「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第37回

計画策定のプロセス

落藤 伸夫 2017年10月2日
 
前回、金融機関に事業性評価融資への検討を依頼する事業計画書についてご説明しました。今回は、そのような事業計画書を作成するためのプロセスについて、考えたいと思います。


債務者格付けでは借入できなかった企業

実質5期連続赤字計上企業が融資を受けるのは、並大抵のことではありません。それを金融機関の怠慢のように言うのも、不適切だと思われます。金融機関は、預金者から預かったお金を原資に企業に融資をしています。預金者の立場で考えると、金融機関が「少し冒険をして、実質5期連続赤字計上企業に融資したのだが、返済してくれなかった。だから預金者への金利を下げるしかない」というと、預金者としては納得いかないでしょう。

以前の「債務者格付け」の枠組みは、この考え方に基づいて融資判断するようにと、金融庁が事実上、金融機関に強制するものでした。このため、実質5期連続赤字計上企業が融資を受けるのは、事実上不可能だったのです。


事業性評価によるチャンスと関門

しかし今は「事業性評価融資」の時代。金融機関が企業の事業性を評価すれば、融資することも可能になったのです。但し現在は、金融機関に「事業性評価融資」を強力に推進する準備ができていません。金融機関が新しい考え方で融資判断するためには、それを行うための基準や、審査を行うためのフォーマット、書類を作成したり判断するためのマニュアル等を準備する必要がありますが、今はそれができていないのです。

しかし、だからといって悲観する必要はありません。企業の方から「事業性評価融資を依頼する計画書」を作成し、打診することができるのです。


事業性評価融資を依頼する計画書のポイント

どのようなプロセスで「事業性評価融資を依頼する計画書」を作成すれば良いのか?章立ての構成や、表現方法が気になるところだと思いますが、ポイントはそちらではありません。

中小企業が「現状を打破する方法を思いつき、それを行えば回復は確実である。実行するプランも作成し、協力者への声がけなど準備できるところは準備した。あとは、資金調達の上、実践するだけだ。その資金を融資して協力してもらいたい」と言えるような体制を整えることです。机上の空論に終わってしまう計画、例えばフォーマットに言葉を埋め込んで簡単に出来上がった計画書は、この場合は毒にこそなれ、メリットはありません。

このような事情から、意欲のある中小企業経営者からのお申し出であっても、起死回生策を考えておられない時には、ご支援をお断りする場合もあります。良いサービスに絶対的な自信を持っておられた経営者の場合も、そうでした(お客様の保護のため、業種等は伏せています)。経営上の無駄を省く努力は熱心に行って来られましたが、販売力の強化が手付かずでした。そちらに注力しましょうと申し上げた時、「私はサービスに自信を持っているので、積極的な宣伝やマーケティングは行いたくない。それは自分の主義に反する」と仰ったので、資金調達のご支援は断念しました。

経営者にとっても「儲かる企業になっていく」というのは究極の理想でしょう。それを目指した計画書を作るのです。一方で、それが独りよがりであっては金融機関も支援できません。「こういう取組みをすれば成功の確率は高いだろう。儲かる企業に変わっていけるだろう」と理解し、納得してもらえる計画書とする必要があります。そのためには、いくつかのステップを踏む必要がありそうです。


第1ステップ

実質5期連続赤字計上企業に私からご支援ができたのは、社長に「今までのノウハウを生かした新製品を実現したら、新たな市場・顧客を開拓できるので、我が社はきっと立ち直ることができる。そのために必要なことを実行する覚悟が、自分にはある」ことをはっきりと仰り、態度で示されたからです。起死回生の方策を着想し、実行する覚悟を決めることが、「事業性評価融資を依頼する計画書」を作成する出発点、第1ステップです。


第2ステップ

例えば起死回生の方策として「新製品開発」を打ち出したとしても、それだけで事業性を認められる訳ではありません。どんな新製品を実現するのか、機能や性能、仕様等が具体案がないまま「お客さまに受け入れられる新製品を開発する」と宣言するだけでは、金融機関として納得しにくいでしょう。新製品についての具体的な姿をもとに類似品と比較して優位性を明らかにした上で、それを欲しがる市場の規模、売上予想額などを提示してもらう必要があります。予定する起死回生策をできるだけ具体的に描いた上で、それがどのような成果につながるかを示すことが、第2のステップとなります。


