ビジネスの著作権

クリエイターなら知っておきたい著作権契約のいろは

弁理士の著作権情報室

著作権契約がなぜ重要か


グラフィック、音楽、写真などの作品を生み出しましたら、それを世の中に提供し、評価を受けることになります。素晴らしい作品と評価を受けられれば嬉しい気持ちになるでしょう。

しかし、せっかくの渾身作が勝手に使われたり思いもよらない使われ方をしたりして悲しい気持ちになってしまうこともあり得ます。こうしたことを防ぐにはどうしたら良いのでしょうか。

そのためには、「著作権」や「著作者人格権」(以下まとめて「著作権等」といいます。)を活用するという方法があります。

生み出した作品が著作物であれば著作権等を取得することができ、取得した著作権等を活用することで、様々に創意工夫を凝らして創り出した作品を適切に利用してもらうことができます。

また、クリエイターが適切な対価を得るチャンスも得られます。しかしそのためには単に著作権等を保有しているだけでは不十分で、「著作権契約」をしっかりと行うことが欠かせません。

そこで、本記事では著作権契約の重要なポイントに絞って解説したいと思います。

クリエイターなら知っておきたい著作権契約のいろは

著作権等を持っているとできること


クリエイターによって創作され世の中に提供された作品やコンテンツは、人に見てもらったり、聞いてもらったりするなど、使ってもらい楽しんでもらうことで世の中を豊かにすることができます。ですから、世の中に提供された作品は、できるだけ多くの人に使ってもらった方が良いといえます。

しかし、世の中の人に使ってもらうのは良いものの、その作品を創った人に何も還元がされなければそれを創ったクリエイターとしては面白みもうまみもなく、それどころか好き勝手に手を加えられてしまうことが許されては、立ち所に創作活動をする方は減っていってしまうでしょう。

そこで著作権法では、こうした不利益が生じることがないよう、著作権法上の著作物に該当する作品について、特定の利用態様に関し、原則として独占することを認めることにしました。それが「著作権」で、具体的には「複製権」や「公衆送信権」などの個別の権利の集合体です。また、その作品の利用にあってはクリエイターの人格的な利益が害された際に救済が得られるよう、「著作者人格権」という権利を設けました。

つまり、著作物を生み出したクリエイターは、その著作物の利用に関して、適切な対価を受け取ることができるとともに、条件次第では他人に対してその利用の中止を求めることができるようになっているのです。

もしその利用が無断利用である場合には、その人に対して権利侵害である旨の連絡をして、事案によっては裁判所に訴え出て実現するというケースもあります。しかし、そのような裁判を起こすというのはどちらかといえば稀で、著作物である作品を利用したいという人や会社等との間で予め契約を結ぶことで、争いを避けてクリエイターの納得のいくかたちでの利用をしてもらい、かつクリエイターとしては対価を受け取ることができるようになります。

このため、著作権契約は、作品を世に提供するクリエイター全員が関係するテーマだといえます。

作品の利用を許諾する場合〜利用許諾契約〜


著作権を持っていると、著作物の利用について独占することができることは上で述べましたが、これを裏返すと、著作権を持っていれば、著作物を利用したいという人にその利用を許諾することができるということです。その利用を許諾することの合意が著作物の「利用許諾契約」です。

利用許諾契約は、「契約書」で取り交わす必要はなく、口頭やメール・チャットなどで合意をしたとしても成立しますが、後のトラブルのことを思えば、できれば契約書、あるいは覚書などの書面に利用の条件を明記して残しておく方が望ましいといえます。

次に利用の条件についてですが、まず、利用の対価は無償でも良いですし、有償とすることもできます。あまり高額な対価を求めると誰も利用したくないのではないかと思うかもしれませんが、契約相手が自由な意思で承諾する限り、対価は基本的に好きに決めて構いません(契約自由の原則)。

また、その許諾する利用の範囲についても明記しておきましょう。例えば単純な複製だけを認めるのか、その複製した物を販売することも認めるのか、あるいはインターネット配信まで認めるのかなど、利用したいという範囲を明らかにしておくと良いでしょう。

さらに、利用する期間を定めたり、商業利用の可否について定めたりすることもあります。例えば企業や商品のロゴマーク・シンボルマークの創作を依頼された場合、商標登録をしてビジネスで利用することが前提になっていることもありますので、どういう目的で依頼をしてきているのかを確認することは大切です。

このほか、あなたの作品を元に別の作品を創りたいという人もいるかも知れません。いわゆる「二次創作」というものです。例えば、小説を元とした漫画やアニメ・ドラマを創るといった場合や、キャラクターイラストを元としたぬいぐるみや人形を創るといった場合が考えられますが、これらに限りません。二次利用の態様は多岐にわたりますので、他人があなたの作品を利用したいという場合に、その利用が二次創作の範疇に入るのかどうかは、契約内容の特定という観点で法的な判断が必要となります。

いずれとしても、あなたの作品を使いたいという人が、具体的にどのような利用を想定しているかをしっかりと確認し、それを踏まえて契約を結ぶことが大切です。

著作権の譲渡をする場合〜譲渡契約〜


前項では、著作物を利用したい人に対して、著作権に基づいて利用を許諾する場合の契約についてまとめました。本項では、著作権を譲渡する場合についてまとめてみましょう。著作権を譲渡できるのかと思われた方もいるかもしれませんが、著作権は財産的な権利であり、他人に譲り渡すことができるものとされています。

