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「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第48回

超特急で事業性評価融資を依頼する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
12月も半ばとなり、平成29年もあと2週間ほどで幕を閉じます。今年を「良い年」と言えるように、ラストスパートしたいものですね。今年は、統計上では景気が良いとされ、株価も上がりました。しかし中小企業の現場では、好況の実感はあまり強くないと感じられます。東京オリンピックに向けた需要も、期待されていたほど喚起された訳ではなさそうです。

ということで、この年末も資金調達に努力された経営者さん・会計担当者さんも多かったのではないかと思います。このコラムをいつもお読みになってこられた経営者さんなら、年末の資金調達は計画的に取り組んでこられたのではないかと思います。しかし「年末まであと2週間ほどしかない」という状況で、突然に資金調達しなければならなくなることも、あるかもしれません。

普段、信用保証付きで調達してきた企業にとっては、このタイミングは微妙です。信用保証付きだと、金融機関の審査に加えて、保証協会の審査も経なければならないからです。当然、時間がかかります。保証協会によっては、年末資金については予め定められた期限内に申込みするよう希望しているところもあるようです(もし、ご自分の地域の保証協会がその方針で、期限が過ぎているにもかかわらず保証付で資金調達せざるを得ない場合なら、是非とも諦めずにチャレンジしてください)。


諦めずにコミュニケーションする

状況が難しそうに感じられ、「諦めるしかないのだろうか?」と思っても、諦めないでください。打開策があるかもしれません。まずは金融機関とコミュニケーションをとってみましょう。信用保証付とプロパー対応、つまり「事業性評価融資」を同時に依頼するのです。

「いやいや、事業性評価融資を依頼するには、準備が必要なのだろう。その時間がない。」確かに、事業性評価融資を依頼するには、それなりに準備は必要です。これまで信用保証付きで資金調達してきた企業が事業性評価融資を依頼する場合に、ノープランという訳にはいきません。しっかりとした事業計画書を作ってから相談に行くのが望ましい形です。しかし、今がそんな状況ではなかったら、緊急策を試みましょう。大至急に!です。


事業計画のラフスケッチ

大至急とはいえ、ノープランで相談に行くのは得策ではありません。その前に、ラフスケッチが必要です。我が社の事業を立て直す方向性性です。「利益体質にする」や「売上を拡大する」では抽象的すぎるでしょう。「新規顧客拡大とコスト削減により黒字体質にする」のように、「この企業は、この方向性で事業立て直しに頑張っていくのだな」と理解できる内容にしましょう。新規顧客拡大やコスト削減のために行おうとすることも数点、挙げておきましょう。それをA4用紙に記載します(この用紙のことを以下では「メモ書き」ということにします)。年内資金を申し込みたい経営者の皆さん、この記事を読み終わったら1時間以内にメモ書きを作成しましょう。


金融機関に打診

メモ書きを作成したら、すぐに金融機関に電話して担当者に予約した上で訪れます。突発的な原因で緊急に資金調達が必要になった旨を説明しながら、年内の融資を依頼します。同時に、メモ書き提出して、「事業性評価融資を検討してもらえないだろうか」と打診します。

この時点で「はい、分かりました。事業性評価融資を検討します」と言ってはくれないでしょう。メモ書きはあまりにも情報量が少ないからです。その場合には「このメモ書きには方向性だけを記載しました。これ以上の詳細は、金融機関の指定に従ってまとめようと思っています。ご指示頂けませんか?」と依頼します。記載すべき項目をきちんと示したフォーマットがあればそれを受け取り、それは存在しないようだったら、記載すべき項目をしっかりと聞き取りましょう。例えば、以下のような項目が求められるのではないかと思います。

1. 企業の現況・課題点
2. 改善の方向性
3. 改善について分野別に展開したアクションプランと目標
4. 財務計画(過去2期分実績プラス将来3~5期分見込み)
5. 借入状況(金融機関別に過去1~3期分)


超特急で作る事業計画書の作成

帰宅したら、メモ書きをベースに金融機関の指示されたフォーマットに従って計画書(これを以下では「超特急で作る事業計画書」と言います)を作成しましょう。「いつもお金のことばかり考えている金融機関に認められる計画書を作るのは無理だ」と思う必要はありません。この計画書は、あなたの会社を良くするための計画書だからです。大切なことは「お金を借りるために見栄えの良いこと」を書くのではなく、「実行したら成果があがって、実際に会社が良くなるようこと」を書くことです。

メモ書きの例でいうと、「新規顧客拡大とコスト削減により黒字体質にする」という方向性が「2. 改善の方向性」のコア部分、新規顧客拡大やコスト削減のために自分が行おうとする数点の項目が「3. 分野別目標とアクションプラン」のコア部分になります。それに、肉付けをしていきます。

特に「3. 分野別目標とアクションプラン」について、「これをやれば新規顧客が拡大できるだろうな」もしくは「これをやれば新規顧客が拡大できるだろうな」と自分でも納得することを、しっかりと記載しましょう。

「時間もないし、書くことに慣れていないので、沢山の文字数でもって書くことは難しいよ。」確かにそうだと思います。それは、金融機関の担当者も知っていますから、あまり気にする必要はありません。それよりも、自分が納得できる内容を書きましょう。それがもし、金融機関にとって分かりにくい表現であったら、相手は「ここはどういう意味ですか?」と質問してくるでしょう。それに、自分の言葉で説明するのが大切なのです。


税理士・中小企業診断士と相談する

超特急で作る事業計画書が概ね出来上がったら、財務をお願いしている税理士に、内容をチェックしてもらいましょう。特に「4. 財務計画(過去2期分実績プラス将来3~5期分見込み)」や「5. 借入状況(金融機関別に過去1~3期分)」について、数字が合っているか、チェックしてもらった方が良いでしょう。アクションプランなどの計画部分は、中小企業診断士にチェックしてもらうことができるかもしれません。

「超特急で作る事業計画書は、全部自分で作成しなければならないのではないか?他人の助けは一切、受けてはいけないのではないか?」とお考えの社長さんもいることでしょう。社長のあなたが内容も知らなければ、実行するつもりもない事業計画書を税理士や中小企業診断士に作ってもらい、それを金融機関に手渡すことで事業性評価融資を受けたいと思っているなら、それは厳に慎まなければなりません。自分のためにならないからです。それで融資を受けられたとしても、積み上がった融資があなたの会社の経営を、より苦しくしてしまうかもしれません。そして金融機関が、あなたが他人に丸投げして超特急で作る事業計画書を作成したことを知ったら、今後は一切、あなたのことを信頼してくれなくなってしまいます。

一方で、社長のあなたが内容を考えぬき、実行すると心に決めた事業計画書について、金融機関にとって分かりやすく、間違いのない超特急で作る事業計画書として仕上げるために税理士や中小企業診断士の手助けを受けることに、問題はありません。金融機関に「この事業計画書を作成するのに、誰かの力を借りましたか?」と聞かれても、正直に答えて結構です。その計画書の本当の書き手が誰なのかは、数十分もあなたにヒアリングしたら、すぐに分かることだからです。


「今になって、資金調達が必要になってしまった。こんな時期に事業性評価融資を依頼できるのだろうか?」と思っている経営者の皆さん。それを悩んでいるだけ、時間が無駄です。もしそのような状況なら、あなたの会社を救うため、いち早く、力を尽くして資金調達に邁進しましょう。「天は、自らを助ける者を助ける」からです。
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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