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小さな会社の広報術

第3回

中小企業ならではの記者発表会がおすすめ!

 

記者発表会って何?どうすればできるの?

 記者発表会というと、テレビで流れるような大企業のそれを思い出す人が多いでしょう。でも、ここでお伝えする事例は、どれも中小企業の実施したものです。この結果、記事として掲載され、営業収益にもつながっていきました。記者発表会というのはそういった効果があります。発表する内容をキチンと考えることで大きな成果が生まれます。

(1)記事掲載につながる強力な発信方法のひとつ
 一般に、企業からニュースリリースをメディア向けに発信することで、取材を獲得し記事掲載につなげていきます。それに対して、メディア関係者(報道関係者)に一カ所に集まっていただいて情報を発信することが記者発表会です。プレス発表会、記者会見、記者懇談会、プレスイベントやプレスカンファレンスなど、いろいろな言い方があります。また開催の手法(規模や内容)にもさまざまなものがあります。

 ニュースリリースの発信の場合、ともするとただファックスするだけ、ウェブに投稿するだけ、となってしまっているケースも多いでしょう。しかし発表会となると、そのような発送では通用しません。記者さんに、そこにいかに来ていただくか、つまり、メディア関係者にいかに来たいと思っていただくか、ということに焦点をしぼって発表する内容を作り込むので、掲載率が飛躍的に高くなるのです。

(2)担当者を任命する
 記者発表をしてみたいと思った経営者の方は、兼務でもよいので、まずは広報担当を設置してください。そして、その担当者が中心になって、どのようなプレゼンテーションをするかを会社をあげて検討していく体制を作っていくことが大切です。プレゼンテーションは分かりやすいことが重要ですので、ポイントを客観的にまとめるなどが求められます。経営者とは別の観点から、クールにまとめる役割が必要です。また、大学や研究機関などからのコメンテーター、または応援してくれる先生方がいれば発表内容の信頼度を高めてくれます。少し予算がある場合は、文化人やタレントの方にお願いするということもできます。ルールがあるわけではありませんので、柔軟に考えてみましょう。

 時々「とにかく一度記者発表会を開催したい」というご相談を受けることもあります。開催すること自体が目的となってしまわないように、何を発表できるのか、そもそも発表会をするのに値するのかを検討し、発表内容を作り込むこと、それにふさわしい体制を作ることが重要です。もし開催に値するかどうかが判断できない場合は、広報コンサルティング会社に相談することをおすすめします。

(3)記者発表会開催時のウルトラテクニック
 記者発表会を開催することになった場合に、実践したいいくつかのテクニックをご披露します。

 1、冒頭かどこかに3分ほど記念撮影(フォトセッション)の時間をいれます。これで、記事と写真がセットで取り上げられやすくなります。写真があると記事の面積が大きくなりますので、画像情報を提供することはとても大事です。

 2、開催時間の設定は、午後早めの1時間程度が記者さんにとっては動きやすいようです。3時までに取材を終えることができると夕方のテレビニュースなどで取り上げてらえる可能性が高くなります。曜日は、火、水、木がよく、大きな休みの前は避けます。記者発表をした記者さんは、日刊紙であればすぐに記事にしてくれます。したがって、金曜や休日前で開催すると、土曜や休日の紙面に掲載されることになります。お得意先様に閲読してもらうには、平日の紙面で取り上げてもらうほうがよいのではないでしょうか。

 3、質疑応答時間は10分でもよいので必ず設けましょう。もし質問がでない場合は、個別に対応することをアナウンスします。メディアの方がお帰りの際に、受付で声をかけ個別取材や画像の希望などを承ります。また、お帰りの際には、おみやげとして、プレゼンテーション資料やパンフレット類のほか、荷物にならないものを配布しましょう。また、発表内容に付随する今後のスケジュールなどをいれておくことで、その時期に取材してみよう、と思っていただける可能性も高まります。

記者発表会について、ダイジェストでご説明しました。来ていただいたメディアの方にとびきりの情報をご提供する「おもてなしの心」で企画してみてください。

記者発表会でコストをかけるところの勘どころ

 大企業が行う記者発表会のような、例えばタレントを使った派手な演出は、それだけで、メディアにとっての関心事になります。しかしそうではない記者発表は、メディアを集められないわけではありません。もちろん「記者発表会をやらない」というのもコストをかけない選択ではありますが、新製品の発売や新サービスの開始をするときには、ぜひ記者発表会をするべきですね。記者発表会で、貴重な時間と人材とコストを有効に活用し成果を上げた事例を2つご紹介します。

