ら聞いて確認したのち、またそれをその上の上司に報告する。この「自ら確認する作業」は、二重業務になっているわけですが、A社はそのダブりを部長、取締役、社長の3人が行ったわけです。この間A社は多くのコストと時間を使ったことでしょう。

また上記は縦階層の業務のダブりの話ですが、横階層、例えば複数の部門間で業務が重複して、同じ業務を複数の部門で行う、逆に業務の担当部署が明確になっていないため、必要な業務であるにも関わらず、それが盥まわしになっている例もよく見かけます。

 

ところで最近、大手の日本企業が外国、とりわけアジアの企業に買収されています。日本人としては少し悲しいニュースですが、買い手企業の意思決定が早く、また他より良い条件で日本企業を買うというのですから、彼らが大きなリスクを取っているのも事実です。買い手のアジア企業の多くはオーナー企業であり、一人で大きな意思決定を行うことができます。また彼らの成長性は高く、その背景に大きなマーケットがあるわけですから、日本人にとってのリスクは、彼らから見るとさほど大きくないのかもしれません。それにしても、先ほどの日本企業と比較すると、あまりにリスクの取り方と、意思決定のスピードに差があることに危機感を覚えるのは私だけでしょうか。

 

話が少しそれました。

重要なのは「誰がどんな意思決定を行って」、「その決定に関して誰がどのように責任を持つのか」によって、会社の成長は全く異なるということです。会社の利益は、日常の意思決定の積み重ねがもたらす結論です。

では意思決定をするうえで、何がポイントなのか? 私は以下のように考えます。

①    役割と責任を明確にすること

  会社では意思決定するとともに、それを実行に移すことが重要です。会議で意思決定するにしても、皆でそれを実行するわけにはいきません。誰がそれを実行して、結論に対して責任を持つのかを決定することで、確実に実行する体制を作る必要があります。

②    実行までのスケジュールを明確にするとともに、スピードを重視すること

 これだけ時間の流れが激しい時代において、スピードの遅れは致命的な失敗につながる可能性があります。そうならないためにも、意思決定した際には、実行までのスケジュールを明確にする必要があります。

③    実行した結果を評価する仕組みをつくること

 意思決定をしたものの、結果的に実行されないままで終わる。皆さんの会社でもそのようなことを経験されたことがあるのではないでしょうか(私もこの経験は多数持っています)。こうならないためには、実行した結果について評価する仕組み(例えば意思決定の過程や結論を、2か月後の会議で発表することを習慣づけるなど)を作ることが有効です。

以  上

 
 

プロフィール

朝日税理士法人
公認会計士・税理士 山中 一郎


朝日新和会計社(現あずさ監査法人)退職後、現在は朝日税理士法人代表社員および朝日ビジネスソリューション株式会社代表取締役。


国際税務業務、海外進出支援業務の他、株式上場支援業務、組織再編、ベンチャー支援等 の税務・コンサルティングサービスを行っている。


主な著書: 「図解&ケース ASEAN諸国との国際税務」(共著/中央経済社)、「図解 移転価格税制のしくみ 日本の実務と主要9か国の概要」(共著/中央経済社)、「なるほど図解M&Aのしくみ」(共著/中央経済社)、「事業計画策定マニュアル」(共著/PHP) など多数


HP:朝日税理士法人

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