株式会社 繋ぐコンサルタントオフィス 代表取締役 松本 恵
高齢者に寄り添い、人生を心置きなく生ききるサポートに徹する

「心置きなく生ききる人生を送ってほしい」。こんな思いから立ち上がった「繋ぐコンサルタントオフィス」が、百人百様といわれる相続相談などに丁寧に対応できるネットワークづくりを進めている。人生の最後まで自分らしく生きるための準備から旅立ち(相続発生)まで寄り添うため「繋ぐグループ」として、相続相談の専門家集団「繋ぐ相続サロン」、家族のようなトータルサポートを手掛ける「一般社団法人繋ぐライクファミリーサポート」を相次ぎ設立した。代表取締役の松本恵氏はその狙いを「最初の相談からきちんとヒアリングし、生き様を思い出す『人生の棚卸し』により余生のプランを一緒につくるため」と話した。
- ――相続ビジネスに参入する企業は少なくない中、差別化戦略は
- 終活・相続ビジネスは今や、競争が激しいレッドオーシャン。その手伝いは必要だが、「死に支度」のイメージが強い。私たちは「心置きなく生ききる人生」を送るためのサービスを提供する。つまり終活により財産相続を心配する前に、自らが生ききることに向き合う準備を一緒に行う。そのために介護・福祉など生きる準備に必要な専門家を集めた。相続にまつわることなら何でも気軽に、悩むことなく相談できるパートナーだ。顧客目線なのでオンリーワンになれる。
- ――そのためにグループ化を進めているということか
- 繋ぐ相続サロンは現在、全国38か所にフランチャイズ展開している。繋ぐコンサルタントオフィスが運営する専門家育成塾の卒業生(約80人)から、私が厳選して声がけしたメンバー(38人)がサロンに入る。顧客から「松本さんがいなくなったら誰に相談すればいいの?」といわれ、仲間づくりに乗り出した。フランチャイズ展開ビジネスというより、仲間が集うプラットフォームだ。財産に着目した相談は行わず、どう生きていくかを掘り起こして導く。サロンに入っても労力がかかり、コスパがよくない。丁寧に話を聞き適切にアドバイスすることを心掛けているからで、だからブルーオーシャンになれる。
- ――それだけ松本代表の「眼鏡にかなう」のは難しいといえる
- 家族とのかかわりを聞き出すヒアリング能力を求める。財産のことは聞かない。例えば、相談者が「子供と疎遠になっている」と話しても、「子供のころはかわいかったでしょ」と聞くと、「かわいいときもあった。いいところもあった」と思い出し「育て方が悪かった」と反省。つまらないことでボタンの掛け違いがあったと気づく。どんな問題があっても、専門家の視点で質問を投げかけて隠れている問題を徹底的に探し出すことを大切にしている。相談者が抱えている問題点が明確になり、生きやすい未来を見ることができるようになる。旅立つ親は「ありがとう」を残し、見送る子供も「ありがとう」と感謝を贈る。そんなサポートを提供していきたい。
- ――一方の繋ぐライクファミリーサポートは
- シニア世代のおひとり様や、子供がいなかったり、子供がいても頼れなかったりする人たちの身元保証・身元引受サービスを提供している。ライクファミリー、すなわち「家族のような」にこだわって、家族のように寄り添う。入院時に子供に代わって手続きをして、バッグを持って一緒に行く。退院時も一緒で、その後の見守りや財産管理サポート、旅立ち、片付けも引き受ける。拠点は神戸や東京のほか、山形、愛媛の4か所にあり、サロンと合わせて早期に全国展開したい。
- ――一人暮らしの高齢者は増えており、面倒を見てほしい人は少なくない
- 生きる準備のノートとして「繋ぐノート」を用意した。万が一の緊急事態に備えて救急救命のために必要な情報まとめたもので、サロンのメンバーで元救急救命士でもある専門家が発案し作成に携わった。持病が分かるような記録や、日ごろから飲んでいる薬の種類や保管場所などを書いてもらっている。ノートを玄関先など目につきやすい場所に置いておくことで命を救うために必要な情報が、必要なときに必要な人へ確実に伝えられる。高齢者が一人で突然、部屋で具合が悪くなったときに1本目の電話をだれにするか、つまり、いざというとき頼める人を決めておく必要もある。
- ――誰もが人生の最後まで自分らしく生きたいと思う。そのためのサポートも重要だ
- 厚生労働省が推進するものにACP(人生会議)というものがある。人生の最後をどう生きるかを話し合う対話で、すべての人に必要な準備として社会全体への普及と担い手の育成が求められている。厚労省は医師や看護師、ケアマネジャーなどを想定するが、忙しいため担い手として活動するのは難しい。そこで繋ぐライクファミリーサポートは人生会議をリードしていけるよう、5月に日本で初めてとなる民間資格「繋ぐノートサポートアドバイザー」を創設した。サロンメンバー38人のうち30人を認定講師とし、対面での受講で1日完結型(7時間、受講費用5万5000円)だ。対象者は保険業や福祉従事者、士業などを考えている。
- ――グループが掲げる「繋ぐ」とは何か
- 3つのコンセプトを大切にしている。「命を繋ぐ」「誰かへつなぐ」「未来へつなぐ」。それは財産でもあるが、もう一つの大切なものとして「生きざま」を伝える。その人の物語を繋ぐ語り部の役割を担う。旅立ってからメモを渡すと「もっと早く親と向き合っていればよかった」との思いが募り、「ありがとう」と心底いえるようになる。そんなサポートを提供していきたい。
松本恵(まつもと めぐみ)
三井住友銀行・三菱信託銀行・野村證券・メットライフ生命にて約20年にわたり金融の最前線で活動。
現在は、全国組織「繋ぐ相続サロン®」の代表として、“生きる準備”に寄り添う相続支援の普及を推進。
財産着目ではなく、人生の想いを繋ぐ「生きる準備からの相続」を重視した独自の支援スタイルを確立。
厚労省も掲げるACP(人生会議)にも呼応し、新資格「繋ぐノートサポートアドバイザー」創設など、保険・福祉・士業を巻き込んだブルーオーシャン戦略を展開中。