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著作物の譲渡が著作権侵害になるのはどんな場合?

弁理士の著作権情報室

「譲渡」とは、販売することや、他者にあげる(与える)こと等です。より正確に言うならば、有償・無償を問わず、権利、財産、法律上の地位等を、他者に移転することです。著作物を譲渡することは、著作権侵害になる場合があります。この行為のうちどの様な場合が著作権侵害になるのかを説明していきます。

著作物の譲渡が著作権侵害になるのはどんな場合?

著作権侵害となる行為として規定されているか?


著作権侵害となる行為は、法律で規定されております。例えば、「複製」はこの様な行為として規定されています。各行為についての権利を支分権といいます。支分権やどの様な行為をすれば、著作権侵害になるかについては、「どんなことをしたら著作権(著作財産権)侵害になるの?」をご覧ください。

規定されていない行為は、著作権侵害にはなりません。では、「譲渡」については、著作権侵害となる行為として規定されているのでしょうか?
答えは、YESです。映画の著作物に関しては、譲渡と貸与を含む「頒布」という行為が著作権侵害となる行為として定められています。頒布権といわれる支分権になります。そして、映画以外の著作物に関しては、「譲渡」が著作権侵害となる行為として定められています。譲渡権といわれる支分権になります。
従って、映画の著作物に関しては、頒布権の内容に合致する場合に著作権侵害となり、映画以外の著作物に関しては、譲渡権の内容に合致する場合に著作権侵害となります。譲渡に関する権利は、映画の著作物についてのみ頒布権として認められていたところ、平成11年の著作権法の改正によって、譲渡権が認められました。

頒布権侵害となる条件や譲渡権侵害となる条件を満たした譲渡が、著作権侵害となります。頒布権、譲渡権の内容はどの様なものでしょうか。

譲渡権とは


映画以外の著作物をその原作品又は複製物を譲渡により公衆に提供する権利と著作権法で規定されています。

(1)「著作物」とは、著作物性のある創作の原作品と複製品の両方が含まれますが、原作品及び複製物の両方が対象とされています。

(2)譲渡によって「公衆に提供する」場合のみが譲渡権侵害となります。「公衆」とは、不特定の者、及び特定かつ多数の者です。従って、絵画の原作品や複製品を、インターネットオークション等で入札した人に譲渡する場合には、不特定の者に譲渡するため、譲渡権侵害となります。一方、友人数人や家族等にのみ著作物を譲渡する場合は、特定かつ少数の者に譲渡するため、譲渡権侵害になりません。

(3)国内又は国外において一度適法に譲渡された著作物について、その後の譲渡(転売等)については、譲渡権が及びません。これは消尽(しょうじん)と言われます。消尽が認められるため、古本屋というビジネスが成り立ちます。

もっとも、商業用レコードについては、消尽の例外があります。専ら国外で頒布するために発行されたもので、国内頒布用の商標用レコードと同一のものを、その事情を知って、国内で頒布するために輸入等することは、この国内で頒布されることにより、国内頒布用の商業用レコードの発行により著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限り、著作権侵害とみなされます。ただし、所定期間(国内において最初に発行された日から起算して七年を超えない範囲内において政令で定める期間)を経過した場合には、著作権侵害とみなされません。

頒布権とは


映画の著作物をその複製物により頒布する権利、及び、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利です。なお、頒布とは、公衆に譲渡・貸与することだけでなく、公衆に提示することを目的として譲渡・貸与することを含みます。

(1)譲渡権については、原作品及び複製物の両方が対象とされているのに対して、頒布権では、複製物のみが対象とされています。頒布権は、もともと劇場用映画フィルムの配給を想定しての規定であるため、原作品を含まないのではないかと考えます。「映画の著作物」は、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含む」と著作権法で規定されております。従って、「映画の著作物」には、いわゆる映画館で視聴するようなものだけでなく、ビデオソフトや、ゲームソフト等も含まれます。

映画の著作物についての詳細は、「『映画の著作物』って何?著作者は著作権者じゃないの?」をご覧ください。

(2)上述したように、「頒布」には、公衆に提示することを目的として譲渡・貸与することを含みます。従って、譲渡権とは異なり、公衆(不特定の者、及び特定かつ多数の者)に対して譲渡等するだけでなく、特定少数の者に対する譲渡も頒布権侵害になる場合があります。すなわち、公衆に提示することを目的として譲渡等する場合には頒布権侵害になります。上映を目的として劇場用映画フィルム等を映画館の担当者に譲渡する行為についても、侵害行為とするためであると考えます。

(3)消尽については、譲渡権とは異なり、著作権法に規定されていません。もっとも、判例(最判H14.4.25「中古ゲームソフト事件」)において、公衆に提示することを目的としない家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物の譲渡については、消尽が認められています。この消尽が認められるため、中古ゲームソフト販売というビジネスが成り立ちます。

権利制限


著作権法では、一定の例外的な場合に、著作権を制限して、著作権者に許諾を得ることなく利用できること(権利制限)を定めています。上述した頒布権・譲渡権侵害となる行為であっても、権利制限に該当すれば著作権侵害になりません。
例えば、以下のような行為が権利制限に該当する場合があります。※下記例以外にも権利制限に該当する行為はあります。

・時事の事件の報道のために、他者の著作物を利用する場合、又は、事件を構成したり、事件の過程において著作物が見られ又は聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲であれば、その著作物を利用できます。絵画の盗難事件についての記事とともに、この絵画を掲載した新聞を公に譲渡する等がこれに該当します。
・写真の背景に著作物が写り込んでしまった場合でも、写り込んだ写真を公に譲渡することが出来る場合があります。
写り込みについては、「自分の写真等に他人の著作物が写り込んでしまう(いわゆる写り込み)場合、その著作物の著作権者の許可が必要?」をご覧ください。
・論文などを執筆する際等に、書籍や雑誌などの他者が作成した著作物の一部を自己の著作物に取り込んだ場合(引用の場合)、他者の著作物を取り込んだ自己の著作物を公に譲渡することが出来る場合があります。
著作物の引用については、「著作権のルール 引用について」をご覧ください。

まとめ


上述したように、著作物の譲渡が著作権侵害になる場合とは、映画の著作物については頒布権侵害、映画以外の著作物については譲渡権侵害の条件に合致し、更に、権利制限に該当しない場合に限られます。著作物を譲渡する場合には、この様な観点からご自分の行為が著作権侵害になっていないかご確認下さい。

令和4年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 竹口 美穂

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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