IT関連の著作権

SNSにおける企業による投稿画像について

弁理士の著作権情報室

はじめに


企業は、公式アカウントから直接コメントを返信したり、自社で撮影した写真を投稿することでトレンドや顧客からのフィードバックに素早く対応できるメリットを生かし、SNSを積極的に活用しています。しかし、著作権等の配慮が行き届かずトラブルとなるリスクが少なからずあります。そこで、本稿では、企業がSNSで画像を投稿する際の著作権および関連する法律を踏まえた注意点について考えてみたいと思います。なお、画像に限らない企業のSNS活用の注意点については~SNSにおける著作権~をご参考にされてください。

SNSにおける企業による投稿画像について

他人の撮影した写真との類似について


投稿が新製品の告知目的などで自社商品を無背景で撮影した場合や、自ら被写体や構図を考えた独創的な写真であれば、他者著作権侵害のリスクは低いといってよいでしょう。では、自社商品を生活シーンに置いて他の物品と一緒に撮影したり、季節やイベントの話題で街の風景を撮影する際に、他人の写真を参考にすることは問題ないでしょうか?

他人の写真を参考にし、その創作性のある部分が類似した写真となった場合、参考にした写真の著作権者の複製権または翻案権の侵害にあたる可能性があります。著作権侵害は、依拠性(既存の著作物を参考にしたこと)と類似性(当該既存の著作物に類似していること)の2つの要件がそろったときに成立します。自社で撮影した画像が「参考にした写真と類似した」となれば、2つの要件を満たすことになり得るからです。

そのため、他人の写真を参考にすることは基本的に避けた方が良いでしょう。もしどうしても参考にしたい場合は、参考にする写真を複数(可能であれば3枚以上)用意し、共通する特徴のみを類似させ他の部分は独自性を出すように撮影することが考えられます。複数の写真に共通する特徴のみが類似するのであれば、仮に参考にした写真の著作権者からクレームを受けた場合でも、類似する点はありふれた表現で著作物性はないと反論ができる余地がありますが、クレームを受けるというリスクは依然残ります。

また、撮影後は念のため、ネット上の類似画像検索機能を使ってチェックしてみるのも手です。模倣を疑われるほど類似した画像がヒットした場合は、撮影をし直してトラブルを未然に回避できます。

他人の著作物を被写体にすることについて


次に、被写体として「他人の著作物」を利用することについて考えてみます。
他人の著作物を許諾なく配置して撮影した画像を投稿しても問題ないでしょうか?

著作権法には著作権が制限される規定として「付随対象著作物の利用」があります。この規定の要件を満たせば、著作権者の許諾を得ずに他人の著作物を利用できます。撮影した写真に他人の著作物が偶然写り込んでしまう場合などが該当します。詳細は、自分の写真等に他人の著作物が写り込んでしまう(いわゆる写り込み)場合、その著作物の著作権者の許可が必要?をご参照ください。
しかし、被写体として意図的に他人の著作物を選択した場合、「付随対象著作物の利用」の規定が適用されるかどうかは疑問です。というのも、この規定は「写真の撮影等の対象とする事物等から分離することが困難」であることが要件のひとつだからです。そのため企業活動においては他人の著作物を被写体として選択することは避けた方が良いでしょう。

一方で、街の風景を撮影した際に、ポスターや絵画が背景に小さく映り込んでいる場合は、一般に「付随対象著作物の利用」の規定が適用される可能性が高いといえます。

他人のブランドロゴ、商標が被写体に含まれる場合について


次に、著名なブランドのロゴが入った商品やその模様等がブランドの特徴となっている商品を自社商品と一緒に撮影することについて考えてみます。

ブランドのロゴは、その企業が所有する知的財産であり、特に著名ブランドについては、無断利用について厳しい監視をしており、ブランドロゴ等が投稿写真に写っていることで、そのブランドの持つ顧客吸引力を利用しようとしていると疑われたり、ブランドイメージを損なうとして、不正競争防止法を根拠にブランドの所有者から使用中止の申し立てを受ける可能性があります。著名なブランドのロゴが被写体に含まれることがすべて不正競争に該当するというわけではないと考えますが、企業のイメージアップ等のためのSNSでの情報発信にクレームがついては本末転倒です。不用意に他人の著名なブランドロゴや商品を被写体に選択することは避けたほうが良いでしょう。

その他の留意点


投稿写真の撮影に当たっては、他にも注意点があります。まず、撮影場所です。神社、仏閣などは商業目的での撮影は禁止となっていることがあります。また、個人の家が写真に映り込むことでプライバシーや個人情報保護の観点から問題を引き起こす可能性もあります。これらは撮影場所として避けるか、撮影にあたって事前許諾を得たり、プライバシー等への必要な配慮を行ってください。
さらに、街の風景等を撮影する際には、人物が不用意に映り込まないよう注意してください。通行人などを排除できず、映り込みが避けられない場合は、個人が特定できないように人物にぼかしを入れるなどの配慮が必要です。これは肖像権に関係する問題です。被写体に許可なく撮影し、公開してもよいの?~肖像権について~ に詳しく解説していますのでご参照ください。

まとめ


以上のように、企業がSNSで写真を投稿する際の注意点について考えてみました。著作権法等の正しい知識を身につけることで、SNSを顧客との効果的なコミュニケーションツールとして活用することができます。ぜひ、これらのポイントを心に留めてご活用ください。

令和7年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 橋爪 美早子

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

※ 著作権に関するご相談はお近くの弁理士まで(相談費用は事前にご確認ください)。
また、日本弁理士会各地域会の無料相談窓口でも相談を受け付けます。以下のHPからお申込みください。

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