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知っていますか?著作権契約書作成支援システム

弁理士の著作権情報室

皆さま、文化庁が構築した「著作権契約書作成支援システム」についてご存じですか?

このシステムは、口頭契約によるトラブルの回避などを目的として、一般の方々を対象者とし、いくつかの利用場面について、著作権等に関する一般的な契約書式のひな型を提供する、文化庁が開設したウェブサイトで、なかなかの優れものです。そこで、今回はこの「著作権契約書作成支援システム」について、簡単にご紹介します。

知っていますか?著作権契約書作成支援システム

https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/c-template/index.php



1.どんなひな型があるのか?


このシステムを利用すると、一般の方々であっても、下記に示す様々な契約ひな型を簡易的に作成することができます。

・講演・パネルディスカッション・座談会
・演奏会、上演会などにおける実演
・原稿の執筆
・イラストの作成(ポスター・パンフレットなどの作成)
・ビデオ(会社のイメージ映像、社員研修用映像等)の作成
・写真の撮影
・音楽の作成
・舞踏、無言劇の作成
・既存の原稿(エッセイ、詩、小説など)やイラスト、写真、自作の楽曲・映画、舞踏(ダンス)・無言劇などの利用許諾
・主催者が利用するイラストなどの公募
・展覧会、発表会、コンクールなどの作品募集

しかも、このように多くのひな型の中から、どのひな型を使うべきか、選択を手助けするための機能も設けられています。このため、契約書の作成に慣れていない方でも、容易にひな型を選択することができます。また、作成されたひな型は、WORDで保存できるので編集が可能で、英語版も作成できるので、とても使いやすく構築されています。

2.どんな時に使えば良いか?


このシステムは、例えば下記のような場合に使うと良いでしょう。

(1)契約書の提案を求められたとき
契約の締結を予定する相手方から、たたき台として契約書案の提示を求められた場合です。

(2)事前準備として
いざ、契約というときのために、事前に自前の契約書案を用意しておくことで、必要が生じた時に素早く検討することができます。

(3)相手方から契約書案の提示があったとき
相手方から契約書案を提示され、契約書を部分的に変更したいとき、貴方側で契約書案を作って提示し、交渉の材料とすることができます。

3.どう使うのか?


ひな型を選択すると、例えば「イラストの作成(ポスター・パンフレットなどの作成)」であれば、下記の項目が現れ、適宜入力又は選択して「入力確認」ボタンを押すことでひな型が作成されます。

(1)依頼内容
(2)著作権の帰属
(3)利用目的
(4)氏名表示
(5)対価
(6)当事者

なお、このシステムでは、何も入力しなかったとしても、ひな型の作成をすることができるようになっています。しかしながら、適切な内容を入力又は選択しておかないと、目的に沿ったひな型となりませんので、注意が必要です。

例えば、「イラストの作成(ポスター・パンフレットなどの作成)」であれば、事前に少なくとも下記の事項について決めておかないと、適切な選択ができず、目的と異なるひな型が作成されてしまうことがあります。

(1)制作物について発生する著作権(複製権)を、依頼者に譲渡するのか、許諾(ライセンス)にするのか?
(2)譲渡する場合、翻案権(アレンジできる権利)も譲渡するか?
(3)改変・編集の可否について

4.作成されたひな型を、そのまま契約書にして大丈夫?


いいえ。「著作権契約書作成支援システム」のサイトには、下記の記載がなされています。

・このシステムは、あくまでも契約書の作成支援システムであり、システムが提供するのはあくまでも契約書案ですので、実際に利用する場合は内容をよく理解した上で利用者の責任で使ってください。

・実際の契約は、当事者間で様々な条件が設定されるのが通常ですので、実際に利用する場合は、このシステムで作成した契約書案を、自分のパソコンにコピーの上、手直しして使ってください。

このシステムは、あくまで一般的に共通しやすい条項や文言を、簡易的にひな型として提供するものであり、作成されたひな型を基に手直し・アレンジすることが実質的に前提となっています。もちろん、ひな型のまま契約をすることも可能なのですが、実際の契約は、個別の事情により異なるものであって、ひな型には記載されない他の条件や合意事項が存在することが通常です。したがって、このシステムの最も有効な使い方としては、条件に沿って入力・選択したひな型をもって、弁理士など専門家に相談をすることと言えます。ひな型があることで、相談を受けた専門家にとっても検討がしやすく、時間や費用の削減に繋がることになります。

5.使い方についてもっと知りたい!


日本弁理士会著作権委員会では、ひな型のうち「イラストの作成(ポスター・パンフレットなどの作成)」について、契約書の作成をしたことがない・慣れていないクリエイターやデザイナーの方々に向けて、アレンジすべき条項や追加すべき条項も含めてわかりやすく解説するセミナー資料を作成しており、ご要望があればセミナーを開催することができます。もし、このようなセミナーの開催に興味のあるクリエイター・デザイナー・団体の方がおられましたら、日本弁理士会 事務局 業務国際課(電話:03-3519-2703、 E-mail: gyoumukokusai@jpaa.or.jp)までお問い合わせください。

令和5年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 高橋 雅和

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

※ 著作権に関するご相談はお近くの弁理士まで(相談費用は事前にご確認ください)。
また、日本弁理士会各地域会の無料相談窓口でも相談を受け付けます。以下のHPからお申込みください。

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