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教育・書籍の著作権

書籍を出版する際の印税はどれくらいなのか?

弁理士の著作権情報室

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印税とは、著作権者が著作権使用料として出版社などから受ける金銭のことをいいます 。
ただ、一言で印税といっても、印税がどのように決まっているのか著作権法に規定されているわけではありません。

この点、印税には相場があり(これを「印税率」といいます。)、書籍の場合は「本の定価の10%」が多いようです 。そして、印税の計算式としては、「本の定価×発行部数×印税率」が一般的に用いられております。したがって、出版した書籍の定価が1,000円で100万部のミリオンセラーになった場合には、1,000円×100万部×10%=1億円の印税が著作権者に支払われることになります。
ただ、印税率は出版社が決めているのが実情であり、無名の新人が書籍を出版する場合には、印税率が3%~4%ということもあるようです。

一方、印税率を高くする方法としては、電子書籍による自費出版が考えられます。この方法であれば、出版社を介することが無いため、印税率を高めに設定することが可能となります。例えば、AmazonのKindleを利用した電子出版の場合、Kindleの独占販売とすれば、印税率は70%になるようです 。したがって、定価1,000円で電子出版した書籍が100万部のミリオンセラーになった場合には、1,000円×100万部×70%=7億円の印税が著作権者に支払われることになります。ただ、電子出版の場合、出版社を介さないため、書籍の広告や宣伝も著作者自身で行なわなければならず、無名の新人の場合には、その本が売れる保証がありません。本が売れなければ当然、著作権者に印税は入ってきません。

なお、翻訳本の場合には、原作者と翻訳者で印税を分けることになっており、その割合は「原作者5:翻訳者5」が相場のようです 。また、ゴーストライターの場合には、著者とゴーストライターで印税を分けるようですが、その割合は当事者の契約によるものと考えられます。

次に、印税の支払い方法としては、主に①実売方式と②発行部数方式があります。この点、①実売方式は、実際に売れた冊数に応じて印税が支払われるので書籍が売れれば売れるほど、著作権者の印税も増えていきます。そのため、ほとんどの場合、作家は実売方式により出版社と契約を結ぶことが多いようです。一方、②発行部数方式は、発行した部数に応じて著作権者に印税が支払われるため、書籍の売り上げに左右されることはありません。

印税だけで悠々自適な生活は可能なのか?


そもそも、書籍を出版するためには、自費出版を除き出版社と契約することになります。その場合、出版社が「売れる本」と判断しなければ、出版されることはありません。
また、芥川賞や直木賞などを受賞した場合でも、最近では10万部発行されれば成功であるようですが 、それでも、定価1,000円の書籍で印税率が10%だとした場合、印税は1,000万円程度ということになります。そのため、1回受賞しただけでは、当然印税だけで生活をすることは不可能であり、夢の印税生活をするためには売れる本を書き続ける必要があります。このことから、印税だけで悠々自適な生活をすることは現実的に難しいかもしれません。

以上

令和2年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 隈元 健次

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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