ビジネスの著作権

どのようなパッケージデザインでも著作権で保護されるの? -意匠権・商標権などによる保護の検討-

弁理士の著作権情報室

商品は、小売店等で箱や袋にパッケージされて陳列されているのを見かけます。このパッケージの表面には、購買意欲を喚起するために様々なデザインが施されています。商品のキャラクターを創作してキャラクターのイラストを描いたものや、シンプルに色彩で表現したものなどが見られます。前者はキャラクターのイラストを創作して描いているので、著作物性があり、著作権の保護対象になり得ると思われます。しかし、後者はシンプルなデザインであり、ありふれた表現に近づくほど創作性がなく、著作権で保護される可能性は低くなると思われます。
では、色彩などで表現したシンプルなパッケージデザインを保護したい場合には、著作権以外にどのような保護方法があるのでしょうか?以下に説明します。

意匠権による保護


意匠権では、製品の美的外観を保護することができます。
例えば、下記の意匠登録第1758507号では、包装用袋において、緑色の濃淡で表した菱形を複数配列したパッケージデザインが登録されています。
このような色彩で表現したパッケージデザインは、意匠権としては新規性・創作非容易性などの登録要件を満たせば保護されます。
但し、意匠は色彩のみでは登録されませんので、全体の形状を特定しておく必要があります。

意匠権では美的外観を保護するといっても純粋美術のような芸術性までは要求されません。
例えば、下記の意匠登録第1757404号では、包装用箱の表面に商品名や、その商品の説明などを描いた、主に文字からなるパッケージデザインとしてあります。
文字は基本的に情報伝達のために用いるものであり、万人が使用できるように独占は認められ難く、著作権では保護されにくいものですが、意匠権では、箱全体のデザインとして登録されることもあります。

また、例えば、下記の意匠登録第1758506号では、包装用箱に描かれた商品の使用説明のコマ割り部分が意匠登録されています。
商品の使用説明図は誰が描いても同じような図になるので著作権では保護されにくいといえますが、意匠権では上記と同様に登録要件を満たせば保護されます。

商標権による保護


商標権では、商標、つまり業として商品等に使用する文字、図形などを保護することができます。
商標権はデザインを保護する権利ではないのですが、他人の商品と識別するための図形又は模様などを商標登録することができ、結果としてパッケージデザインが商標権で保護されます。
例えば、下記の商標登録第5485173号では、横長直方体箱型の立体商標として登録されており、各面をサインカーブ状の境界で区切った黄色及び茶色の配色とし、その境界を薄くぼかして描いたデザインとしてあります。
このデザインを他者が無断で使用した場合は商標権侵害として使用の中止を求めることができます。
但し、商標権は、原則として指定商品又は指定役務(サービス)についての使用に権利が及ぶので、非類似の商品又は役務に使用された場合には権利が及びません。

また、デザインがシンプルになれば識別力がないと判断され、商標としての登録は難しくなりますが、商標の使用により有名になれば色彩のみでも登録されることがあります。
例えば、下記の商標登録第6534071号では、セピア色、白色及びオレンジ色の3色からなる、最上段及び最下段の縞模様を太くした横縞模様のデザインが描かれています。このデザインの袋の即席めんといえば、一度は見たことがあり、ある商品が思い浮かぶと思われます。このように色彩のみによるデザインでも、他人の商品と識別できる働きがあり、商標としての機能を有することもあるので商標登録されることがあり、その結果、パッケージデザインが保護されることになります。

不正競争防止法による保護


不正競争防止法では、他人の周知又は著名な商品等表示を無断で使用することを規制しています。よって、シンプルなパッケージデザインでも有名になれば不正競争防止法による保護が可能であると考えられます。
意匠権や商標権のように登録手続きを必要としない利点がありますが、実際に争うことになった場合には、周知であることなどの証拠集めに手間取るなどの立証の困難性があります。

まとめ


パッケージデザインは著作権での保護が厳しそうでも、意匠権、商標権又は不正競争防止法による保護が可能な場合があります。しかし、各権利にメリット・デメリットがあり、例えば、意匠権は世間に公開してしまうと原則として取得することができないなどのデメリットがあります。そのため、パッケージデザインの保護を図っておきたい場合には、開発段階で弁理士に相談することをお薦めいたします。

どのようなパッケージデザインでも著作権で保護されるの? -意匠権・商標権などによる保護の検討-

令和5年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 栗原 弘

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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