プレスリレーションを考える

第9回

テレビの変容を振り返る

株式会社エムシーストラテジー   槇 徳子

 

テレビが圧倒的マスメディアだった頃

私がテレビ局に在籍していた平成の時代、テレビで一企業の名前やブランド、一つの店舗のフィーチャーがCM枠以外では基本的にタブーとされていました。ましてニュース枠では特に気を遣っていた記憶があります。

しかしながら今やどのテレビ局でも企業をはじめブランド、商品、店舗をワイド番組、情報番組内で沢山取り上げていることに皆さんもお気付きではないでしょうか。時代とともにテレビを取り巻く環境がどう変化してきたのか簡単に振り返ってみたいと思います。

懐かしいお話になりますが高度成長時代のテレビは圧倒的な娯楽装置であり高視聴率を誇っていました。NHK年鑑によれば紅白歌合戦視聴率は80年代半ばまで70%台、最高80%台をはじき出し、TBSの「8時だよ全員集合」や「ザ・ベストテン」、その他人気ドラマなどの視聴率は30%以上もマークしました。85年にスタートした報道番組、テレビ朝日の「ニュースステーション」でも20%台という数字でした。

 

令和に実現した「ネットとテレビの融合」

昨今、話題となっている若者のテレビ離れですが、NHK放送文化研究所の調べでは2020年、20代男性・10代女性の半数以上が「テレビ」を見ていないとのこと。ならばスマホなどの端末で御覧頂けるようにとコロナ禍の2022年4月、NHKと民法5系列揃ってのTVerリアルタイム配信が始まりました。またご存じのとおり「NETFLIX」はじめ文字通りグローバルなポータルでも日本のテレビ発コンテンツの人気に期待が集まっています。

ご記憶の方も多いと思いますが、彼の起業家が『ネットとテレビの融合』を提唱して20年ほど、ようやく時代が追い付きました。

 

「広告」への問題意識希薄化

さて、今では想像できない視聴率を持ち圧倒的影響力を誇ったテレビですが、番組で取り上げることが広告に当たらないように内外で目を光らせる時代がありました。よく話題に出す古いエピソードですが、紅白歌合戦に出場した山口百恵さんの歌の歌詞にある「真っ赤なポルシェ」を「真っ赤なクルマ」と言い換えられたのは78年のことでした。民法ではないNHKが気遣った背景には70年代という時代の構成要素もあると思いますが考察は置いておきます。

それから半世紀弱を経て民法は勿論、NHKの番組で一企業が取り上げられることも少なくありません。地方局でも地元企業や店舗を民法同様取り上げるようにもなってきました。

この変遷の背景には90年前後のバブル崩壊、その後30年近く続くデフレの中で2008年のリーマンショック、また2011年の3・11など、今に至るまで毎年のように続く大規模災害など高度成長期と異なる社会・経済背景に塗り替わってきていることがあると考えます。

視聴率低下と社会的経済的背景の変化により、テレビが一企業、店舗を取材し放送することについて「広告に当たる」と誹りを受ける時代は終わり、むしろ取り上げることで社会的使命を果たす「経済応援メディア」に変わったと捉えています。

 

プロフィール

株式会社エムシーストラテジー
代表取締役 槇 徳子

20年に渡りCBC、テレビ東京に勤務、あらゆる時間帯のニュース番組を担当。今も続くニュースモーニングサテライトの立ち上げ等、10年以上金融情報番組に携わりました。報道する側の経験を基に2008年エムシーストラテジーを起業、経営者や研究者を対象にテレビ出演はじめインタビューなどをサポート。クライアントのセミナーやオープニングパーティーなどイベントでも情報発信戦略に関わり、HP等自社メディアコンテンツからプレスリリース文言まで、あらゆる側面から情報発信アドバイザリーをしています。


2022年、2023年 日経新聞広告賞審査員

2022年~(株)ミンカブ・ジ・インフォノイド社外取締役


Webサイト:株式会社エムシーストラテジー

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