製品名、商品名などのネーミングに著作権は認められるの?
著作物とは
法律上、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて,文芸,学術,美術 又は音楽の範囲に属するもの」と規定されています。つまり、著作者が自分の思いや感情などを自分なりに創意工夫して表現したもののことを言います。例えば、文章、図、絵画、歌詞・楽曲、写真、映画、コンピュータ・プログラムなどが代表的な著作物になります。
ネーミングの著作物性
では、ご質問のネーミングは著作権として保護されるのでしょうか。あなたご自身で思いついたネーミングなので、オリジナルの創作物であり、著作権として保護されるようにも思われます。しかし、残念ながら、ネーミング(いわゆる名称)は基本的には著作物に該当しないと考えられており、著作権は発生しません。
上述のとおり、著作権法上、著作物に該当するためには、①「思想又は感情」を、②「創作的に」、③「表現したもの」であって、④「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」の要件を満たすことが必要となります。この点に関し、ネーミングは一般的に短い語の組み合わせから構成されるため、表現の幅が必然的に制約されてしまい、誰が表現しても同じようなものになることから、創作性が欠如しており、著作物には該当しないと考えられています。
ちなみに、最近では、ネーミングと共に企業や商品など、宣伝や告知に用いられる謳い文句や煽り文句となる文章である「キャッチフレーズ(キャッチコピー)」も流行っていますが、大半が短い文章から構成されており、これもネーミングと同様に、基本的には創作性が認められず、著作物ではないと考えられています。
ロゴの著作物性
では、あなたがネーミングだけでなく「ロゴ」のデザインもご自身で考えていた場合はどうなるのでしょうか。
ロゴは単なる文字ではなく、デザインが施された文字であるため、一見すると、創作物であるとして著作権で保護されてよいようにも思えます。しかし、デザイン化されているとは言っても、ロゴも文字の一種であることには変わりありません。文字本来の目的は情報を伝達することであり、実用性を有します。仮に、文字に著作権としての保護を認めてしまうと、文字それ自体に著作権が及ぶと誤解されてしまい、第三者がその文字を自由に使用することができなくなり、情報を伝えるのに支障が生じる危険性があります。
よって、基本的にはロゴも著作物ではないと考えられています。なお、ロゴの著作物性については、大手ビールメーカーの著名な「Asahi」のロゴにつき、裁判所が著作物性を否定しています(「Asahi」ロゴマーク事件:東京高判平成8年1月25日平成6年(ネ)1470号)。
最後に、「ネーミング」や「ロゴ」は著作権としては保護されなくても、特許庁に商標出願をして権利化すれば、「商標権」として保護を得ることは可能です。
令和元年度 日本弁理士会著作権委員会委員
弁理士 田中 陽介
※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。
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