注目判例・法改正・書評

音楽教室事件で話題になったカラオケ法理ってなに?

弁理士の著作権情報室

最近著作権業界をもにぎわせた音楽教室事件(最高裁判所第一小法廷判決 令和3年(受)第1112号事件)は、カラオケ法理が採用されるかどうかが注目されました。音楽教室事件については、世間の関心が高かったこともあり、弁護士、弁理士等のウェブサイトはもちろん、メディアでもすでに取り上げられています。上記の最高裁判決が出る前に議論された「カラオケ法理」とはなにか、なぜそのような考え方が出てきたのかということに今回触れます。

「カラオケ法理」を説明しているウェブサイトや記事も多くお見受けしますので、今更感がありますが、いまいちど簡単に説明を試みてみます。このページは、著作権を全く知らないわけではなく、かといって専門家ではない方を対象としており、言葉を崩している部分もありますことをご留意下さい。

音楽教室事件で話題になったカラオケ法理ってなに?

法理ってなに?


「〇〇法理」(〇〇の部分は2文字に限定されません)と名付けられたものには、法人格否認の法理、事情変更の法理、解雇権濫用法理などがあります。例えば法人格否認の法理は、法人格を否認するための論理的な考え方というような意味合いでして、「〇〇法理」というものは、ごく平たく言えば「〇〇という考え方」と思って頂くと分かり易いと思います。〇〇には内容そのものを意味する言葉がくっついていることが多く、内容をイメージしやすくなっています。

では、カラオケ法理も、「カラオケ」という言葉を使っているからそれらに倣って、カラオケそのもの、つまり、カラオケボックスで歌いたい歌をカラオケ装置に入力して歌うという考え方を意味するのかというとそうではありません。ネーミングからすぐにその内容を理解できない難点があります。

カラオケ法理と呼ばれる考え方が導かれた事件


カラオケ法理は、クラブ・キャッツアイ事件(昭和59年(オ)第1204号)で最高裁判所が示した考え方です。

クラブ・キャッツアイ事件は、簡単に説明しますと、「クラブ・キャッツアイ」等のカラオケスナック店で、店員さんが飲み物や食べ物を提供する一方で、お客さんに歌を歌うことをお勧めして、店員さんがカラオケの機械を操作して、歌を歌ってもらって、ほかのお客さんと一緒に楽しんでもらっていたところ、音楽著作物を管理する団体、音楽著作権仲介団体(現在のJASRAC)が、このカラオケスナック側を相手に、著作権者の演奏権を侵害するとして、演奏の差し止めと損害賠償を求めた事件です。カラオケスナック側は、何度も音楽著作権仲介団体側から著作物の演奏について使用許諾手続きをとるように促されたようですが、結局、演奏権について許諾を得ませんでした。

カラオケ法理のポイントは、カラオケで歌を歌っているのはお客さんなのに、カラオケスナック側による演奏であるとされたこと。


カラオケ法理は上述の演奏権侵害かどうかが問題になった事件で立てられた基準です。

なぜ演奏権に侵害するか否かが問題になったか。著作権法22条と2条が参考になります。
「著作権法第二十二条 著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。」

今回、それぞれの法律用語については割愛させて頂くこととして、この条文は逆に言えば、著作権者(ここでは分かりやすく著作者と同一という前提とします)以外の人が、その許諾なく著作物を公に演奏することが許されないということを意味します。

また、「演奏」と聞くと、ピアノやギターなどの楽器を使って音楽を奏でることを主にイメージしますが、著作権法上は、これらだけではなく次の条文の、括弧内の「歌唱を含む」との規定から、歌を歌うことも含まれるということが分かります。
「著作権法第二条
十六 上演 演奏(歌唱を含む。以下同じ。)以外の方法により著作物を演ずることをいう。」


クラブ・キャッツアイ事件では、お客さんが、カラオケスナックで歌を歌っていました。

そうすると、お客さんが著作権法上の「演奏」(歌唱)を行っているようにみえますが、そうはならなかったようです。この理由は、クラブ・キャッツアイ事件判決には明記されていないのですが、明記されなかった理由として考えられるのは、「曲を演奏したり歌ったりして著作権侵害になる場合は?」に記載されている、演奏権にも適用されうる権利制限規定(つまり侵害にあたらない場合の条件)にあてはまったのか、あるいは、当事者が主張しなかったために侵害の成否の判断資料とされなかった(民事訴訟法の原則)ためと推測されます。

そして、カラオケスナック側の「演奏」(歌唱)でないのに、お客さんがカラオケスナックで歌った行為を一定の条件下でカラオケスナック側の演奏であるとする考え方が導き出されました。この考え方がカラオケ法理です。
一定の条件として、判決文の中の「管理」、「営業上の利益」を挙げる見解もありますが、そうでなく、本判決は事例判決であるとする見解もあります。前者の見解に立てばカラオケ法理は演奏権侵害の成否を決する一つの考え方と捉えることができる一方、後者の見解を徹底するとカラオケ法理は他の事件には採用されないこととなります。

このようなことから、クラブ・キャッツアイ事件のあと、カラオケ法理がいくつかの事件で採用されて議論を呼び起こしました。

令和4年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 川添 昭雄

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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