これだけは知っておきたい商標の話

第7回

他人が制作したロゴマークやキャラクターは勝手に商標登録できるの??~著作権と商標権の関係にまつわる話

堀越 総明 2018年5月22日
 

新規出店するメキシコ料理店「オラ!アミーゴ」が公式キャラクターを採用


商社の駐在員としてメキシコで5年間暮らしていたA課長は、日本に帰国してからも現地で食べていたサボテン料理の味が忘れられません。週末になると、東京のメキシコ料理店を巡り、サボテンの料理を口にしますが、A課長が満足する味にはなかなか出会うことができません。

今日もまた肩を落として帰宅したA課長ですが、週が明けて出勤すると、上司のB部長から思いがけない業務命令を受けました。
B部長 「A課長、実は大手外食チェーンC社からメキシコ料理のレストランをウチと共同で出店したいっていう相談があってね。キミを担当にするんで、先方と打ち合わせして上手に話をまとめてくれよ。」

頭の中に「サボテン!」の文字が浮かび上がったA課長は、情熱に駆られ、席に戻るとすぐにC社の担当者Dさんに電話を掛け、その日の午後にアポを取り、C社に駆けつけました。

A課長 「新しいメキシコ料理のレストランですが、目玉の素材はサボテンに決まりです!!」
Dさん 「いきなり、なんなんですか?」
A課長 「私がメキシコから腕利きのシェフを呼び寄せますので、メニュー開発はご安心ください!」

間もなく、A課長は、メキシコ滞在時に行きつけだったレストランのシェフを日本に呼び寄せました。「オラ!Aカチョウ~、アミーゴ~Aカチョウ!」と、陽気なシェフは、Dさんにサボテン料理のレシピを次々と披露します。「こ、これはうまい!」とDさんは大満足です。
Dさん 「A課長さん、こんなにおいしいメキシコ料理を食べたのは初めてです。そうだ、お店の名前は『オラ!アミーゴ』でいきましょう!」
A課長 「それはいいですね!あと、陽気なイメージを出すため、イメージキャラクターを作ってみてはいかがでしょうか?私の友人のイラストレーターが、サボテンをイメージしたステキなキャラクターを描いているので、それを公式キャラクターに採用しましょう。」



「サ~坊」は商標登録したものの作者からは著作権侵害のクレームが・・・


その“サ~坊”と名付けられたキャラクターは、C社の社内でも評判で、すぐに広告媒体や看板に使用されました。そして、A課長は、サ~坊のイラストについて、弁理士に依頼して、C社と共同でしっかりと商標登録も済ませました。
A課長 「商標登録もバッチリだし、これでひと安心だな。」

数ヶ月後、「オラ!アミーゴ」が開店すると、サボテン料理の味もさることながら、サ~坊の愛くるしさの効果もあり、売上は好調な滑り出しです。お客さんからの要望もあり、A課長は、サ~坊のグッズも製作し、店頭で販売も始めました。テレビの取材も入り、サ~坊人気はますます高まります。
Dさん 「A課長さん、ありがとうございます!私の社内の評判もうなぎ上りです!」
B部長 「料理以外に、キャラクターグッズでも売上を稼ぐとは、さすがA課長だな!」

みんなに褒められて得意満面のA課長でしたが、そんな折、サ~坊を制作した友人のイラストレーターEさんから1本の電話が入りました。
Eさん 「Aくん、勝手なことをするなよ!サ~坊をレストランの広告や看板に使っていいとは言ったけど、グッズまで作っていいとは言ってないぞ!」
A課長 「でも、サ~坊のイラストは、ウチの会社とC社で商標登録を受けてるんだ。グッズ販売を見越して、玩具や文房具まで幅広い指定商品で商標登録しているんだよ。商標登録を受けると、その商標を独占的に使用できるって弁理士の人が言ってたぞ。だからいちいちEくんの許可をもらう必要はないんだよ。」
Eさん 「商標登録だか何だか知らないけど、サ~坊のイラストの著作権はボクにあるんだ!著作権侵害で訴えるぞ!」

