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ビジネスの著作権

業務上使用するための著作物の無断複製が私的使用のためと言えるかについて〜舞台装置事件〜

弁理士の著作権情報室

東京地裁昭和48年(ワ)第2198号昭和52年7月22日判決

著作物の無断複製は著作権者が有する複製権を侵害することになります。しかし、私的使用のためになされる複製は例外的に許容されています。この事件では、企業の内部で使用する目的でする複製が、ここにいう「私的使用のための複製」に該当するかが争われました。

業務上使用するための著作物の無断複製が私的使用のためと言えるかについて〜舞台装置事件〜

事件の概要


本件は、舞台装置一式の設計図の著作権を有する原告が、当該設計図を無断複製した被告らを相手取って著作権侵害による損害賠償を求めたものです。この事件で被告らは、「自社用資料として、使用する目的のものであつたから、その複製については、原告の許諾を得る必要がない旨」を主張したため、私的使用のための複製に該当するかが争点となりました。

著作権法の規定


第30条 著作権の目的となっている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
(以下略)

裁判所の判断


裁判所は、「企業その他の団体において、内部的に業務上利用するために著作物を複製する行為は、その目的が個人的な使用にあるとはいえず、かつ家庭内に準ずる限られた範囲内における使用にあるとはいえないから、同条所定の私的使用には該当しないと解するのが相当である。」と判示し、私的使用のための複製であるとの被告らの抗弁を退けました。

留意点


私的使用のための複製は、著作権者の許諾を得ないで著作物を利用することができる類型のひとつですが、ここにいう「私的」の意味は、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」という意味合いで検討しなければならず、会社における使用のためである場合にはこれに含まれないものとなります。

もっとも、著作権法では、これに限らず、例えば検討の過程における利用も許容されています。どの作品について著作権者の許諾を得て利用をしようかと社内で検討を行う際に、関係部署や同僚・上司などに資料として配布を行うにあたり複製等を行う場合であっても著作権侵害とならないということが定められています。

これらの「私的使用のための複製」や「検討のための利用」に該当せず、また、他の権利制限規定の適用が困難であるなど、著作権者の許諾を得るべきときは、必要なステップを踏むようにしましょう。

令和4年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 伊藤 大地

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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