著作権を他人に譲り渡すには、著作権者と著作権を欲しいという人とでその旨の合意をする必要があり、その合意を著作権の「譲渡契約」といいます。利用許諾契約と同様に、口頭やメール・チャットでも成立しますが、トラブル防止のためには、やはり書面で残す方が良いです。

著作権の譲渡の対価は無償でも良ければ有償でも良いです(無償の場合は「贈与契約」、有償の場合は「売買契約」になります。)。対価の額は、契約相手との合意ができればいくらでも良く、その対価は、契約相手との力関係にも左右されるかも知れませんが、著作権の一部を譲渡するに過ぎないのか、それとも二次利用する権利までの全てを含むのかによっても大きく左右されます。

著作権の一部を譲渡することも法的には問題なく、著作権をどの範囲で譲渡するかについては、相手方と協議のうえ、その全部とすることも、その一部とすることも可能です。具体的には、著作物を複製する権利(複製権)のみを譲渡することとしても良いですし、著作物を改変して二次利用をする権利(翻案権等)まで含めて全ての著作権を譲渡することもできます。

ただし、全ての著作権を譲渡する場合には、その譲渡契約において、翻案権等や二次的著作物の利用に関する原著作者の権利についても譲渡対象に含むことが特掲されていなければ、これらの権利については元の著作権者(著作権を譲渡した者)に留保されたものと推定されることになりますので、契約書を作成する際には、著作権法第27条及び第28条に規定する権利を譲渡対象に含むと明記することを忘れないようにしましょう。

通常、著作物を使えれば良いのであれば利用許諾契約で十分ですから、わざわざ著作権を譲り受けたいという場合、契約相手は、その著作権の対象になっている著作物について、制限なく複製をしたいとか、誰かに利用の許諾をしたいとか、あるいは自ら著作物に改変を施したいといった考えがあるのではないかと考えられます。

著作権を譲渡してしまうと、たとえその創作をした著作者であっても、譲渡後に契約相手に無断で著作物の利用をすると著作権侵害になってしまいますので、著作権を譲渡するときには、譲渡してしまって問題ないか、その対価は適切であるか、ライセンスバック(著作権の譲渡後の自身の利用について許諾を受けること)を受けるかといった点に注意して、慎重に検討するようにしましょう。

なお、企業内のデザイナーなど、企業に所属するクリエイターが自らの仕事として創作した作品については、「職務著作」に該当するとして、企業が著作者となって初めから著作権を取得する場合もあります。職務著作についてもっと詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。
自分で創作した著作物が会社のモノ?-職務著作について-


著作者人格権の取り扱い


冒頭で、著作物を創作すると著作権のほかに著作者人格権という権利も取得すると書きました。著作者人格権は、具体的には「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」からなります(このほか、著作者の名誉や声望を害してはならないことも定められています。)。著作者人格権について詳しくは以下の記事をご参照ください。

著作者人格権ってどんな権利?著作権とはどう違うの?


これらの著作者人格権は、文字どおり著作物を創作する者の人格的な権利で、放棄をしたり誰かに譲渡したりすることが認められていません。このため、著作物の利用許諾をしたり著作権を譲渡したりしたとしても、著作者人格権は著作者(元の著作権者)のもとに残るため、特に二次利用を行う場合に、著作権の観点では問題ないとしても、著作者人格権の観点から問題になることがあります。

仮に利用許諾を受けたり著作権譲渡を受けたりしたとしても、著作者の意に反するような改変を行わなければ問題とはなりづらいのですが、どの程度の改変であれば意に反しないのかというのを画一的に線引きすることは容易ではなく、実務上、特に作品を利用する側の立場からは判断に苦慮する場面も少なくありません。

こうした背景から、主に著作権の譲渡契約において、著作者人格権を行使しない旨の特約が契約書中に設けられることがあります。著作者人格権の不行使特約について詳しくは、以下の記事をご参照ください。
著作権の譲渡契約書に著作者人格権の不行使特約(不行使条項)があったときの対応

まとめ


ここまで、著作権に関する契約についてまとめてみましたがいかがだったでしょうか。細かいことのように感じられたかも知れませんが、いざトラブルになれば「言った・言わない」の水掛け論になりがちですし、とかく自分に都合よく解釈したがるのは人の性です。説教くさいですが、備えあれば憂いなし、転ばぬ先の杖とご理解いただき、著作権契約について、意識を向けてもらえたら何よりです。

ちなみに、文化庁では「著作権契約書作成支援システム」を公開しており、当サイトでもその活用方法の紹介をしていますので、ぜひご活用ください。
知っていますか?著作権契約書作成支援システム

なお、オマケのトリビアですが、著作物などの知的財産の専門家と法律に明記されているのは、実は弁理士だけなのです。もし分からないことや悩まれることがあれば、著作権に詳しい弁理士に相談してみると良いと思います。

令和5年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 伊藤 大地

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

※ 著作権に関するご相談はお近くの弁理士まで(相談費用は事前にご確認ください)。
また、日本弁理士会各地域会の無料相談窓口でも相談を受け付けます。以下のHPからお申込みください。

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