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著作権侵害に気をつけましょう! ~著作権侵害による刑事上の罰則意外と重いです~

弁理士の著作権情報室

著作権侵害に気をつけましょう! ~著作権侵害による刑事上の罰則意外と重いです~

まず初めに、著作権法の罰則規定等で関係する用語等に関して説明いたします。

民事事件と刑事事件


著作権侵害(著作者人格権・著作権・出版権・実演家人格権・著作隣接権侵害をいう。以下同じ。)をしますと、民事事件とともに刑事事件にも問われるおそれがあります。

民事事件とは、私人間の争いに関する事件です。著作権がらみの民事事件では、著作権侵害に対して、差止請求・損害賠償請求・不当利得返還請求・名誉回復等措置請求を対抗措置としてとることができます。

刑事事件とは、警察や検察といった捜査機関が介入する事件です。

今回は、民事事件については別の機会にご紹介させていただくこととして、著作権にかかる刑事事件について説明させていただきます。
なお、
・著作権侵害については、本サイト「弁理士の著作権情報室」の「どんなことをしたら著作権(著作財産権)侵害になるの?」をご参照ください。 

・著作者人格権については、「著作者人格権ってどんな権利?著作権とはどう違うの?」をご参照ください。

・著作隣接権については、「著作隣接権ってどんな権利?」をご参照ください。

刑事事件における「親告罪」と「非親告罪」について


刑事事件になる著作権侵害罪には、「親告罪」と「非親告罪」があります。

親告罪とは、告訴(侵害者の処罰を求める被害者の意思表示)がなければ起訴する(裁判にかける)ことができない犯罪のことをいいます。

一方,非親告罪とは、告訴がなくても捜査機関が捜査を行い、検察官が起訴をすることができる犯罪です。

著作権侵害に関する刑事事件では、侵害の対象は、著作者人格権・著作権・出版権・実演家人格権・著作隣接権という私権であって著作者等の事後追認・事後承諾により適法化される性格を有するものであり、また、被害者が不問に付することを希望しているときまで国家が乗り出す必要がないと考えられることから、基本的には権利者による告訴が必要な親告罪です。しかし、公益性の強さ、また、海賊版対策を考慮し、一部の刑事事件は、例外的に非親告罪となっています(下欄「著作権侵害に関する主な罰則について」参照)。

懲役刑と罰金刑


著作権侵害に対する罰則には、懲役刑(監獄に拘置して刑務作業に服させる刑)と罰金刑があり、この2つを併せて科される場合もあります(これを「併科」といいます。)。罰金刑もですが、懲役刑は嫌でよすね。人気漫画「キングダム」や「ワンピース」などの画像ファイルをサーバーに保存し誰でも見られるようにした海賊版サイト「漫画村」の運営者が、福岡地方裁判所で、公衆送信権等(著作権のひとつ、インターネット等での通信等)違反で、罰金刑と併せて懲役3年の実刑判決を言い渡されています。

両罰規定について


著作権侵害をした行為者本人だけを処罰したのでは処罰の目的を十分に達成することができないおそれがあり、また、法人に対する抑止力の実効性も確保したいという観点から、一定の著作権侵害に対しては、従業員等が法人等(企業等)の業務に関して違法行為をしたときには、従業員等を処罰するほか、その法人も処罰すること(両罰規定)を規定しています。この場合は、会社も、従業員が勝手にしたことといって罪を逃れるのは難しいのではと思います。

主な著作権侵害に関する罰則について


1.著作権・出版権・著作隣接権侵害
原則親告罪* 10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(併科あり) 
両罰規定の対象(法人に対しては、3億円以下の罰金)
*「対価を得る目的又は権利者の利益を害する目的であること」、「有償著作物等について原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡・公衆送信又はこれらを行うために複製すること」及び「権利者の利益を不当に害されること」の3つの要件を満たす場合は、海賊版対策の観点から、非親告罪になりました。

2.著作者人格権・実演家人格権侵害
親告罪 5年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科あり)両罰規定の対象(法人に対しては500万円以下の罰金)

3.直接的には著作権の侵害には該当しませんが、権利侵害物の頒布目的の輸入・頒布目 的の所持・頒布等の実質的には著作権の侵害と同等とみなされる行為
親告罪 5年以下 の懲役または500万円以下の罰金(併科あり)両罰規定の対象(法人に対しては3億円以下の罰金)

4.小説などの原作者(著作者)が亡くなった後に、その小説の内容や原作者名を勝手に変えたり、実演家が亡くなった後に実演家の芸名を変えたりするようなこと
非親告罪 500万円以下の罰金 両罰規定の対象(法人に対しては500万円以下の罰金)

5.私的使用の目的をもって*、録音録画有償著作物等の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らそのことを知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害した者、または、私的使用の目的をもって *、音楽・映像以外の著作物の著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製を、自らそのことを知りながら行って著作権を侵害する行為(軽微なもののダウンロード等の一定の場合を除く)を継続的に又は反復して行った者
親告罪 2年以下の懲役または200万円以下の罰金(併科あり)
*今まで著作権の行使が制限されていた私的使用のための複製であっても、このような行 為は違法化されました。

6.著作者名を偽って著作物を頒布すること
非親告罪 1年以下の懲役または100万円以下の罰金(併科あり) 両罰規定の対象(法人に対しては100万円以下の罰金)

7.引用するとき等の出所の明示違反(その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度に明示していない場合等)
非親告罪 50万円以下の罰金 両罰規定の対象(法人に対しては50万円以下の罰金)

罰則意外と重いです!気を付けましょう!

参考:文化庁 令和4年度著作権テキスト「14.著作権が「侵害」された場合の対抗措置」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/93726501.html

令和4年度 日本弁理士会著作権委員会副委員長

弁理士 上田 精一

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

※ 著作権に関するご相談はお近くの弁理士まで(相談費用は事前にご確認ください)。
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