弁理士の著作権情報室

著作権Q&A ~著作権の基本を解説します~

お店で音楽(BGM)をかけるときは、著作権に気をつけよう【飲食店他サービス業店舗関係者向け】

新型コロナウイルスの感染拡大にともない、外出自粛は求められていた時期もありましたが、ようやく外食やショッピングをする機会がすこしずつ増えてきていることかと思います。そんなお店で流れているBGMですが、どんな音楽でも自由にかけて大丈夫なのでしょうか。
今回は、そんなお店で音楽をかける場合の著作権の問題について、著作権法の基本をおさえつつ、弁理士がわかりやすく説明いたします。

音楽の著作権は誰のもので、勝手に利用するとどんな権利の侵害になるの?


音楽は、著作物であり、その著作者である作詞家さんや作曲家さんが著作者となります。そして、著作者は「著作権」「著作者人格権」を有します。
また、著作権には、複製権や公衆送信権など様々な権利がありますが、音楽の著作物をお店で利用するときに主に問題となるのが「演奏権」です。
「自分で購入したCDを自分の店で流して何が悪い」と思うかもしれませんが、著作権法上、音楽の著作物をその著作者の許諾を得ずに、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として、演奏してしまうと演奏権の侵害となってしまいます。

ここで、お店で音源を流すことが「演奏」になるの?と思うかもしれませんが、録音されたCDやストリーミングの音源などを再生することは、著作物の「演奏」に該当します。また、「うちのお店は狭くて、少人数しか入れないから、公衆に聞かせていうわけではないし大丈夫!」と考えられる方もいらっしゃるかもしれませんが、同時に来店できる人数は限られていても、お客様は常に入れ替わりで出入りするものなので、結果として公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として演奏をしていることになってしまいます。
なお、今回の記事では特に触れませんが、著作者の持つ著作者人格権については、著作者人格権ってどんな権利?著作権とはどう違うの?(https://www.innovations-i.com/copyright-info/?id=18)をご参照ください。

お店で音楽(BGM)をかけるときは、著作権に気をつけよう【飲食店他サービス業店舗関係者向け】

どうやって、許諾を得ればいいのか?


店内のBGMでかけようとする曲のすべての著作者(作詞家、作曲家)それぞれに直接許諾をもらうことは、現実的には不可能かと思いますが、音楽の著作物の場合は、特定の「著作権管理事業者」がその権利を管理していることがほとんどなので、そこに許諾をとればよいのです。
皆さんも名前を聞いたことがあると思いますが、「JASRAC(ジャスラック)」(一般社団法人 日本音楽著作権協会)がその管理事業者となっています。

JASRACが著作権を管理する仕組みについて


本来作詞家、作曲家が持っている著作権(演奏権を含む)について、なぜ著作者ではないJASRACが許諾をすることができるのか、不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。
その仕組みですが、まず、世に生まれた素敵な楽曲達は、概ね「音楽出版社(音楽作品の開発やプロモーションをしてくれる会社)」を通じて広がってきます。
そのため、多くの作詞家、作曲家は、その素晴らしい楽曲が世に広がるように、音楽出版社と契約し、著作権のほとんどを音楽出版社に譲渡します。
そして、この音楽出版社は、その譲り受けた権利のほとんどをJASRACに信託(譲渡)します。
これによって、実質的な著作権者はJASRACとなり、JASRACが演奏権を許諾することができるわけです。

ちなみにJASRAC以外にも、音楽の著作物についての著作権管理事業者としては、「株式会社NEXTONE(ネクストーン)」があります。
しかしながら、NEXTONEは演奏権の管理を行っていないので、店内BGMに関する許諾は、ほぼJASRACに求めることとなります。

JASRACから許諾を受けるには具体的どのようにすればよい?使用料はどう決まる?


