アスリート・マインド ~挑戦者~

第10回

【藤光謙司選手】世界陸上銅メダリスト/アスリートの価値創造へ(後編)

柏木 太郎 2021年7月13日
 

着用しているマスクは藤光さんが手掛けるプロジェクトの一環であり、アスリートがプロデュースした商品。RZEUS[ゼウス]リオオリンピック銀メダリスト太田忍プロデュースブランド。


<藤光謙司選手プロフィール>

2016年リオデジャネイロ五輪出場。2017年世界陸上400mリレーで銅メダル獲得。起業家として、アスリートの価値創造に取り組んでいる。

中小企業がアスリートをサポートする時代へ

実業団のメリット

藤光 基本的に陸上競技は企業スポーツが中心です。プロスポーツとしては確立されていないので、スポーツを支援してくれる企業の力が必要になってきます。当時、北京オリンピックやリオオリンピックでメダルをとって陸上が一躍メディアに露出されるようになり、東京オリンピックも決まったことで、陸上選手を受け入れてくれる企業が一時的に増え、支援してくれる企業は増えたと思います。マイナースポーツほど競技を続けたくても出来ない状況は沢山あります。その中でも、陸上競技を支援して頂ける企業は本当に有難いですし、そういった企業に所属、雇用して頂けるということは、競技者としてはこれ以上にないメリットだと思います。

実業団の課題

藤光 もちろん、実業団に所属することで、メリットだけではなく課題もあります。どのような形でアスリートを採用しているのか、企業のCSRの一環であったり、プロ契約のような形であったり、様々な形があります。競技を続けていくことで自分ではどうすることも出来ない外的要因もありますし、自身のパフォーマンスが落ちてくれば、当然選手としての価値も下がってしまうという考え方が一般的です。また企業スポーツですので会社員としてある程度の補償はされていますが、努力した成果が大きく収入に跳ね返らないこともありますし、これまでの経験や競技で培ってきた能力を、その後の仕事に活かしきれないことも多いと思います。会社員や教員、指導者として、その能力を活かしていくのも素晴らしいことですが、なんだか勿体ないと感じてしまいます。



なぜ独立したのか

藤光 何かに頼っても、何も変わらないっていうことが、一番大きな要因かもしれません。何かを人に求めたり、外部に求めても、世界は変わらないし責任も取ってくれません。最終的に自分が変わることが重要だと思いました。自分が行動するしかないと考えた時に、既存のシステムの中で活動する必要はないんじゃないかなっていうところが大きかったかもしれないですね。

一般社団法人Athlete Honor(アスリートオーナー)

藤光 独立してから、いろいろな活動を行っていますが、その内の一つに、一般社団法人アスリートオーナーがあり、代表理事を務めさせてもらっています。根本にあるものは、アスリートの社会的価値を向上させたいっていうところから始まっています。

フランスのモデルを参考にしている

藤光 参考にしているのはフランスです。フランスでは国としてアスリートの社会的価値を認めました。そうすることで、どこに行っても「アスリートってすごいね」とか「アスリートは素晴らしいよね」と国民から認められるような存在価値となりました。

アスリートカード

藤光 フランスのそういう例を参考にしながら、頑張ってきたアスリート達に対して、社会が認めてくれた一つの形として何か作れないかっていうところで、【アスリートカード】というものを作りました。アスリートになれば、【アスリートカード】がもらえる。これまで頑張ってきた努力が報われる。海外のように年金や家をあげることはできませんが、福利厚生のようなサービスを受けられる環境を増やしていきたいと活動しています。お陰様で、多くの方に賛同して頂き、全国で約140万件以上のサービスが受けられるようになっています。



アスリートの駆け込み寺

藤光 【アスリートカード】から始まり、少しずつアスリートに対しての社会的な価値とか存在感っていうものを、賛同してもらえる企業と協力体制で広げていき、社団法人として更にいろいろな活動をしていきたいと考えています。アスリートに無償で様々なサービスを提供する場所。本当にアスリートが困ったら来られるような、駆け込み寺みたいな存在。アスリートが抱える課題を解決する為の一つのプラットフォーム。一般社団法人アスリートオーナーは、そのような場を提供するために作りました。

デジタルアスリートタウン【Top Hills(トップヒルズ)】

藤光 もう一つ、力をいれているプロジェクトを最近リリースしました。それがデジタルアスリートタウン【トップヒルズ】です。社団法人の活動である、アスリートの社会的価値向上や、アスリートが中心にいるっていうところは変わらないんですが、関わってくれる全ての人達に、循環や還元できる仕組みとして作ったものが、【トップヒルズ】となります。

