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海外の著作権

外国の著作権について

弁理士の著作権情報室

知的財産権の中でもよく耳にするのが著作権。ところで、著作権という考え方は外国にもあるのでしょうか?日本の著作権と同じように考えてもいいのでしょうか。知的財産権の専門家である弁理士が、外国の著作権についてわかりやすく解説します。

1. 外国の著作権


外国においても各国毎に著作権という考え方があり、あなたが日本国内において著作物を創作すれば、基本的には各国毎に著作権が認められます。

ところで、「著作権に国境はない」と言われますが、どういう意味なのでしょう?
著作物は、国境を越えて広く利用されるため、世界の国々は互いに条約を結び、著作物や実演・レコード・放送などを相互に保護し合っています。現在、日本が加盟している著作権に関する国際条約としては、以下があります。
著作権:「ベルヌ条約(加盟国177ヵ国)」および「万国著作権条約(加盟国100ヵ国)」、
著作隣接権:「実演家等保護条約(加盟国93ヵ国)」および「レコード保護条約(加盟国80ヵ国)」
※ 加盟国数は2019年5月時点
※ 現在、日本が承認している世界の国の数は196カ国であり、ベルヌ条約に関して言えば、その大半(90%)の国が加盟国です。

なお、日本はエチオピアやイランなどとは条約関係がないため、それらの国々の著作物を、わが国で保護する必要はありません。ただし、他の条約国又は日本で最初に発行されたという事情があれば、それらの国々の著作物でも保護義務が生じます。

上述のベルヌ条約に基づき、申請や審査などの手続きを一切必要とせず、著作物が創作された時点で著作権が自動的に付与される「無方式主義」を、多くの国々で採用しています。それらの国々では、著作権は「創作された時点」で自動的に発生します。この点は、各国の特許庁毎へ出願して権利化が必要である特許、意匠および商標と大きく異なります!

よって、外国で創作された著作物であったとしても、その国が上述の条約加盟国であれば、日本でも(特段の手続きなしで)自動的に著作権としての保護を受けることが可能です。一方、あなたが日本において創作した著作物についても、条約の加盟国であれば、何もしなくても自動的に外国で保護されます。

外国の著作権について

2. 外国での著作物の保護および外国著作物の利用


外国での著作物の保護および外国著作物を日本で利用する場合の注意点について、ここからはQ&A方式で解説します。

Q:外国の著作物を日本において利用しようと思うのですが、外国の著作権者の承諾は必要なのでしょうか。
A :一般的には、外国の著作物を利用するときも著作権者の承諾は必要と考えてください。
現在、日本では170ヶ国以上の国と相互の保護関係にあるので、ほとんどの外国作品がわが国で著作権として保護されていると考えられます。

Q:有名な外国写真家の作品を、自社の宣伝広告用にポスターに利用したいのですが、没後70年経過しているので、承諾なく利用しても著作権上の問題はないでしょうか。
A:少し複雑ですが、戦時加算の特例の適用のある写真作品の場合には、無断で利用できない可能性があります。
外国人の著作物をわが国で利用する場合には、条約に基づき、原則として日本の著作権法の保護期間以上は保護する必要はないため、著作者の死後70年を経過した著作物は、原則として自由に利用できます。但し、第二次世界大戦において日本と戦った連合国(16ヵ国)の国民が、大戦前又は大戦中に取得した著作権については、通常の保護期間に戦争期間(昭和16年12月8日又は著作権を取得した日から当該国とのサンフランシスコ平和条約の発効する日の前日までの実日数(例:米国、英国3,794日、オランダ3,844日)を加算することになっているため、戦時加算される可能性がある著作物があります。

Q:自分の作品(絵画)を、著作権として外国で保護してもらうためにはどうしたらよいでしょうか。
A:特段の手続きをとらなくとも、日本と著作権に関する条約を締結している国では、自動的に保護されます。
ベルヌ条約では、著作権の享有については、特別の方式を要しないという無方式主義を採用しています。よって、同条約加盟国では著作権は創作した時点で自然に発生し、同条約加盟国の著作権法で保護されます。なお、条約非加盟国との関係においては、各国毎の国内法によって保護されることになります。

Q:外国人が日本で創作した著作物も保護されるのでしょうか?
A:日本は、ベルヌ条約および万国著作権条約の両条約に加入しているため、それら条約の加盟国民の著作物や、これらの条約国で最初に発行された著作物を保護する義務があります。また、これらの条約により保護義務を負わない著作物であっても、日本で最初に発行された外国人の著作物についても保護されます。

令和元年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 田中 陽介

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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