JASRACは、使用料さえ支払えば、誰にでも使用を許諾します。
では、どのように許諾をとるのか、まさか、営業中にBGMで流す楽曲のセットリストをJASRACに提出して、「このリストにある曲について許諾をください」JASRAC側も「これだけつかったら〇円ですね」なんていちいちしていたら、本業に差し支えが出ると思います。
店舗等での音楽の著作物の利用については、上記のような1曲1回単位の許諾契約も可能ですが、店舗の敷地面積(宿泊施設の場合は定員人数)に応じて、年単位、月単位といった形で許諾契約が可能です。
手続としては、JASRACのBGMオンラインライセンス窓口での手続又は申込書を郵送かJASRACの支部窓口へ提出することで契約をすることができます。
なお、この場合の契約名義人は、お店等の経営者の方となります。
また、使用料についても、敷地面積(宿泊施設の場合は定員人数)に応じて設定されています(詳しくは、参考資料:JASRACウェブサイト 各種施設でのBGM を参照ください)。
ちなみに、JASRACと契約を締結すると、契約店を示すステッカーが配布されます。入口などに貼って、好きな音楽を思う存分お店で流すことが出来ます。

市販されたCDを店舗BGMに使用する際、レコード会社の許諾が必要か?


作詞家や作曲家が本来有していた著作権(演奏権)については、JASRACに許諾を受けることで利用可能になることはわかりました。
一方で、市販のCDを店舗BGMに使用する際に、そのCDを制作・販売したレコード会社の許諾は必要か?という点も気になりますよね。
録音された音楽の著作物については、その費用を負担したレコード製作者(※必ずしもレコード会社とは限りませんが、多くの場合はそうでしょう)にも著作権法上、著作隣接権というものが発生します。
しかしながら、レコード製作者の著作隣接権の中に、「演奏権」は含まれていませんので、市販のCDを店舗BGMに使用しても、レコード会社等レコード製作者の許諾を受ける必要はありません。


JASRACと契約せずに店舗BGMをかける方法は?


JASRACと契約をしないで、かつ、演奏権も侵害せずにお店で音楽(BGM)をかける方法はあるのか?
そのように考えられる方もいらっしゃると思いますが、以下のような方法があります。

まず、「有線放送」(有線音楽放送)があります。
この場合、有線放送等の音楽提供事業者がお店に代わってJASRACに著作権使用料を支払っているので、お店側でJASRACの許諾を受ける必要はありません。
なお、どのような事業者が音源を提供しているかは、参考資料:JASRACウェブサイト 音源提供事業者一覧をご参照ください。

次に「ラジオ」や「テレビ」の生放送があります。これらをお店で流すのもJASRACとの契約は不要です。
ただし、これは、いままで説明してきました「演奏権」の問題ではなく、放送される著作物に与えられる著作権「伝達権」が、市販のテレビ等「家庭用受信装置」を用いる場合は、お店のような「営利目的」のシチュエーションでも、非営利の場合(営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合)と同様に、公に伝達しても侵害にならないと著作権法に定められているからです。
したがって、店内にラジオ受信機を置いて、ラジオ放送局の番組をBGMとして流していても、著作権侵害にはなりません。また、「Radiko」などのアプリを使用してラジオの生放送を店内に流していても著作権侵害となりません。一方で、独自の放送を流しているインターネットラジオ局の番組については、侵害となる場合もありますので注意が必要です。

次に生まれる素敵な楽曲のためにも


現在のコロナ禍で店舗経営的にも、これらの音楽使用料を節約したくなるところかと思います。
しかしながら、JASRACへ支払われる使用料は、管理手数料を控除し、音楽出版社へ分配されます。
そして、音楽出版社を通じて、作詞家、作曲家などの著作者へ印税という形で還元されます。
次の素敵な楽曲を生み出す原資にもなっていきますので、音楽を愛する店舗経営者の皆さんが、適切な手続きを経て、音楽を自由に利用できる状況が続くことを切に願います。


参考資料:JASRACウェブサイト 各種施設でのBGM
https://www.JASRAC.or.jp/info/BGM/index.html

参考資料:JASRACウェブサイト 音源提供事業者一覧
https://www.JASRAC.or.jp/news/pdf/BGM_list.pdf

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

※ 著作権に関するご相談はお近くの弁理士まで(相談費用は事前にご確認ください)。
また、日本弁理士会各地域会の無料相談窓口でも相談を受け付けます。以下のHPからお申込みください。

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