ビジネスの著作権

社内会議で「YouTube」の動画を見せてもよいの?

弁理士の著作権情報室

はじめに


「あの動画を見れば簡単にイメージが伝わる」と、社内会議でYouTubeの動画をスクリーンに映したくなることはありませんか?今回は、YouTube動画を社内会議で利用することについて、著作権法の観点から考えてみましょう。

社内会議で「YouTube」の動画を見せてもよいの?

社内上映は著作権侵害?


社内会議におけるプレゼン等で YouTube動画にアクセスし、会議室のスクリーンに映すことやWEB会議でYouTube動画を画面共有して参加者に見せることは、公衆送信に該当すると考えられます。また、事前に動画をダウンロードして会議資料のスライドへ組み込んでスクリーンに映し出した場合は、ダウンロードすることで著作物を複製し、それをスクリーンに映し出すことで公衆への上映を行ったと考えられます。つまり、いずれも著作権者の同意なく行った場合は原則著作権侵害に該当する行為と考えられます。

社内会議であれば、公衆に当たらないのでは?と思われるかもしれませんが、著作権法の「公衆」には特定多数も含まれます。何人なら少数で何人なら多数という明確な基準はなく、「著作物及び行為態様により相対的に決定される」とされていますが、数十人以上が出席する会社での会議の場は、公衆に該当すると考え、注意を払った方がよいでしょう。

また、著作権法では著作者の許諾なく著作物を利用できる例外規定があります。考えられるのは「私的使用の複製」と「営利を目的としない上映」ですが、会社の事業活動の一環として行われる会議での利用は、私的使用にも、非営利にも当たらないでしょう。

それでは、動画の利用を断念するしかないのでしょうか?
もちろん著作権者から許諾を得ることができれば利用できることは言うまでもありません。ここではもう一つの可能性として「引用」について考えたいと思います。

引用で適法に利用する条件


引用が認められるには、少なくとも次の5点を守る必要があります。なお、引用の要件として、利用する著作物が公表された著作物であることが必要です。今回はYouTube動画の利用なので、「公表された著作物であること」の要件はすでに満たしています。

1.改変せずに使用すること
動画そのものを改変せずに利用すること。必要部分だけを抜粋(例えば動画の0:35〜1:10のみ上映)することは可です。
2.明瞭に区別すること
どこからどこまでが引用か、聞き手に一目(耳)で分かるようにすること。例えば動画の再生前に「これより引用動画(出所:YouTube)を再生します」と口頭で宣言し、資料には枠やキャプションで「引用部分」と明示するとよいでしょう。
3.主従関係にあること
自己のプレゼンが「主」でYouTube動画が「従」となる構図とすること。つまり、当該動画の再生時間より長い解説・分析・提案を行い、「動画を見せること」が目的にならないことです。単に「参考までにご覧ください」というだけでは不十分です。
4.引用の必然性があること
プレゼンの論旨と動画が直接結び付いていること。「見栄えがよくなるから」「面白いから」「ウケそうだから」だけでは要件を満たしません。
5.出所・著作者名の明示をすること
画面や配布資料に「出所:YouTube『動画タイトル』/著作者:○○」を明記すること。再生にあたり口頭でも触れると安全です。

さらに


1.会議の記録を残す
万一のクレームに備え、当日のプレゼン全体の動画や資料(動画からYouTube動画自体
は除き、資料にはURLのみを記載)を保存しておくと「適法な利用だった」と説明でき
ると考えます。
2.ガイドラインを社内で共有する
「引用チェックリスト」を作り、誰がプレゼンしても同じ基準で運用できる体制を整え
ておくことをお勧めします。

引用要件を満たす自信がない場合は、利用を断念するか動画の権利者に利用許諾を得るのが確実です。たった数分の動画でも、日常的に行われていれば、会社としての法令順守の体制に疑いをもたれ、著作権侵害が指摘されれば企業の信用失墜につながります。事前の一手間で余計な法的リスクを避け、安心して伝わるプレゼンを目指しましょう。

令和7年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 橋爪 美早子

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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