イラストやロゴマークは「著作権」と「商標権」の両方で保護されています


さて、サ~坊のイラストについて、Eさんは創作者(著作者)ですから、そのイラストの著作権者です。著作権者は、その著作物(サ~坊のイラスト)を独占的に利用することができますので、A課長の会社やC社はEさんの許諾を得ないでサ~坊のイラストを利用することができません。一方、サ~坊のイラストについて、A課長の会社とC社は商標登録を受けています。商標権者は、その商標(サ~坊のイラスト)を独占的に使用することができますので、EさんはA課長の会社やC社の許諾を得ないで、その商標権の範囲では、サ~坊のイラストを商標として使用することができないことになります。

このように、イラストやおしゃれなロゴマークのような「著作物」を、著作権者とは別の人が「商標登録」した場合には、1つのイラストやロゴマークの上に別々の人の2つの異なる権利が存在することになります。それでは、この場合、「著作権」と「商標権」とどちらの権利が強いのでしょうか?

商標権者は著作権者の許諾なしにはイラストの商標を使用できません!


実は、商標法には、例え商標登録を受けていたとしても、その商標出願前に発生した他人の著作権と抵触する場合は、商標権者は、著作権者の許諾を受けなければ、その商標を使用することができないという規定があります。

ここで誤解をしないでほしいのですが、この規定は「商標権」よりも「著作権」のほうが強い権利だと言っているのではありません。「著作権」と「商標権」は、それぞれ別々の法律で規定された権利ですので、どちらの権利が上でどちらの権利が下ということはまったくないのです。これは、先に権利を取得した人が、後に権利を取得した人に負けてしまうことがないようにという理由で定められた規定なのです。

「著作権」は、著作物を創作した時に自動的に発生する権利です。つまり、著作物を商標登録しようとするときは、必ず商標出願より前に著作権は発生していることとなります。したがって、ある著作物について、著作権者とは別の人が商標登録を受けた場合は、その商標権者は著作権者の許諾を受けていなければ、その商標を使用することができないということになります。
A課長の会社やC社は、Eさんから、玩具や文房具についてはサ~坊のイラストを商標として使用する許諾を受けていませんでしたので、いくら商標登録を受けたからといっても、この範囲においてはEさんの著作権を侵害したことになるのです。

さて、A課長は、知り合いの弁理士に相談して、サ~坊のイラストを玩具や文房具に勝手に商標として使用できないことを知り、B部長やDさんとともに、Eさんに丁重に詫びを入れました。しかし、Eさんは「オラ!アミーゴ」で初めて知ったサボテンの味に感激していたため、快くグッズについてもサ~坊のイラストの使用を認めてくれたということです。


※コラムは執筆時の法令等に則って書いています。
※本コラム記事に登場する商標はすべてフィクションです。
※法令等の適用は個別の事情により異なる場合があります。本コラム記事を、当事務所に相談なく判断材料として使用し、損害を受けられたとしても一切責任は負いかねますので、あらかじめご了承ください。

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所長・弁理士 堀越 総明 (ほりこし そうめい)

日本弁理士会会員 日本弁理士会著作権委員会委員 東京都行政書士会会員 東京都行政書士会著作権相談員
東京都行政書士会任意団体著作権ビジネス研究会会員 株式会社ボングゥー代表取締役


「ボングゥー特許商標事務所」の所長弁理士として、中小企業や個人事業の方々に寄り添い、特許権、意匠権、商標権をはじめとした知的財産権の取得・保護をサポートしている。

特に、著作権のコンサルタントは高い評価を受けており、広告、WEB制作、音楽、映画、芸能、アニメ、ゲーム、美術、文芸など、ビジネスで著作物を利用する業界の企業やアーティスト・クリエイターを対象に、法務コンサルタントを行っている。

現在、イノベーションズアイにて、コラム「これだけは知っておきたい商標の話」、「知らなかったでは済まされない著作権の話」の2シリーズを連載し、また「ビジネス著作権検定合格講座」の講師を務める。

また、アート・マネジメント会社「株式会社ボングゥー」の代表取締役も務め、地方公共団体や大手百貨店主催の現代アートの展覧会をプロデュースし、国立科学博物館、NTTドコモなどのキャラクター開発の企画を手掛けた。


○ボングゥー特許商標事務所
http://www.bon-gout-pat.jp/
○ボングゥー著作権法務行政書士事務所
http://www.bon-gout-office.jp/
 
【著書】

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