スポーツビジネス拡大と問題点

藤光 オリンピックを契機に、国としてスポーツビジネスを2025年までに15兆円に拡大することを目指しています(官民戦略プロジェクト10の1つ)。こうした国の働きかけで、スポーツビジネスやスポーツに関わる事業が、どんどん発展していくことは喜ばしいことですが、一方で、アスリートに還元されにくい仕組みが依然として続いていることに、問題や課題を感じています。アスリートはスポンサーであったり、所属企業であったりとか、そういうことでしかサポート支援を受けられない体制で、選手活動のみで生活していると、成績や年齢で決められた条件などをクリアできなければ、支援が打ち切られてしまうのが現状です。



子供たちに夢を与える

藤光 現状の仕組みについて、大いに疑問を感じます。ある程度の成績を残した選手は、海外では社会に認められ生涯にわたって社会的な価値が高く、サポート体制も日本に比べると手厚い印象です。これからアスリート、スポーツ選手を目指す子供たちにとって、夢にならなくてはいけません。一瞬の価値や名誉にしかならないような仕組みでは、アスリートを目指したいとも思えない。子供たちに夢を与えられるような仕組みに変えていかなければならない。そんな仕組みを作るためにも【トップヒルズ】を立上げました。

しっかりとアスリートに還元していく

藤光 【トップヒルズ】では、メンバーになって頂いた高みを目指す個人、ファン、企業、全てのメンバーをアスリートと定義づけています。【トップヒルズ】の様々なプロジェクト、サービス提供、物作り(商品)は、関わった全てのアスリートに資金として還元し、循環できるような仕組みを作っています。

ビジネスアスリートの育成

藤光 国がスポーツビジネスの成長に力を入れる中、今後の企業スポーツ支援は縮小傾向にあります。これからは更にアスリート個人個人の自活力が必要になってくる厳しい時代になっていきます。アスリートがしっかりと自分で生計を立てられるよう、競技だけじゃなく社会で生き抜く力を身に着けられるよう、ビジネスアスリートの育成にも力を入れています。



トップヒルズの象徴「T3.」

藤光 【トップヒルズ】の象徴として、「T3.」という全員がオリンピアンでメダリストの5人組グループがあります。世の中のアスリート達に対して、ポジティブなパッションであったり、積極的に何事にも取り組む姿や背中で見せていき、次世代のアスリートを作っていくのが「T3.」というグループの役割だと思っています。

今後の目標

藤光 今はデジタルアスリートタウンですが、目標はリアル(現実)での街づくりです。今すぐ出来ることじゃないので、最初はデジタルからスタートしましたが、最終的には全部連携させて、一つの街としてリアルに作るというのが、自分の中で完成形です。どうぶつの森みたいに一つの街がデジタル上にあって、いろんなところに行ったらそれがリアルの世界に繋がっていく。そこでアスリートが中心となる新たな経済圏ができ、資金が循環し多くのビジネスアスリートが育成されていくことを目指しています。

メッセージ ~中小企業の経営者様へ~

藤光 オリンピック以降、スポーツを支援している企業のうち40%が、今後、支援の縮小や打ち切りを検討していると、最近のニュースで話題になりました。成果の可視化が難しく、費用対効果が計りにくいなどが原因のようです。これからの時代、スポーツ支援は大手企業だけではなく、中小企業の力も必要になります。これまで広告宣伝やCSR活動の一環の形だけでは難しいと思います。アスリートの「人の心を動かす力」は、単純に費用体効果では計れない、素晴らしい価値があるんです。その価値を増大するのに必要不可欠なものが、ファンであったり、支援者の「応援する力」だと思います。そして支援されるだけではなく、アスリート自身がもっと経済的合理性を生めるような能力も必要になると思います。自分達の活動を知って頂き、参加して頂き、アスリートの未来のために、是非皆様と一緒に活動できたらいいなと思います。【トップヒルズ】のホームページを是非一度ご覧になってください。https://www.town.tothetop.jp/



カンパニーメンバー(法人)募集中

デジタルアスリートタウン「トップヒルズ」HP

情報

藤光謙司選手Twitter

藤光謙司選手Instagram

協力

場所:ニューネックス株式会社

撮影:山さん

 
 

プロフィール

株式会社アゴラ
柏木 太郎

様々な業種業態(異業種)と交流し、共同で新規プロジェクト立上げに参加する。



HP:株式会社アゴラ

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