「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第53回

金融機関に、中小企業に歩み寄ってもらう

落藤 伸夫 2018年2月10日
 

 金融機関からの資金調達をご支援する場合、2つの方向性があるようです。一つは「金融機関は敵なので、戦って融資を勝ち得る」というアプローチ、もう一つは「金融機関は味方になり得る存在なので、意思疎通や自己努力などで融資が受けられるようにする」というアプローチです。事業性評価融資がクローズアップされている今、後者のアプローチの方が中小企業にメリットがあると考えています。


 金融機関は「巨船で方向転換しにくい」や「合理的な思考が習慣付いているので、もっともな主張が多い」ため、多くの場合は中小企業に、金融機関に歩み寄るようご支援することが多いです。しかし金融機関は「合法的・合理的な判断」の結果として、時として悪意なく、中小企業にとって重大な影響が及ぶような対応をしてしまう時があります。


 この場合には、中小企業を守るために声をあげ、金融機関に歩み寄ってもらわなければなりません。筆者が以前に遭遇した実際のケース(但し、プライバシー保護のため脚色してあります)から検討しましょう。



今期赤字企業への金融機関の対応

 これまで収支トントンだったが前期は赤字に転落した企業をご支援した時のことです。取引金融機関は2つのグループに別れました。「以前ほどではないが、支援の方法を模索」してくれる金融機関と、「黒字転換しなければ融資は難しい」とする金融機関です。後者の金融機関に社長は憤慨していましたが「相手の立場では仕方ありません。今期は黒字転換を目指しましょう」とお話ししました。



ある金融機関の提案と別の金融機関の対応

 前者の金融機関に資金調達をお願いする中「今、可能なのは保証付既往実績の空き枠利用だが、それでは当社の希望額には達しない。『今期は相談には乗れない』と言っていた金融機関の保証付枠と合算できるなら希望額を融資できる」との申し出がありました。それにプラスして返済期間を10年に延長できる保証制度を活用して資金繰り緩和を目指そうとの提案もあったので、お願いしました。


 このため「今期は相談には乗れない」と言っていた金融機関に、保証付融資を繰上げ返済したい旨をお願いに行きました。今までの支援にとても感謝していること、前期に赤字決算だったので今期の貸増しは難しいとの方針は理解していること、一方で、今期対応してくれる金融機関から「他行扱いの保証付融資との一本化なら対応できる」との申し出があり、呑まざるを得なかった旨を説明しました。


 担当者の第一声は「それは難しい。当行扱いの保証付融資は、当行で10年返済へ切り替えて欲しい」でした。詳しく聞くと、空き枠の利用はできないそうです。それでは必要資金が確保できないので受けられない旨を伝えると、「上司と相談するので1週間待って欲しい」という答えでした。調達時期との関係で待たされるのは非常に辛いと伝えた上で、1週間待つことにしました。



1週間後の逆提案

 1週間に社長が金融機関を来訪した返事は「当行は、当行扱い保証付融資を10年返済に切替える形で支援を継続したい。但し、空き枠利用の増額は認められない」でした。その提案には応じられないことは既に伝えてあると言っても、「それは聞いていない」との返事でした。


 私が改めて電話すると「それは社長の誤解だ」とのこと。「当行が御社への支援を申し出たのに社長が断った。他行借換えのため繰上げ返済を認めて欲しいという意思が強いので、それは改めて検討するので時間が欲しいと伝えた」というものでした。では、承認はもらえるのか、いつになるのかと聞くと「改めて意思決定するので是非は分からない。手続きには時間がかかる」との答えでした。



中小企業を苦しめる合法的・合理的な対応

 借換えは調達先となる金融機関からの提案なので、不可能だと当社が資金調達できなくなると先週の面談でもお話しした、できるだけ早く承諾して欲しい旨を伝えると「当行に事前相談なく進められた話なので承諾する義務はない。意思決定に時間がかかるのも仕方ない」との返事でした。


 この金融機関から予め「貸増しは不可能だ」と申し渡されたので相談のしようがなかったこと、前向きな金融機関からの提案を呑むしかないので、恩のある金融機関に誠意を尽くしたく社長が訪問して事情説明した上でのお願いであることを申しても、とりつくしまがありません。


 この状況に「当方としては中小企業いじめと感じる」と伝えると、「それは見解の相違だ。当行は、当行としてできる提案を提示した」との回答でした。提案を拒絶した相手に便宜を図る筋合いはないとの趣旨のようです。その答えを聞いた時「この担当者、頭が良いな。自分に非がないことをロジカルに説明したな」と感じました。彼らの立場では、一連の対応は合法的・合理的と言えるからです。



「我が身を守る」ために声をあげる

 だからと言ってそれを受け入れたのでは中小企業の命運が潰えかねません。このため私は「判りました。一連の経緯が『中小企業いじめ』なのか『金融機関として合法的・合理的な判断の範囲なので甘んじるしかないのか、金融庁に相談に行きます』と伝えました。すると、できるだけ迅速に承諾の方針で検討するとの返答があったのです。


 中小企業と金融機関が対立構図になり「両方に理がある」場合もあります。多くの場合、スピード感や今後の長い付き合いを考えると中小企業から金融機関に歩み寄る方が得策でしょう。しかし引き下がっていたら中小企業が倒産しかねない時もあります。その時には「我が身を守る」ため声を上げなければなりません。社長お一人では難しければご相談ください。企業と金融機関と取り持ちつつ、いつも中小企業の味方としてご支援させて頂きます。




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プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。

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