保護期間が終了した著作物はどうなってるの?
1.著作権の保護期間について
著作権は、著作物の創作のときに始まり、一定期間にわたり著作者の権利を保護する制度です。この期間は永遠に続くものではなく、原則として著作者の死後70年とされています。そして、この保護期間が満了した著作物は、誰でも自由に利用できる状態となります。これは、いわゆる「パブリックドメイン」と呼ばれています。
ここでは、保護期間が満了した著作物がどのように利用されている、また、その利用にあたっての注意すべき点について少し紹介します。
なお、著作権の保護期間(存続期間)の基本的な考え方については、この「弁理士の著作権情報室」の『著作権はいつからいつまで続くの?』において、より詳しく説明されていますので、併せてご参照ください。
2.パブリックドメインとなった著作物
パブリックドメインとなった著作物については、著作権の保護期間が終了しているため、複製、配布、翻訳、上映などを行う際に、著作権者の許諾を得る必要はありません。
しかし、著作権の保護が及ばなくなったからといって、無条件に利用可能となるわけではありません。他の知的財産権や、二次的に発生する権利などによって保護されている場合もあるので、実際は注意が必要です。
3.蒸気船ウィリーに登場したミッキーマウスについて
近年、著作権の保護期間が終了した著作物として話題となったのが初期のミッキーマウスです。これは、1928年に公開された映画「蒸気船ウィリー」に登場したミッキーマウスを指します。蒸気船ウィリーは、米国の著作権制度の下、長期間保護されてきましたが、2024年1月から、パブリックドメインとなりました。これを受けて、海外では、初期のミッキーマウスを用いた映像作品やゲームなど、さまざまな二次的創作が登場しました。
ただし、蒸気船ウィリーに登場するミッキーマウスは、モノクロで描かれ、白目がなく、手袋もしていないなど、現在広く知られているミッキーマウスとは外見・イラストが大きく異なります。例えば、映画「ファンタジア」に登場するミッキーマウスの外見・イラストについては、別の著作物として著作権の保護が続いており、自由に利用できるわけではありません。
また、保護期間が満了した後であっても、キャラクターの名称や図形・イラストが商標登録されている場合や、不正競争防止法によって保護される場合があります。商標権は更新を行うことで、より長期間にわたり維持され得るため、保護期間が満了したからといってすぐに安心して利用できるというわけではありません。
ちなみに、キャラクターという抽象的な概念そのものが、著作権として保護されるわけではなく、映画やイラストなどにおける具体的な表現が著作物として保護されています。この点については、『物語のキャラクターは著作物ではないの? 「木枯し紋次郎」事件』や『マンガ・アニメのキャラクターデザインを自由に真似しても大丈夫?』において、より詳しく説明されています。
4.クラシック音楽について
モーツァルトやショパンといった作曲家のクラシック音楽は、すでに著作権の保護期間が満了しており、原曲そのものについては誰でも自由に利用することができます。例えば、ショパンの幻想即興曲を自らピアノで演奏し、動画として配信することも可能です。原曲の保護期間が満了しているため、著作権者の許諾を得る必要はありません。ただし、演奏音源を利用する場合や、編曲を用いる場合は、それらに関して新な著作権や著作隣接権が発生している場合があります。クラシック音楽を利用する場合であっても、原曲なのか、演奏や録音なのかを注意する必要があります。
5.小説について
サン=テグジュペリや夏目漱石などの小説作品についても、著作者の死後一定期間が経過し、保護期間が満了しているものがあります。そういった小説の原作そのものの文章は、原則として自由に利用することができます。青空文庫というサイトでは、保護期間が満了した小説が有志によってテキストデータ化され、電子書籍として無料公開されています。また、原作の内容を基に、オリジナルの表現で他作品に登場させることも可能です。
しかし、編集版や海外小説についてはその翻訳文には、それらの作成に際し新たな著作権が発生している場合があります。保護期間が満了した小説を利用する場合であっても、その文章が原作そのものなのか、二次的著作物なのかを注意する必要があります。
6.まとめ
さて、ここでは、著作権の保護期間が満了した後の著作物の利用について、いくつか例を紹介させていただきました。保護期間が満了した著作物は、著作権法的には自由に利用できる場合があります。
しかしながら、他の権利との関係を踏まえた非常に複雑な検討が必要になることも少なくありません。著作物によっては、権利の始期および終期を正確に特定することが難しい場合もあります。
加えて、現代の風潮として、リスペクトのない利用方法は、社会的評価の低下や炎上のリスクがあると思います。いずれにせよ、過去のコンテンツの活用はグレーな部分も多く、著作権だけでなく、関連する権利関係を整理した上でしっかりと検討することが重要といえるでしょう。
令和7年度 日本弁理士会著作権委員会委員
弁理士 山本 竜也
※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。
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