弁理士の著作権情報室

判例から学ぶ!著作権の注意点

リツイートに潜むリスク

著作権及び著作者人格権


著作者の権利として、著作権及び著作者人格があります。著作権が財産的権利であるのに対し、著作者人格権は、著作者の人格的利益を保護する見地から定められたものであり、著作者(創作者)の人格やプライド、名誉を保護するための権利です。皆さんも、自分の創作した作品が自分の名前を付されずに発表されたり、内容を勝手に改変されたりしたら、気分を害すると思います。著作者人格権は、このような行為から著作者を保護するための権利なのです。著作者人格権の詳細については、“著作者人格権ってどんな権利?著作権とはどう違うの?”もご覧ください。
“写真の編集、トリミングで注意すべき著作権の問題点”では、著作者人格権の一つである同一性保持権が争われた事件として、リツイート事件(知財高判平30年4月25日)が紹介されました。この事件では、同一性保持権の他に、同じく著作者人格権の一つである氏名表示権についても争いがあり、これについて最高裁の判断が示されました(令和2年7月21日第三小法廷判決・平成30年(受)第1412号)。
氏名表示権は、「その著作物の原作品に又は著作物の公衆への提供若しくは提示に際し」、著作者の氏名を表示するかどうかということが、著作者の権利であるというものです(著作権法第19条第1項前段)。

リツイートによる氏名表示権の侵害


リツイート事件では、著作者に無断で、著作物である画像(写真画像)の複製等を投稿したツイートが、リツイートされました。画像の端部には著作者の意図に従い著作者の氏名が表示されていましたが、リツイート記事では、その部分がトリミングで削除された画像が表示されました。このトリミングは、リツイート者の意図によらず自動的に行われたものですが、結果的に、リツイート者が氏名表示権を侵害すると最高裁が判断しました。

氏名表示権侵害と著作権侵害との区別


リツイートの元となったツイートは、著作者に無断で、著作物である画像の複製や公衆送信を行ったので、著作権を侵害します。一方で、リツイートは、そのような画像の複製や公衆送信は行っておらず、したがって、著作権は侵害しません。著作権を侵害しないリツイートが氏名表示権を侵害してしまうのか?という議論がありましたが、最高裁は、氏名表示権の侵害は、著作権に関する著作物利用には限定されないので、今回のリツイートは氏名表示権を侵害すると判断しました。

ワンタップでトリミング前の写真画像が表示されるが…


従来の表示を変えずに著作物を利用する場合は、氏名表示権を侵害しない、という例外規定も存在します(著作権法第19条第2項)。リツイートは、リツイート記事に表示されたトリミング画像をタップ(裁判では「クリック」と表現されています。)すれば、トリミング前の全体画像、つまり従来どおり氏名表示された画像を見ることができるように構成されています。このように構成されたリツイートは、従来の表示を変えずに著作物を利用するものであり、氏名表示権を侵害しないのではないか?という議論もありましたが、最高裁は、リツイート記事中のトリミング画像をタップすれば氏名表示された全体画像を見ることができるからといってリツイート者が従来の表示を変えずに著作物を利用したことにはならないと判断しました。

むすび


リツイート者の意思によらず画像中の氏名表示が自動トリミング機能により削除された場合でも、リツイート者が氏名表示権を侵害すると判断される可能性があります。少なくともリツイートの自動トリミングによって画像中の著作者の氏名表示部分が削られてしまわないように注意する必要があります。
それだけなく、トリミング自体が同一性保持権を侵害する可能性があることは、“写真の編集、トリミングで注意すべき著作権の問題点”で述べられているとおりです。
いずれにしても、自動トリミング機能を伴うサービスの利用には注意が必要です。

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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