東京都心部のオフィスビル市場は、空室率が2%台で推移するなど堅調。好業績を背景にした企業の移転・拡張需要などが、市況を支えている。さらに、同じ空間を複数の利用者が共有するシェアオフィスの台頭で、市場基盤は一段と強固になりつつある。
指紋決済サービスなど生体情報を活用した製品を開発するベンチャー、Liquid(リキッド)は、三菱地所などが大手町ビル(東京都千代田区)で運営するシェアオフィス「FINOLAB(フィノラボ)」に本社を構える。
フィノラボには創業初期のベンチャーで、金融とITを融合したサービスを開発するフィンテック系企業45社が会員として名を連ねる。専門家による技術提供や大手企業の支援が行われ、リキッドは人脈を活用して業績を急拡大。昨年初めは数人だった社員数も60人体制となり、フィノラボ内の事務所スペースを大幅に増やした。同様に成長を遂げる会員企業も少なくない。不動産サービス大手、ジョーンズラングラサールの谷口学・リサーチ事業部アシスタントマネージャーは「シェアオフィスの利点は新しい産業の誕生につながること。結果として新たな雇用が生まれ空室率の低下につながる」と指摘する。
一方、三井不動産などが首都圏ターミナル駅周辺に開設するシェアオフィスは、郊外居住者の仕事場としての役割も果たす。シェアオフィスの広がりで首都圏商業地では2%以上上昇したエリアの拡大が顕著になっている。
「フジサンケイビジネスアイ」