ビジネスの著作権

フリー素材のロゴを商標として使用しても大丈夫?

弁理士の著作権情報室

著者はSNSや動画配信などを趣味で行っています。しかし、絵心が小学生低学年レベルのまま弁理士になってしまったので、フリー素材を良く使用させていただいております。
なお、弁理士には絵心は不要みたいです。

フリー素材をタイトルに使用している動画などは良く見かけると思いますが、ここではもう少し考えを深めて、このフリー素材を商標としても使用しても良いものか考えます。

フリー素材のロゴを商標として使用しても大丈夫?

1.商標登録の可能性


フリー素材を商標として出願するにあたり、商標の登録要件について考えます。
商標として登録されるためには、「識別力」が必要になります。例えば、単なる〇や▲など簡単な図については、識別力が無いとして登録されません(商標法3条1項各号)。

一方、独創的で特徴のある絵柄などについては、商標登録を受ける可能性があります。そうすると、独創的で特徴のある絵柄などについては、他人の著作物であっても登録できてしまうという事態が起こりえます。

これについては、過去記事「他人が制作したロゴマークやキャラクターは勝手に商標登録できるの??~著作権と商標権の関係にまつわる話」にも触れられています。

2.登録後の救済


一方、自分の著作物が勝手に登録された場合はどんな手段が採れるでしょうか?
商標法上のルールでは、この様な商標については「剽窃的な商標」として登録を受けることはできないとされています(商標法4条1項7号)。これに違反して登録を受けた場合は、異議申立(同法43条の2第1号)、無効審判(同法46条1項1号)の対象になります。

しかしながら、現実的にはなかなか主張立証が難しいようです。対策が困難であることに鑑みて、こういう「パクリ」があった場合には、いち早く対策を採る事が必要と考えます。
なお、過去記事「自分がデザインしたロゴマークやキャラクターなどの著作物が他人に勝手に商標登録されることはありますか?」もご参考下さい。

3.よくある間違い


「フリー素材」と聞くと、「著作権を放棄している」と誤解される方を一定数見かけますが、両者はイコールではありません。

著作権とはいくつかの権利の集まりになっています。例えば、著作物に対してお金をもらう権利の他、著作物やコピー品を他人に渡す権利や、著作者の意図しない改変を受けない権利など多数あります。良く「商用利用可」など注意書きがあるのも、こういった権利を明確にする為です。

そして、「フリー素材」とは、その権利のうちの1つである「お金をもらう権利」について請求しないと言っているにすぎません。その他の権利については放棄していない以上、フリー素材なので好き放題悪用して良いという事はありません。

4.ロゴ商標の制作を考える場合


ビジネスを行い、そして商標登録まで考える場合は、その商標の名称やロゴを自分で考えるのが一般的と思います。

しかし、筆者は絵心が無く、著作物性のあるロゴを創作できるとは到底思えません。その上、ロゴマークの著作物性について争われた事案があります。文字を装飾的にロゴマークとしたものですが「文字の字体を基礎として含むデザイン書体の表現形態に著作権としての保護を与えるべき創作性を認めることは、一般的には困難であると考えられる。(平成6(ネ)1470号)」として著作物性を否定しています。

一方、自身ではデザインできないと考えて、他人にロゴマークの創作をお願いする事も考えられます。そして、熱心なデザイナーさんの創作による場合には、著作物と言える程度に創作性の高いロゴマークとなる場合も考えられます。

こうして、創作性の高いデザインのロゴマークを発注できた!と安心したい所ですが、実は依頼した相手方がフリー素材から引っ張ってきていた!!…と言った、うっかりフリー素材を利用してしまう問題もあるかもしれません。

こうした、ロゴのデザインなどを委託する場合にも、注意する事があります。この点については、過去記事「グラフィックデザイナーにロゴなどの制作を依頼するときの注意点について」をご参考ください。

5.まとめ


著作権については基本的には創作者が権利を持つことになりますが、商標は創作物ではないと考えられている為、創作者に関するルールもありません。

こういったことから、著作権と商標権の権利の抵触が起こりえます。他人の権利と争うことなく、ビジネスが進む事を祈っております。

令和3年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 山本 雅之

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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