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「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第17回

金融機関とのコミュニケーション

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
事業性評価の時代に資金調達しようと思うなら、中小企業は、自らの事業の魅力(事業性)を伝える必要があります。そして、それを行う方法として一番に挙げられるのが、事業計画書を提出することです。自社の事業の魅力や、現在は花開いていないとしても将来性があるので評価してもらいたいことを、これまでの経緯や今後の取り組みなどを含めて丁寧に説明することができるからです。


コミュニケーションも大切

しかし金融機関は、事業性評価に基づいた融資を行おうとする場合には、事業計画書に書き込まれた情報だけでは片手落ちだと考えることでしょう。企業とは、組織に人格を認める「法人」ではありますが、その特性はそれを構成する人々、特に企業を率いる経営者の人となりを反映するものだからです。書類選考だけで従業員を採用する企業があり得ないのと同じように、経営者とコミュニケーションすることなく融資、特に事業性評価に基づく融資を行おうとする金融機関は考えられません。

このため事業性評価の時代に資金調達したい中小企業には、金融機関と円滑にコミュニケーションできることが、勧められます。自分自身の考えや依頼を伝えると共に、相手が欲しいと思っている情報を適切に提供するのです。


加点法の審査に対応する

「そんな。金融機関とコミュニケーションするだなんて。」そう仰りたいお気持ちは、よく分かります。過去長い間、特に「債務者区分」の時代にあって、不用意な情報を流してしまったことで融資が受けられなくなったという話を、私も耳にしたことがあります(真偽のほどは分かりませんが、そういうお話を聞いたということです)。「減点法」の発想法に基づく「債務者格付け」という仕組みの中では、情報提供を抑えることが、迂闊に減点材料を提供してしまうことを避ける方法であったのかもしれません。

しかし事業性評価は、必ずしも減点法の仕組みではありません。その運用方法は個々の金融機関に任せられていますが、その多くは「企業に魅力があれば注目していく」という加点法の考え方も取り入れていることでしょう。とすれば、積極的なコミュニケーションが道を拓く可能性もある訳です。


質問に答える

「とはいえ、金融機関と、どのようにコミュニケーションすれば良いのか、わからない」と感じられる経営者の方も、多いことでしょう。「どんな質問が来るのか分からないから身構えてしまう。また、自社のことを話したとして、どんな風に評価しているか、不安になってしまう。」そうお感じになるかもしれません。そのためこれから数回に分けて、金融機関とのコミュニケーションについて考えていきたいと思います。

今回は初回なので、金融機関とコミュニケーションしようとする時に、相手方が投げかけてきそうな質問を挙げてみました(決算書や事業計画の詳細に関わる質問は省略しています)。

(1)企業概要

・ あなたの事業の特徴は何ですか?同業者と、どんな違いがあるのでしょうか?(市場における貴社のポジションは、どこですか?)
・ 創業のきっかけ、もしくは現在の事業を始めたきっかけは何ですか?なぜ、この場所で事業を行なっているのですか?
・ 事業を行う中で、一番大切にしていることは何ですか?
・ これまで、事業上の転機などはありましたか?

(2)業務プロセス

・ 主な取扱い品・サービスは何ですか?同業者と、どんな違いがあるのでしょうか?
・ 売上は伸びていますか?それはなぜだと思いますか?
・ 売れ筋の製品は何ですか?このところ、変化はありませんか?
・ お得意様は、どんな人ですか?(BtoCの場合。BtoBの場合なら、得意先のうち上位5社はどこですか?)。なぜ、その人たちが貴社のお得意様となるのでしょうか?
・ お得意様に、変化はありませんか?あるとするなら、その理由は何だと思われますか?
・ 新規顧客にアプローチしようとする場合、どんな人・企業がターゲットになりますか?
・ 何を仕入れているのですか?
・ 主な仕入先はどこですか?なぜ、そことの取引が大きのでしょうか?
・ 仕入先に、変化はありませんか?あるとすれば、どうして仕入先を変えたのですか?
・ サプライチェーンの中で、御社のポジションはどこになりますか?何を付加価値として提供しているのでしょうか?

(3)将来性

・ 貴社の商品やサービスが選ばれている理由は何だと思いますか?
・ 貴社の強みは何ですか?今後に強みとしたいのは何でしょうか?(克服したい弱みは何ですか?)
・ 営業での強みは何ですか?今後、どのように増強しようと思っていますか?
・ 生産能力での強みは何ですか?今後、どのように増強しようと思っていますか?
・ 事業承継対策は行なっていますか?具体的に教えてください。
・ どんなリスクが考えられますか?どのように備えていますか?

(4)経営者の考え方・資質

・ 貴社の経営理念は何ですか?
・ 貴社の事業を行うことで、何を達成したいとお考えですか?(貴社の存在理由)
・ 経営戦略を立てていますか?何を目指しているのでしょうか?
・ 貴社の経営課題は何だとお考えですか?
・ お客様と接する中で大切にしているのは何ですか?
・ 従業員と接する中で大切にしているのは何ですか?

いろいろありますね。「こんなにたくさんのことを質問されるのか?それは大変だな」と思われたかもしれません。これらの質問が、一時にされることはありませんのでご安心ください。金融機関は、その時に最も聞きたいと思っていることを選んで質問してきますから、それに率直に答えていれば十分です。次回から、これらの質問にどのように答えることができるか、考えてみましょう。

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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