弁理士の著作権情報室

著作権Q&A ~著作権の基本を解説します~

著作権侵害にならない「私的使用」の限界はどこか

著作権を持たない人が著作権者に無断で著作物を利用すると、著作権侵害になってしまいます。日常生活でみると、文章や動画、写真、絵画をコピーすることはよくあることですが、著作権法との関係で問題にはならないのでしょうか。

著作権侵害にならない「私的使用」の限界はどこか

私的な範囲でのコピーは問題ない


著作物を、個人的又は家庭内で使用するために、それを使用する者がコピー(複製)することは、著作権法で認められています。ここにいうコピーとは、書籍や雑誌などの紙媒体をコピー機で印刷することだけでなく、スキャナーでPDFに変換(電子化)することや写真撮影をすること、動画撮影をすることも含まれます。対象とする著作物により、コピーの方法が様々にあり得るということです。

無断コピーは著作権者の許諾が必要というのが原則ですが、こうした例外は、零細かつ狭い範囲での使用であれば、著作権者の不利益は大きくないということで認められたものです。レコードやビデオのいわゆる店頭ダビングは、それが無償で用意された機器を用いるものであっても認められません。もっとも、コンビニエンスストアなどに置かれているコピー機を使った文書・図画のコピーは、当分の間、問題ないものとされています。

また、単純なコピーのほか、私的使用のためであれば、著作物を翻訳、編曲、変形、翻案することも認められています。しかし、コピーしたものをSNSで配信したりブログに掲載したりすることは、「複製権」及び「公衆送信権」という違う権利との関係で問題になるうえ、当初は適法であった私的使用としてのコピーも、あとから違法と評価されてしまうことになりますので、スマートフォンなどでコピーが容易になった現代では、うっかりインターネット上に送信してしまわないよう、特に注意すべきといえます。

「私的な範囲」は意外と狭い


「私的な範囲」は、法律上、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲」であるとされます。ここで、「個人的」というのは、著作物を使用する人がひとりで、という意味であり、また「家庭内」というのは同一家庭内、という意味と理解されています。前述のとおり、著作権者の不利益が大きくならない範囲と考える必要がありますので、例えば、別居する親戚に配ったり、近所やサークルで配ったりするためのコピーは、「個人的」にも「家庭内」にも属しないと考えられます。

法律上、これらのほかに、「その他これに順ずる限られた範囲」として、多少幅を持たせた表現となっていますが、この範囲に属する人同士に、強い個人的結合関係が必要であるとされ、実際は個別具体的な判断が必要になってきます。とはいえ、自宅でコピーしたものを会社で配って使用するような場合や、会社の同じ部署内の数名に配るためにコピーをするというような場合には、結合関係が否定されると考えられますので、著作権者の許諾を得るべきといえます。

このほか、個人的な使用目的でするコピーに関しては、前述の書籍等を電子化する行為、いわゆる「自炊行為」が適法かどうかということが問題になりますが、電子化を自分でする限りにおいては問題ありません。しかし、これを自炊代行業者に依頼をすると、著作物をコピーする者と使用をする者が一致しないことから著作権者の許諾が必要となるため、注意が必要です。「自炊行為」をする場合には、自分でスキャンして行うようにしましょう。

家庭内目的でも認められない場合もある


自分で鑑賞するために借りてきたCDを録音することやテレビ番組を自宅で録画することは、私的使用として認められます。

しかし、販売され、又は有料で配信されている音楽や映像が違法に配信されている場合に、それが違法配信されたものであると知りながらダウンロードすることは禁止されています。2021年1月1日から、違法配信された漫画や書籍、新聞、論文、ソフトウェアなどを、それが違法コンテンツであると知りながらダウンロードすることも禁止されることになります(詳しくはスクリーンショット(スクショ)って自由にしてよいの?参照)。

また、個人的に自宅で鑑賞する目的であっても、映画館で映画を撮影すること(動画のコピー)は認められていません。有料の映画館上映の場合はもちろん、無料の試写会であっても認められません。これは、著作権法とは別の法律で規制されているので、注意が必要です。もっとも、全ての映画作品が対象というわけではなく、この規制は、日本国内で初めて有料で上映した日から8ヶ月を経過した映画については適用されません。

このほか、いわゆるコピープロテクション(技術的保護手段)が施された著作物について、コピープロテクションが施されていることを知りながらこれを回避してするコピーは、認められていません。

はじめは適法であったものが後から違法になる場合もある


このように、法律上、「私的使用」という言葉そのものの意味合いよりも狭い範囲でしか適法なコピーは認められていません。また上記で一例を示したように、私的使用として認められる範囲でなされたコピーであっても、その後に私的使用の目的の範囲外で、不特定の人、又は特定多数の人に譲渡したり、貸与したり、あるいは提示すると、事後的に私的使用ではなくなってしまうこともあるので、コピーした後の使用方法にも注意が必要です。

参考資料:文化庁「著作物が自由に使える場合」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html

参考資料:文化庁「映画の盗撮の防止に関する法律について」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/eiga_tosatsu.html

参考資料:JASRAC「私的録音・録画補償金制度」
https://www.jasrac.or.jp/info/private/index.html

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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