その他の著作権

オーファンワークスって何??

弁理士の著作権情報室

はじめに


突然ですが、「オーファンワークス」という言葉を聞いたことはありませんか?あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、実は私たちの身近な著作物とも関係する問題です。著作権者が誰だか分からなかったり、誰かは分かっていてもどこにいるのかわからず連絡が取れないなど、権利の所在が不明な著作物が「オーファンワークス」と呼ばれています。

オーファンワークスって何??

著作物がオーファンワークス化してしまう原因は?


特許、実用新案、意匠、商標といった産業財産権は、出願人を特定して手続を行い、登録された時点で権利が発生するため、権利者や権利の存続期間を容易に確認することができます。一方著作権は、これとは異なり、出願や登録といった特別な手続をしなくても著作物を創作した時点で発生します。また多くの場合、保護期間の満了が「著作者の死」を起算とするため、よほど著名な人が創作した著作物でない限り、権利者や保護期間を特定することが難しいという側面があります。
また、著作物を公表したり、譲渡や相続等で著作権が移転した場合に文化庁に登録することも可能ですが、この登録制度が広く一般に利用されているとは言い難いのが現状です。
このような事情から、著作権者が亡くなったり会社が倒産した場合などに権利の帰属が不明になり、古い著作物がオーファンワークス化してしまうケースが多くみられます。
さらに近年は誰でも容易にSNSや動画投稿サイトを通じて著作物を公表できるようになりましたが、これらが拡散される過程で著作権者が特定できなくなるケースも増えています。
また、著作権の保護期間が50年から70年に延長されたことにより、さらにオーファンワークスが増加することも懸念されています。

オーファンワークスの問題点


他人が著作権を有する著作物を利用したい場合、原則として著作権者から利用許諾を得る必要があります。しかしオーファンワークス化してしまった著作物は著作権者に連絡を取ることが難しく、円滑に利用することができないという問題があります。近年では、貴重な文化財や出版物などをデジタル化して保存するデジタルアーカイブの取り組みが積極的に行われていますが、デジタル化のための許諾(複製・公衆送信)が受けられず、貴重な著作物が日の目を見ることなく保管されたままになっているケースも数多く存在しています。
また1億総クリエーター時代と呼ばれる昨今、SNSや動画投稿サイトにおいて他人の著作物を適法に利用しながら自己の創作活動に生かしたいというニーズも増えています。しかし、権利の所在が不明な著作物の利用は権利侵害のリスクを完全には否定できないため、利用を断念せざるを得ないという声も聞かれます。
著作権法は、著作者等の権利を適切に保護するとともに、著作物が公正に利用されることで文化の発展に寄与することを目的としています。オーファンワークスについても法目的に沿った形で円滑な利用ができるようにすることが期待されています。

オーファンワークスを利用するために


では、このようなオーファンワークスを利用したい場合はどうすればいいのでしょうか。そのための仕組みとして、「権利者不明等の場合の裁定制度」が設けられています。これは、権利者の許諾を得る代わりに文化庁長官の裁定を受け、利用希望者が通常の使用料に相当する補償金を支払うことで著作物等を適法に利用できる制度です。この制度については「利用したい著作物があるのですが著作権者が不明。どうすればいい?」や「著作物利用に関する裁定制度について(1)(いわゆる67条裁定)」で詳しく紹介されています。
「相当な努力」を払っても著作権者が不明であることを示す必要があるため手間とコストがかかる傾向はありますが、この制度を利用することで本来であれば利用できなかった著作物を適法に利用できる場合があります。

次に「裁定」つながりでご紹介したいのは、「未管理著作物裁定制度」です。この制度は、著作物をこのように利用してほしい、利用してほしくないといった権利者の意思が確認できない場合に、補償金を支払うことで著作物の適法な利用を可能とする制度で2026年4月から開始される予定です。
もちろんオーファンワークスについても要件を満たせばこの裁定制度を利用できる余地はありますが、権利者に連絡しても返信がなく著作物の利用に関する権利者の意思が確認できない場合など、従来の裁定制度では対象外となっていた著作物が対象となり得る点が大きな特徴です。
1億総クリエーター時代と呼ばれる現代では、インターネットやSNS、動画投稿サイトなどを通じてたくさんの著作物が公表されています。それらの著作物を自身のSNSなどで利用したいと希望する方も多いのではないでしょうか。面白いコンテンツを発見したので著作物の利用許諾を得ようと著作権者にメールやDMを送ってみたものの、何も返信がない…という経験をした方もいるかもしれません。そのような場合には、この新しい裁定制度の利用を検討してもよいかもしれません。
なおこの裁定は、著作物の利用ルールや利用に関する問い合わせ先の記載がない著作物が対象です。「無断転載禁止」「非営利なら許諾不要で自由に利用OK」など、利用ルールが明記されているものや、「利用希望の方は~へ」などと利用についての問合せ先が明記されているものは対象外となります。また、著作権管理団体が管理している著作物についても対象外です。著作物を利用できる期間が最大3年と決められてはいるものの、短期間の利用を希望する場合は「権利者不明の場合の裁定制度」に比べ手続も簡素で利用しやすいかもしれません。

二つの裁定制度について詳しくは、文化庁の「裁定の手引き」をご参照ください。

最後に


著作権の保護期間の延長やSNSの普及などにより、今後はより一層オーファンワークスが増えることが予想されます。著作物の利用については、本稿でご紹介した裁定制度などの環境整備が進みつつあり、今後は文化的資産の活用がより促進されることが期待されています。一方で、著作権表示をしたり著作権登録制度を利用するなど、自らの創作物について権利者が誰であるかを明確にしておくことも重要です。権利者と利用者の双方が適切な意識を持ち、権利が適切に保護されつつ著作物が円滑に利用されることで、文化の発展につながることが望まれます。

令和7年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 瀬川 左英

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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