新時代に入った中小企業金融支援。あなたは資金調達できますか?

第15回

「支援したい」と思わせる事業計画書を作成する(中編)

落藤 伸夫 2017年4月17日
 
中小企業の資金調達が新時代を迎えた今、資金調達には2つのアプローチがあります。一つは、以前からの「決算数字を魅力的に見せる方法」です(これは、もちろん決算数字を実態よりも良く見せる「粉飾」は含みません)。決算数字を導き出す仕方にはある程度の「解釈の幅」があり、その範囲内では不正な経理とはみなされません。が、その中には金融機関が疑念を挟みやすい方法などがあります。これを改めることにより、資金調達が随分、やりやすくなるという現象があったのです。


事業性評価という新たなアプローチ

これまでの「格付け」による審査が主流だった頃には、正攻法の資金調達策は、事実上、今述べた方法でした。しかし「金融と経営支援の一体的な推進」が目指され、金融庁が金融機関に対して「事業性評価」を行うよう強く勧める時代になると、今までにはなかった方法で資金調達が可能になりました。「不景気や市場の収縮と、それらへの対応が後手に回ったことなどから現在、苦境に陥っている。これを打開しようと、改善策を考えた。その実行に尽力して現状を打破する」と宣言し、「改善策を実施するための資金や、その努力を続けるための資金が必要なので融資してもらいたい」と依頼する方法です。

この宣言を行う方法として「事業計画書」があります。明確に書面に著され、意図だけでなく実行のための具体策まで記載された事業計画書は、金融機関や行政などの支援者にとって「中小企業が適切な打開策を考えついているか」、「その実行体制はどうか」などの事業性を評価するための最適なツールとなるからです。


事業計画書に盛り込むべき事柄

とすると事業計画書は、中小企業にとって、「自分たちが行なっている事業には可能性がある、ひいては魅力がある』ことや、「それを実現するための計画は作り上げた」こと、「中小企業に、それをやり遂げる能力や情熱がある」こと、そして「現状、足りないのは資金だ。資金を手にすることができれば、ここに書いてある計画を全て実行して、業績を上げることができる」とアピールする場となります。

一方で金融機関は、それらを確認することで、「この中小企業は、資金的支援をすれば成果をあげることができるだろう」と確信することができ、融資に踏み切ることができると考えられます。


金融機関が最も避けたいこと

支援者である金融機関が最も避けたいのは、自らの支援が徒労に終わることでしょう。金融機関にとって、中小企業に融資するための原資となっているのは「預金」という名の借金です。お金を借りてまで支援した相手が事業に失敗して返済してくれなくなる事態は、是非とも避けたいと考えています(この発想は、金融機関だけでなく、借金して他を支援しなければならない状況になれば事業会社でも同じだと思います)。

支援者は、どんなリスクを避けたいと思うでしょうか?突発的事故?それらも、もちろん、考えられます。ただ、何十年に一度の天変地異の可能性までもシビアに排除しようとすると、有力な担保や保証人に頼らざるを得なくなり、事業性評価の考え方からすると逆戻りです。


事業計画書から読み取れること

一方で、冷静に、ロジカルに考えれば当然、起き得る課題についての検討が抜け落ち、対処策が計画に盛り込まれなかったことによって失敗するということは、断じて避けたいと思うでしょう。

例えば「新製品で現状を打破したい。だから開発資金を調達したい」との申し出があったとしましょう。新製品開発には画期的な技術が必要で、それは他の企業と連携する必要がありそうです。にもかかわらず対象企業との連携交渉が全く進展しておらず、そのために連携しての開発プロセスが明らかにされていなければ、金融機関は「これでは新製品は実現できないだろうな」と感じるでしょう。

また、開発計画に問題がなかったとしても、新製品の需要見込みやターゲット顧客の明確化、潜在顧客へのアピール方法、広告・宣伝手段などについての計画が抜け落ちていれば、そのような計画書に魅力を感じない可能性があります。

一方で、行うべき課題については全て検討して対処策を盛り込んでいるのはもちろんのこと、必ず起きるとは断言できないが、さりとて特殊な事態というほどでもない、取引先の倒産や材料費の高騰などのリスクも計算に入れて、いざという時への対応策が考えられており、そのような場合でも事業を継続して成功の見込みが高いとわかると、その計画は魅力的だと考えることでしょう。

また支援者は、中小企業(経営者)が意欲を失ってしまう可能性も危惧しています。企業経営には苦労が付き物で、それにくじけてしまうようなら、どんなに有望な事業もうまくいくはずがありません。これからの取組みを諦めずに続けていく意思(粘り強さ)も確認したいと考えています。そういう粘り強さがあるかどうかは、適切な計画を立てられているかどうかで、判断できることがあります。

例えば新製品開発について開発プロセスの計画がずさんだった場合に、「計画は、いくら精緻なものを作成しても、その通り進展するとは限らない。だから、その作成に多大な時間と労力を割くのは無駄だ。我々は、熱意と情熱でもって新製品開発を成功させる」と説明されたとしても、開発計画を書面に書き現わすという比較的簡単な仕事も熱意を持って取り組めない企業が、実際の仕事をやり遂げることはできるだろうか、と疑問を持ってしまう可能性があります。

以上のように、金融機関は、事業計画書を読むことによって中小企業の今後の可能性(事業性)を読み取ろうとしています。事業性評価の時代にあって、将来性を見込んで支援をしてもらいたいと期待する中小企業は、そういう読み手を満足させられる事業計画書を作成することが勧められます。

 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。

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