(1)BtoB商材:照明機器の記者発表会はあるバーを利用
 F社は、「業務用で日本初」のある機能を備える照明機器Aを開発しました。Aのどこが優れているかをきちんと伝えたいと考え、記者発表会をすることを企画しました。それは、ニュースリリースに書き落としていくと1ページではとうてい足りなくなり、うまく伝わらないと感じたからです。担当の方は、実際に見てもらえば絶対に理解してもらえるという自信がありました。

 照明機器を説明するとなるとそれにふさわしい会場が必要になります。照らすもの、照らし方、従来機器との違いなどを考えると常にある程度の暗さがほしかったので、通常の会議室ではなく、夜はバーで、昼間は使っていない店を格安で借りることにしました。来場したメディアには飲み物のサービスもできます。じっくり1時間のデモンストレーションプログラムを作り、メディア1媒体につき担当者ひとりが対応して、個別に説明したのです。

 時間は1日まるごとかり、担当者も多く必要になってしまいますが、1対多数(メディア)で発表しても伝わらないのではないかと判断したためこのようなやり方にしました。メディアの方の来場時間は、あらかじめ何時ころにお越しいただけるかを返信してもらうよう、返信フォームをつけたニュースリリースを送って把握しました。プレゼンテーションは、デモンストレーションのほか、開発担当者の思いなども交えてもらいました。ニュースリリース内では排除してしまう内容ですが、記者発表会の場所では、そういったことこそインパクトを与えることにもなると考えたからです。

 この結果、来場したメディアには、深く理解し、またこの考え方に共感していただけたので、実に多くの良い記事が掲載されました。また、この発表会の模様は、翌日にニュースリリースとして再度発信しました。特に、来場しなかったメディアはこのニュースリリースで記事を書いてくれました。つまり事後報告型のニュースリリースが効果を上げたのです。

 日本初の新機能が記事内で説明される際には、F社が開発中に考え続けてきた思いが文章中に添えられる場合があり、記事の信頼度を増していました。F社はその後、ニュースリリースをこまめに発信し、発信するごとにどこかで記事になるようになっています。もちろん顧客獲得に繋がっていることは言わずもがなです。

(2)地元食材の食ブランドを東京で発表&試食
 D社は、地元行政や農業生産法人、飲食店とも連携して、地元の食材をもっと食べてもらいたいという目的で、地元の食材を利用した食ブランドを運営しています。しかし最初は、行政の賛同は得られなかったそうです。記者発表会をきっかけとして注目を浴びるようになり、現在の連携が生まれました。

 発表した内容は、地元で日々消費されている食材にブランド名をつけたことです。なぜそのブランド名をつけたのか、将来への思いなどをプレゼンテーションしました。そのことがメディアで取り上げられ、ブランドに特別な魅力を備えることになりました。
 発表会会場には、地元の特徴が目で見て分かるものを用意しました。民芸品、民族衣装、食材などいろいろなものを並べて簡単な説明ボードを設置しました。
 場所はあるホテルを利用しました。試食の料理提供などがあったためです。D社の社長は、東京でメディアを集めた試食と発表会を小規模ながら開催してから数年経っても、最初の記者発表会に来てくれたメディア30社のうち数社はいまでも定期的に取材をしてくれるようになり、継続的に記事が掲載され、知名度があがってきているという実感があるとおっしゃっています。

 この場合の強み、つまりメディアを惹き付けた理由は2つあります。ひとつは、地方企業が東京で開催した発表会であることです。地方の情報は、首都圏のメディアにはとても喜ばれる傾向があります。ですから、地方の中小企業も、東京都心で発信することができるかどうか検討してみるとよいかもしれません。

 2つめは、「食」です。テレビを筆頭に、「食」に関する情報は溢れています。メディアが必ず把握しておきたい情報でもあるのです。また試食できることも重要です。見せるだけでなく体感させる、ということは食べることも同じです。

 これらは弊社がサポートに入らせていただきました。それぞれのコストはどのくらいだとお思いでしょうか?ご興味を持たれた方は弊社までご連絡いただければお教えいたします。

 
 

プロフィール

株式会社アルゴバース
広報コンサルティング統括 田熊 秀美

【経 歴】
有機野菜宅配企業で社長秘書、会員向け会報誌の編集を経て1996年、広報チームリーダーに。広報として情報発信することの影響力、活用方法を学ぶ。環境関連財団法人での広報兼務後、経営コンサルティング会社を経て、2002年より現職。生産材(BtoB)企業を中心とした広報コンサルティングのほか、セミナー「小さな会社の広報術実践会」「企業広報実務講座」を運営。広報機能を企業に“移植”することを目指し、基礎知識と実践ノウハウを提供している。2017年よりBtoBの技術マーケティング会社である株式会社アルゴマーケティングソリューションズの一部署として活動し、BtoB分野に特化した記者発表および広報実務請負業に従事している。


問い合わせメールアドレス:prc@argo-ms.com


Webサイト:株式会社アルゴバース

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