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データベースの著作物とは? ~タウンページデータベース事件~

弁理士の著作権情報室

平成8(ワ)9325 平成12年3月17日 東京地方裁判所

はじめに


著作権法は、著作権法によって保護される著作物を、(1)思想又は感情を (2)創作的に(3)表現したものであって、(4)文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものと定めており、著作物として著作権法の保護を受けるためには、上記(1)から(4)の要件を全て満たす必要があります。

例えば、「2019年の東京都各地の気温」といった単なるデータは、上記(1)から(4)の要件を欠くため、著作権法により保護される著作物ではありません。しかし、単なるデータであっても、コンピューターを用いてデータを検索できるようにデータ集めた場合、集められたデータは「データベースの著作物」として著作権法により保護されている可能性があります。

以下に、データベースの著作物性に関する裁判を紹介すると共に、データベースに関する著作権法上の規定を紹介します。

事件の概要


原告は、独自の職業分類によって日本全国の電話番号の情報を効率的に検索できるようにした「タウンページデータベース」を創作しました。被告は、原告が創作した「タウンページデータベース」の職業分類に基づいて、日本全国の電話番号情報を掲載した「業種別データ」を作成し、顧客の求めに応じて「業種別データ」から必要なデータを抽出して販売しました。

原告は、「タウンページデータベース」について、検索の利便性を考慮して、独自の職業分類によって電話番号を分類したものであるから、「データベースの著作物」として著作権法により保護されるものと主張し、被告の行為は原告の著作権を侵害する行為であるとして、その行為の差止等を求めて裁判を提起しました。一方被告は、原告の職業分類は世間に存在する職業を五〇音順に並べただけであり、また、個々の職業名が一般的な分類と若干異なるからといって、創作性が認められるものではないから、著作権法により保護される「データベースの著作物」ではないと主張して反論しました。

この裁判において裁判所は、「タウンページデータベース」の職業分類体系は、電話番号の情報について、検索の利便性の観点から個々の職業を分類して、全職業を網羅するように構成されたものであり、原告独自の工夫が施されたものであって、これに類するものが存するとは認められないから、「タウンページデータベース」は体系的な構成によって創作性を有するデータベースの著作物であると判断しました。その上で、被告の「業種別データ」は、「タウンページデータベース」から 職業分類及び電話番号情報を取り込んで作成されたものであり、「タウンページデータベース」に依拠して作成されたものであると認められるから、原告の「タウンページデータベース」に関する著作権を侵害するものであると判断しました。

データベースの著作物とは? ~タウンページデータベース事件~

著作権法の規定


著作権法は、データベースについて「論文、数値、図形その他の情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。」と規定しています。そして、データベースについて、「情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものは、著作物として保護する。」と規定しています。

ここで、「電子計算機」とは、コンピューターのことをいいます。すなわち、コンピューターを用いて検索できる情報の集まりについて、選ばれた情報に特徴があり(情報の選択)、その情報を簡易迅速に検索できるように、例えば、情報に検索キーワードやインデックスを付与し、また、カテゴリー分けや分類分け等によって整理整頓しつつ集めた情報の集まり(体型的な構成)は、データベースの著作物として著作権法により保護されるものです。

ビジネスにおける注意


データベースの著作物について、著作権者の許諾を得ることなくデータベース全体をコピー(複製)等する行為は、データベースに関する著作権を侵害する行為です。また、データベースの検索機能を維持した状態で、データベースに収録された一部のデータを抽出してコピーするような行為も、データベースに関する著作権を侵害する行為です。したがって、このような行為をする場合は、著作権者の承諾を得る必要があります。

データベースに収録されたデータには、このページの冒頭で例示しました「2019年の東京都各地の気温」のように、著作物として著作権法により保護されないデータがある一方、データも著作物として保護される場合もあるため注意が必要です。例えば、写真家の作品を縮小した写真と、撮影状況や撮影日時等の情報が収録されたデータベースがある場合において、収録された縮小された写真は写真家の著作物にあたります。データベースの著作物は、データベースそのものが著作物として保護されるだけでなく、場合により、収録された個々のデータに著作権があることに留意してください。

令和元年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 廣江 政典

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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