第3ステップ

実質5期連続赤字計上企業の多くにとって、新製品開発などの起死回生策とは、今まで慣れていない、もしくは経験のない仕事に取り組むことを意味しています。そういう策を思い付いただけでも大きな進歩ですが、肝心なのはそれを実行すること、そして成果を出すことです。それが簡単に行えるとは思えません。周到な準備が必要です。

その準備が万全であることを事業計画書で、もう少し詳しくいえば「何を行えばよいかを具体的に示すアクションプラン」として表現します。「具体的に」とは、一年後に若し期待した成果が出なかったとした場合に、「計画通りに行ったにもかかわらず成果が出なかったのか」もしくは「計画通りに行動しなかったので成果が出なかったのか」をはっきり認識できる程度に明確なアクションプランという意味です。


第4ステップ

具体的なアクションプランを作成したら、それを行ったらどんな成果が見込めるのか、数値計画を作成します。数値計画の目的は2つあります。第1は、起死回生策を行えば十分な成果が上がること、つまり今まで赤字に苦しめられていたけれども、この策を実行することで収益が出せるようになることを数字で示すためです。第2は、その計画を実施するにあたって計画期間中にキャッシュ不足に陥らないことを説明するためにです(逆にいえば、キャッシュ不足にならないよう資金調達する訳です)。


第5ステップ

第3ステップで、一年後に若し期待した成果が出なかったとした場合に、「計画通りに行ったにもかかわらず成果が出なかったのか」もしくは「計画通りに行動しなかったので成果が出なかったのか」をはっきり認識できるアクションプランを作成するとご説明しました。このような計画を立てることにより「計画通りに実行しない」という怠け心を排除するということです。

一方で「計画通りに実行しても成果が出ない」という事態も避けなければなりません。予定通りの成果を阻むリスクを想定して、それへの対処をプランの中に盛り込んでいきます。第2案を持つことや、いざという時に頼りになる専門家の人脈がある、保険などの対処策を打っておく、そして、効果が出るまでに時間がかかるならそれに耐える資金を蓄えておくなどの方法が考えられます。それらの手を、きちんと打っておくことが大切なのです。


支援の受け方


以上、事業性評価融資を依頼する計画策定プロセスを考えてみました。これは私がご支援したケースのプロセスなので、必ずしも同じプロセスをたどる必要はないかと思います。但し、十分な時間をとって、慎重に、ある程度の詳細さをもって策定しなければならないことに変わりはないでしょう。「成功例をベースにしたフォーマットを埋めていけば数時間でできる」そういうものではないと思われます。

この計画を策定する時に、中小企業診断士などから支援を受けてもよいものか?以前なら、金融機関は第3者の支援を敬遠していた気配がありましたが、今では、適正に関わり支援をしてくれる専門家の存在を歓迎する場合もあると思われます。金融庁が平成28年9月に提示した「金融仲介機能のベンチマーク」にも、「外部専門家の活用」が取り上げられています。

但し、事業性評価融資を依頼する計画策定プロセスに第3者支援を求めるには、注意も必要です。それは「専門家の計画書にしない。社長自身の、当該中小企業自身の計画にする」ということです。経営者とのヒアリングに小一時間(企業概要を聞くだけ)かけたら「出来上がり」という計画を策定する支援者は、適切とはいえません。万が一、それで融資が得られても、それで事業が成功する訳ではないからです。逆に借入を増やして、不幸な結果になりかねません。

本来なら、定期的に訪問して企業のことを熟知している中小企業診断士などに支援してもらうのが最善だと思われます。そうでない場合でも、経営者の思いや戦略を時間をかけて(3時間かそれ以上)ヒアリングし、次には専門家としての提案も含めた計画を下書きしてもらった上で時間をかけて(5時間かそれ以上。何回かに分けて行うのも良いでしょう)議論しながら計画書にまとめていくことが望ましいでしょう。

こうやって、会社の現状をしっかりと踏まえながら経営者の思いをぶつけ、専門家としてのアドバイスも織り込むことで「会社に最適の、社長の腑に落ちた」計画書が出来上がるのです。

 
 
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プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。

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