イノベーションズアイ BtoBビジネスメディア

日常生活の著作権

音楽のストリーミング再生に関する著作権

弁理士の著作権情報室

最近の音楽利用形態


近年、CDなどから楽曲データのダウンロードを行わずに音楽を聴く「ストリーミング再生」を利用する人は増えています。他人の著作物を利用する場合、著作者の許諾が必要となります。ストリーミングサービスには、次々に生み出される新しい音楽も手軽に聴けますが、そのストリーミングサービス会社が、その1曲1曲について1人1人のアーティスト(著作権者)に対して利用許諾を受けて回っているのでしょうか?

また、著者は90年代サブカルチャーを引きずっているので、今流行の有名な曲よりも、世間的には知名度が低い曲を聴く傾向にあります。知名度が低い曲については、著作権者を探して利用許諾をしてもらうことは、より大変なのではないでしょうか?

音楽のストリーミング再生に関する著作権

音楽の著作物と「複製権」


他人の著作物を許可無く複製すると、複製権という著作権の侵害行為になります。購入したCD等から個人的に楽しむ場合の複製は複製権侵害にはならないですが、インターネット上の音楽の取り扱いについては注意が必要です。インターネットで配信されている音楽について、ダウンロードの場合は「複製」にあたるとされています。

ダウンロードが「複製」にあたっても、個人的に楽しむ場合等には、「私的使用のための複製」として、著作権(複製権)侵害にならないのですが、違法にアップロードされた楽曲をそうと知りながらダウンロードする行為は、個人的に楽しむ場合等であっても、著作権(複製権)侵害になります。

では、違法にアップロードされた楽曲をストリーミング再生することは、著作権(複製権)侵害にはならないのでしょうか?

楽曲のダウンロードとストリーミング再生の違い


ストリーミング再生の場合には「一時的蓄積」として「複製」にあたらないとしています。

厳密には、ストリーミング再生でもキャッシュデータとしてダウンロードしていたり、通信環境の無い環境でも音楽が楽しめるように一時的にダウンロードしていたりします。

この場合でも、機器の使用や円滑な通信に支障が生じるおそれもあることから、権利を及ぼすことが適当ではないため、「複製」にはあたらないとされ、法整備もされました。このため、現状、再生行為について複製権侵害は問題なさそうであり、違法にアップロードされた楽曲をストリーミング再生することは、著作権侵害(複製権侵害)にはならない可能性が高いです。

以上から、ストリーミングサービスを個人で楽しむ場合、複製権についての問題となりませんが、店舗で流すなど、公衆に聴かせることを目的とする場合には「公に伝達する権利」という著作権の侵害になってしまうので注意が必要です。なお、ストリーミングサービスの幾つかにおいて規約を読むと、商用空間での使用を禁止している場合が殆どの様です。

ストリーミングサービス会社の配信行為について


ストリーミングサービス会社が著作権者に無断で楽曲等を利用者に提供すると公衆送信権という著作権侵害になります。

しかし、1人1人のアーティスト(著作権者)に対して、1曲1曲利用許諾を受けて回るなんて作業をしていたらとても手間がかかると思います。

これについては、ストリーミングサービス会社のウェブサイトなどを参考にすると、著作権の管理団体に許諾を受けることで、管理されている楽曲について利用許諾を受け、音楽の配信を行っていると表記しています。

著作権の管理団体


音楽の著作権について管理する著作権管理団体としては、日本ではJASRACやNexToneが有名ですね。これら著作権管理団体は、音楽の著作権を管理して、音楽の使用について対価を徴収し、アーティストに分配しています。

つまり、ストリーミングサービス配信会社は、これら管理団体に許諾を受けることで、音楽の配信などを行うことができます。利用者から得た対価を適切にアーティストに分配される仕組みになっており、音楽の利用について、とても手間が省けていると思います。

さて、これら団体による著作権の管理ですが、「信託」による方法と、取次、代理などの「委任」による方法とがあります。先述の例では、JASRACは「信託」、NexToneは「委任」による方法を採用しています。

著作権の「信託」と「委任」


著作権の信託とは、著作権を著作権管理会社に移転し、著作権者のためにその著作権を管理したり処分したりする制度です。著作権を著作権管理団体に移転しますので、先述の例ではJASRACが著作権を有することになります。

一方、委任では著作権の移転はありません。先述のNexToneの場合では、著作権のうち「演奏権」「録音権」「出版権」「貸与権」などの管理が委任されています。

著作者などに残っている権利


信託の場合、音楽を作った著作者から、音楽の著作権が移転されているの!?というのは驚きですが、アーティストの活動ややレコード会社の営業には支障の無いようになっています。

アーティストが有したままの著作物に関する権利として、代表的なものは著作者人格権で、著作者から移転できない一身専属的と言われている権利です。他にも、実演家やレコード製作者等の著作物等を伝達する人(著作隣接権者)に与えられる著作隣接権は、JASRACに移転されず、著作隣接権者に残っています。

また、信託の目的が果たされると、著作権も著作者のもとに返ってきます。

まとめ


上述したように、音楽の著作物が一元管理されている団体のおかげで、著作物の使用許諾について利便性が保たれている側面もあります。音楽の著作物の管理により、ストリーミングサービスでは、知名度の低い楽曲や古い楽曲を含む多くの音楽を配信することが出来ており、聴きたいときに即座に手軽に聴けることが多く、とても良いサービスになっていると思います。今後、著作権の利用許諾が容易になる仕組みが出来ることでストリーミングサービスが発展し、音楽が広く普及し、より手軽に楽しめると良いですね。

弁理士 山本 雅之

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

※ 著作権に関するご相談はお近くの弁理士まで(相談費用は事前にご確認ください)。
また、日本弁理士会各地域会の無料相談窓口でも相談を受け付けます。以下のHPからお申込みください。

【日常生活の著作権】に関連する情報

イノベーションズアイに掲載しませんか?

  • ビジネスパーソンが集まるSEO効果の高いメディアへの掲載
  • 商品・サービスが掲載できるbizDBでビジネスマッチング
  • 低価格で利用できるプレスリリース
  • 経済ジャーナリストによるインタビュー取材
  • 専門知識、ビジネス経験・考え方などのコラムを執筆

詳しくはこちら