越野建設・越野充博社長
「自宅で楽器演奏を満喫できる賃貸」をコンセプトに音楽愛好家向けブランド「音楽マンション」を展開する越野建設。稼働中の物件は相場より1割程度高い賃料にもかかわらずほぼ満室を維持している。楽器演奏で不可欠な遮音性・防音性といった品質・性能(ハード)と、入居者へのサービス(ソフト)の両面で支持されているからだ。近隣物件との差別化戦略が奏功し、都内とその周辺で棟数を伸ばしてきた。評判を聞きつけた地方の建設会社からの問い合わせも多く、フランチャイズ展開も視野に入れる。越野充博社長にブランディング化に成功した秘訣などを聞いた。
音楽マンションの供給数は
「2012年3月に第1号を北区王子に竣工以来、7年弱で施工・建設中を含めて33棟・約600戸を展開するまでになった。マンションオーナー、入居者の双方から高く評価されているからだ。音楽大学生向けマンション開発を検討していた地主から相談を受けたのがきっかけ。当初は近くに音大がないので入居者がいるのか半信半疑だったが、好きなときに趣味の楽器を演奏したい社会人が多いのが分かった。実際に入居者の80%が社会人で、商品化してブランディング化できると確信した」
受け入れられた理由は
「楽器演奏に対応した物件が少ないからで、悩ましい音の問題を解決する遮音性・防音性を備えたマンションを音楽愛好家は求めている。オーナーにとっては、一番気がかりな入居率を高められるうえ、相場より高い賃料がとれる。1号物件の(完成から現在までの期間中)入居率は99%で、賃料の値下げが一度もないことからも物件探しに苦労している実情が分かる」
入居待ちの状況が続く
「物件が空くのを待つ入居希望者は多く、メールで新規募集情報を流す会員は稼働戸数と同じ600人に達した。音楽マンションの棟数を増やすと同時に、このメール会員を増やし1000人態勢にしたい。そのためには音楽マンションの知名度を高める必要がある。一方で、長く住んでもらうために入居者へのサービス提供にも注力。『音楽マンション倶楽部』を設けて音楽イベントに招待したり音楽活動を支援したりしている」
地方への展開は
「地方からの問い合わせもあり、興味を持つ建設会社にノウハウを提供する仕組みを作りたいと考えている。緩やかな形でのフランチャイズ化などビジネスベースで検討していく」
ハード面で寄与した技術は
「躯体に独自の高密度コンクリート『結晶化コンクリート』を採用している。水分量の最小限化に加え、(コンクリートを枠に流し込む)打設時に再振動という工程を導入し密実で空隙なコンクリートを実現。堅くて丈夫で、音が伝わりにくいものができた。このようにハードとソフトの両面で商品性を理解してもらいグレードアップしたマンションとして売り込んでいきたい」
地域貢献にも積極的だ
「地元密着の建設会社なので地域コミュニティーの一員として活動している。その一つが11月15日の『生コンクリート記念日』にちなんで本社駐車場で開催している子供向け体験型学習イベント『コンクリートの日 体験まつり!』。この日を楽しみに待つ親子も多く500~600人が参加する。CSR活動の一環で、企業のブランディングにもつながる。好感を持ってもらえると仕事にもプラスになる」
【プロフィル】
越野充博 こしの・みつひろ
早大商卒。1982年越野建設入社。87年常務、91年代表取締役就任。60歳。東京都出身。
【会社概要】
越野建設
▽本社=東京都北区王子4-22-9
▽設立=1964年8月(1912年3月創業)
▽資本金=8663万円
▽従業員数=47人
▽事業内容=総合建設工事業や不動産における賃貸、管理業務など
「フジサンケイビジネスアイ」