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日常生活の著作権

著作権法に照らして権利者の許諾なく他人の作品を二次利用できる主な場面のまとめ

弁理士の著作権情報室

「インターネットや書籍に載っている作品を利用するためには許諾を得ないといけない。」漠然とこのような理解をお持ちの方は少なくないと思います。しかし著作権法では、世の中にあるあらゆる作品について権利者の許諾を必要としているわけではありません。本記事では、権利者の許諾なく他人の作品を利用できる主な場面をまとめてみます。

著作権法に照らして権利者の許諾なく他人の作品を二次利用できる主な場面のまとめ

著作権法上の著作物でない場合


著作権が発生しているというには、それが著作物である必要があります。著作物かどうかは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」に該当するかどうかで判断します。著作物でなければ著作権が発生することはありませんので、安心して許諾なく二次利用をすることができます。

著作権が消滅している場合


二次利用したいものが著作物であったとしても、著作権が消滅していれば許諾なく二次利用をすることができます。著作権は著作物を創作した時に発生し、原則として著作者の死後70年間存続することになっています。もっとも、1967年以前に著作者が死亡(または公表)した著作物については、2018年の著作権法改正の適用を受けることが出来ませんので、法改正前の存続期間(50年)で計算がされ、現在では著作権は存続していないものとなります(2017年12月31日に消滅)。

外国の著作物については、いわゆる「戦時加算」や「翻訳権10年留保」のことにも注意が必要です。このことについては、「著作権の国際的な保護、外国との相違-日本の作品の外国での保護、保護期間、フェアユース、終了権、追及権について-」 の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

私的使用のための複製をするだけの場合


法律上、著作権の目的となっている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(私的使用)を目的とするときは、一部の例外を除き、その使用する者が複製することができることとなっています。

ここで、私的使用目的かどうかは比較的厳格に解釈されますので、業務使用目的の場合は含まれません。業務使用目的でした複製が問題になった事件として、「舞台装置事件」があります。詳しくは、「業務上使用するための著作物の無断複製について~舞台装置事件~」をご覧ください。

インターネット上の投稿を保存するためにスクリーンショット(キャプチャ。いわゆるスクショ)をすることがあるかと思います。しかし、このスクショを引用のつもりでツイートする行為も問題になり得ます。詳しくは、「他人の投稿をスクリーンショットした画像をツイートすることが公正な慣行に合致しないと判断したケース~スクショツイート事件~」及び「他人の投稿をスクリーンショットした画像をツイートすることが公正な慣行に合致するか~スクショツイート事件2~」をご覧ください。なお、スクショそれ自体についても令和2年の著作権法改正で制度が変わっています。「スクリーンショット(スクショ)って自由にしてよいの?」も併せてご覧ください。

ご自身で所有する書籍を裁断しPDF化することを巷では「自炊」と読んでいます。これをご自身で行う限りは、私的使用のための複製になり著作権法上では問題ない行為とされます。しかし、これを代行業者に依頼することは認められていません。詳しくは「書籍のPDF化(いわゆる「自炊」)を代行することは私的使用のための複製にあたるかついて~自炊代行事件~」をご覧ください。

情報解析のためだけに複製する場合


情報解析など、著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度で、いかなる方法であるかを問わず、利用することができることとされています(著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限ります。)。このため、機械学習を行うためにコンピュータに読み込ませる行為は、著作権侵害とならずに幅広く行うことが可能であるといえます。

引用して利用する場合


公表された著作物は、引用して利用することができることとされています。未公表の著作物は引用することができません。公表済みの著作物を引用して利用する場合、その引用が、公正な慣行に合致するものである必要があります。またこれに加え、報道、批評、研究など、引用の目的からして正当な範囲内で行なわれるものである必要もあります。詳しくは、上記「他人の投稿をスクリーンショットした画像をツイートすることが公正な慣行に合致しないと判断したケース〜スクショツイート事件〜」及び「他人の投稿をスクリーンショットした画像をツイートすることが公正な慣行に合致するか〜スクショツイート事件2〜」をご覧ください。

学校の授業で利用する場合


非営利の学校その他の教育機関において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程での利用を目的とすること、必要限度内であること、種類・用途・部数・態様が著作権者の利益を不当に害さないことといった条件を満たせば、著作権者の許諾なく公表済み著作物の複製、公衆送信(送信可能化を含む。)、公への伝達をすることが認められています。授業目的公衆送信については、一部の例外を除き、相当な補償金を著作権者に支払うことが必要です。受験や復習のために設置される塾・予備校や、会社従業員向けの研修施設といった営利活動主体については、著作権法が無許諾利用を認める非営利の学校その他の教育機関に該当しないことから、著作権者の許諾を得る必要があります。

試験問題として利用する場合


公表された著作物については、入学試験などの人の学識技能に関する試験・検定の目的に照らして必要と認められる限度で、その試験・検定の問題として複製し、又はインターネット送信を行うことが認められています。試験問題に利用されることが漏洩しては公平な試験が行えないという理由で無許諾での利用が認められているので、著作権者の利益を不当に害してはなりませんし、営利を目的として複製・公衆送信を行う場合には、通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わなければなりません。無償利用ができるとは限らないので注意が必要です。

以上、比較的よく質問を受けるものを挙げましたが、これらの他にも、許諾なく著作物を利用できる場面というのは著作権法に細かく規定がされています。また、著作権の観点では問題ないとしても、著作者人格権が問題になる場合もあります。具体的な事案については、著作権に明るい弁理士にご相談ください。

令和4年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 伊藤 大地

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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