続・小さな会社のための広報術

第1回

広報が役立つもの・こと・タイミング

田熊秀美 2020年6月26日
 

事業の成長と安定に

私たちが小さいながら会社を立ち上げ、広報・PR専門の実務支援をはじめた2002年頃、「中小企業に広報なんて必要ない、それより営業だよ」とよくいわれました。BtoB企業になるとなおさらです。世の中が著しく変化した今でもまだ、そのように言われることは珍しくはありません。


2017年に当社で新たに、BtoB企業のための新規事業・販路開拓の支援業務を開始してから(新規事業実務研究会)、事業を成長させ、安定させるのに、広報・PRの機能がピタっとはまるもの・こと・タイミングがあることを都度ご説明しています。「広報など考えたこともなかった」という経営者や実務担当の方が、広報の利点に気付きはじめているのではと感じています。


この連載で最もお伝えしたいことは、「広報・PRをうまく使えば、営業にも販路拡大にもつながり事業を成長させ、安定させることができる」ということです。もちろん万能薬ではありませんが、確かにうまく役立つもの・こと・タイミングがあります。


特に新商品発売・新サービス開始をする際には広報はとても有効です。広告やイベント出展、SNSでの情報拡散を検討すると思いますが、できればその前に、広報・PRの基本的な活動を1つ行なうだけで、製品や社名について、認知度と信頼度を上げることができるからです。


プロモーションミックスフロー


図は、新商品や新サービスを展開する際に、顧客を獲得するための活動全体のなかで、どのタイミングで広報が役立つかを示した図です。それぞれのタイミングで、重きをおいたほうがよいと思われる活動をわかりやすく広報、広告、営業、販促に大きく分けて表示しています。しかし実際は、広報を営業や販促活動とも連携させることができます。広報の実施体制さえあれば、実は幅広く活用できるともいえます。広報を、マイルストーン、つまり事業の転換点のようなタイミングで行うことで、社外だけでなく、社内にも情報を浸透させる機能を担います。


ある素材メーカーを経営してきた社長さんが、20年近くかけて成長させてきた事業を振り返り、「広報という手法をもっと早く知っていれば、確実に広報をやっただろう。もっと効率よく営業成果を出せたはずだ」と話してくださったことがあります。中小企業だからこそできる広報の手法があり、それは事業の推進と安定のためのひとつの「解」であると確信した瞬間でした。


ニュースリリース(プレスリリース)5つの要素

前述した「広報の基本的な活動」とは、ニュースリリース(プレスリリース)という形式で、新商品、新サービスのことを説明し、自社のウェブサイトで発信すると同時に、メディアに届けることです。その際記載するのは、①製品・サービスの発売時期と概要、②誰にどのように役立つものであるか、③会社理念と製品・サービス開発の背景、④今後の目標(またはスケジュールや抱負)、⑤画像やグラフの5つの要素です。ニュースリリースは、古くから変わらない体裁ですが、この体裁でしっかりした内容を伝えるからこそ、発信元である会社への関心や信頼を高めることにつながります。これはこれまでやりとりさせていただいた記者の方々の声です。


社会情勢やメディア自体が変化するなかで、企業の広報部門から発信した情報の受け手となる対象(従来はメディアのみ)と発信の方法も同じく変化してきています。しかし広報の基礎となる考え方や本質的なところ、たとえば前述のようにニュースリリースを決まった体裁で作成して発信することなどは変わっていません。こうした変わらない原理原則を踏まえることは、武道でいえば型と同じです。型を体得しているからこそ、実践、つまり応用して戦える力が備わっているともいえると思います。特に今の時流に合ったやり方で、これまでにはない広報のやり方もできると考えています。


適切な言葉で伝える

広報は前述したように、営業や販路開拓と連携できる業務ですが、広報=営業ではありませんし、広告やプロモーション、販促活動とも違います。


日本語の広報という言葉は誤解しやすいのですが、パブリックリレーションズという言葉をひもとけばわかりやすくなります。パブリックリレーションズとはパブリックとの関係(リレーション)です。経営者は、製品やサービスを通じて、または地域での活動を通じて、常にそのことを考えているといえるのではないでしょうか。自社の製品やサービスがいかにお客様や株主、地域社会を喜ばせることができるかと。広報部門は、この目的のために「情報を発信していく」ことが主な業務のひとつになります。


「情報を発信していく」業務とは、明確な言葉、文章で「事実を正確に伝える」ことが基本となります。その繰り返しで、企業の信頼を積み重ねていくイメージです。広報としての文章が作れるようになっていれば、平常時はもちろん、非常時(危機が発生したとき等)でも信頼を損ねることなく発信できるようになります。 そのほか、経営計画書を作成する際には、広報としての目線で、言葉を選んだり、文章を構成したりできるノウハウがあれば、よりいっそう説得力のあるものを作れるようになります。

 

適切な言葉を使うこと、それを文章にすることの重みは、昨今の企業不祥事や炎上事例等を見ても多くの方が実感していることでしょう。どのように、「適切」な言葉を選べばよいのかといえば、私どもは、「体半分を社外の立場において、外部の目線で自社を説明する」こととご説明しています。前段でご紹介したニュースリリースの5つの要素をその目線で構成するだけで、ほぼ完成です。あとはちょっとしたコツで、取材につながったり、リリースの文章自体が記事に引用されやすくなったりします。 詳しくはニュースリリース5つの要素と10のワザにまとめています。

 

本コラムでは、少しでも多くの会社で広報担当者または広報部署を設置するきっかけになるように、広報が実際に役立った事例、広報の業務として少々問題のあった事例等をご紹介していきます。

 
 

プロフィール

株式会社アルゴマーケティングソリューションズ
広報コンサルティング統括 田熊 秀美


有機野菜宅配企業で社長秘書、会員向け会報誌の編集を経て1996年、広報チームリーダーに。広報として情報発信することの影響力、活用方法を学ぶ。環境関連財団法人での広報兼務後、経営コンサルティング会社を経て、2002年より現職。生産材(BtoB)企業を中心とした広報コンサルティングのほか、セミナー「小さな会社の広報術実践会」「企業広報実務講座」を運営。広報機能を企業に“移植”することを目指し、基礎知識と実践ノウハウを提供している。2017年よりBtoBの技術マーケティング会社である株式会社アルゴマーケティングソリューションズの一部署として活動し、BtoB分野に特化した記者発表および広報実務請負業に従事している。


HP:株式会社アルゴマーケティングソリューションズ

このコラムをもっと読む 続・小さな会社のための広報術

  • 第1回   広報が役立つもの・こと・タイミング

同じカテゴリのコラム

キーワードからコラムを検索する