IT関連の著作権

NFTとプラットフォームと著作権

弁理士の著作権情報室

巷で良く聞く「NFT」。凄そうで、ビジネスチャンスもありそうだけど、中身がなんだかよくわからない。本稿では、なるべくわかりやすく解説してみようと思います。

NFTとプラットフォームと著作権

そもそも、NFTってナニ?


NFTに、ルビを振ってみますね。

無い    代替性が    データ
ノン(N)ファンジブル(F)トークン(T)

NFTとは、要はデータです。でも、代替性ってナニ? それは、「替えが効く」ということ。

代替性の「ある」ものとして、例えば千円札があります。あの千円札と、この千円札、どちらも同じ価値ですよね。あの千円札と、この千円札とを交換しても問題ない。替えが効くので代替性がある。

では、ドラえもんの絵と、ポケモンの絵の場合どうでしょうか? どちらも素敵な絵だけれど、価値は同じではない。交換したら、別の絵になってしまいますから。つまり替えが効かない。代替性がない。

このような、代替性のない=それぞれ違う価値をもったデータのことを、NFTと呼ぶわけです。

NFTは著作物なの?


ノンファンジブルトークンそのものは、単なるデータの羅列ですので、(基本的には)著作物ではないです。むしろ、ノンファンジブルトークンに紐づいた絵や音楽などのコンテンツが著作物であり、コンテンツが著作権法で保護されています。

NFTが、コンテンツと紐づいている?


はい、紐づいています。現状、例えば以下の2種類のパターンがあります。

(1)ブロックチェーンに、コンテンツへのリンク情報がある。
(2)ブロックチェーンに、コンテンツの「素」がある。素=コンテンツを生成するプログラム等。

……いや、ちょっと待って? その「ブロックチェーン」ってナニ?


お料理の手順みたいな感じで表現してみますね。

(手順1)1~複数の取引情報を1つの塊(ブロック)に入れます。
(手順2)ブロック同士を順番に鎖(チェーン)のように繋ぎます。
(手順3)繋いだソレ(台帳)、同じものをみんなが持ちます。
はい、ブロックチェーンの出来上がり!

そうすると……。
1つの台帳を改ざんしてもムダ! なぜなら他の人が持っている台帳と内容がズレて、改ざんがバレてしまうから。

つまり、改ざんするとバレてしまうような所(ブロックチェーン)に「トークン」や「NFT」と呼ばれるデータがあって、(1)そのデータからコンテンツへとリンクが貼られていたり、(2)そのデータにコンテンツの「素」が埋まっていたりする、ということになります。

絵をNFT化! 著作権的にはどうなるの?


NFTを買っても、原則、NFTに紐づいた絵の著作権まで手に入れられるわけではないので注意が必要です。(NFTを売買するためのプラットフォームが、絵の著作権まで渡すようにという別段の定めをしている場合などは、話が異なります)

つまり、NFTを買った人が、NFTに紐づいた絵について何でもできるか? というとそうではないので気を付ける必要があります。例えば……。

買ったNFTに紐づく絵をコピーしてあちこちに配りたい!


著作権法上は原則NGです。なぜなら、「絵の」コピーは著作権法上の「複製」に該当するからです。複製権を持っている人の許諾が原則必要になります。NFTの購入は、NFTに紐づいたコンテンツについて、複製権の譲渡を意味するとは限りません。複製の許諾を意味するとも限りません。

買ったNFTに紐づく絵を手直しして、新しいオリジナルNFTを作りたい!


著作権法上は、(やっぱり)原則NGです。絵の改変は著作権法上の「翻案」に該当し得ます。翻案権を持っている人の許諾が原則必要になります。NFTの購入は、NFTに紐づいたコンテンツを翻案する権利の譲渡を意味するとは限りません。翻案の許諾を意味するとも限りません。

インターネットで拾ってきた絵をNFT化して売りたい!


NFT化する際に、絵のデータコピーも行われるのであれば、絵の著作物についての複製権がありますので、複製権を持っている人の許諾が原則必要です。絵の改変が行われるのであれば、絵の著作物についての翻案権がありますので、翻案権を持っている人の許諾が原則必要です。無断でやると著作権侵害のリスクがあるのでご注意!

NFTを売買するプラットフォーム(以下、PF)を使う場合


PFの利用規約を読んだ方がいいです。著作権がPF上でどう扱われるかが、利用規約で予め規定されている場合がほとんどだからです。利用規約を読めば、トラブルに見舞われる確率をグン! と下げることができます。もし分からないことがあったら、ご相談頂ければ幸いです。

利用規約あるある


2021年に弁理士数名で、数社のPFの利用規約を調べました。(利用規約そのものの有効性の論点はあるものの)、おおむね、以下のようなルールになっている所が多かったです。

(1)NFTを売買するなら自己責任でやってください。
(2)貴方が売るNFTが著作権的にセーフであることを貴方が保証してください。
(3)貴方が買ったNFTが著作権的にセーフであるということをPFは保証しません。
(4)いずれにせよ、PF側には責任はありません。
(5)他のPFにNFTを移動させたとして、その先でどうなるかについては我々のPFは関知しません。

基本ルールを知って、安全にNFTを楽しみましょう!

令和4年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 松田 真

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

※ 著作権に関するご相談はお近くの弁理士まで(相談費用は事前にご確認ください)。
また、日本弁理士会各地域会の無料相談窓口でも相談を受け付けます。以下のHPからお申込みください。

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