二代目社長として新しい取り組みにも挑戦したいと語る市川慎次郎氏
横引シャッター(東京都足立区)は、駅の売店などで見かける横に引くシャッターの専門メーカー。同社の二代目社長である市川慎次郎氏に今年に入り始めた新しい社内の取り組みや今後の展望について聞いた。
――創業のきっかけは
1970年に先代の社長、市川文胤が「中央シャッター」を創業し、上下シャッターの修理やメンテナンスをメインで手掛けながら、大手他社の横引きシャッターの修理を請け負っていました。当時の横引きシャッターは動きや使用勝手が悪く、当社にはそれまでの修理業務で蓄積した技術とノウハウがあったので、他社ができないのであれば、独自で動きのよい横引きシャッターを作ろうと、先代が今の当社製品の原型となる、上吊式の横引きシャッターを開発したのが始まりです。しかし、当時は町工場の一修理会社から大手企業がシャッターを買ってくれることはなく、それならば、〝特殊シャッター専門会社〟を作ろうということで1986年に「横引シャッター」を設立しました。
――新しく取り組んでいることは
ひとつは「先代の証明」です。現在いる40名の社員のうち、先代のことを知っているのは全体の約半分で、その社員たちも今の年齢を考えると、多くの者は10~20年先には会社を去っていきます。先代のことを知らない中堅・若手社員を含め、これから皆で力を合わせて会社を発展させていくためにも、今、創業者の遺志を明確にしておく必要があると考えました。
日本のごく一部の会社しかなれていない無借金会社になり、社員が家族から「お父さん、会社に行くのが楽しそうだね」と言われるような、世間が憧れる会社になることで、先代との約束を果たし、先代の教えが正しかったことを証明し、その遺志を社員全員で引き継いでいきたいと思っています。
もうひとつの取り組みとして「山賊から武士へ」というテーマを掲げています。昔から「衣食足りて礼節を知る」と言いますが、当社は経営状況が悪い時期が長かったため、「衣食が足りていないのだから礼節なんか知らない」、「腕はあるけど品がない」山賊だったと感じています。そして、やっと衣食が足りてきたので、これからは礼節を覚える段階だと思っています。「腕もあるし品もある」武士になっていこうということです。そのためにも、身なり、挨拶、仕事の準備、段取り、片付け、そういった細かい部分をひとつずつ見直して、自分軸だけでなく他人軸で考えて改善をしていきます。
――技能実習生を受け入れている
近い将来、当社でも外国人の雇用が必要になる可能性があります。そのときのためにも、新しいスキーム、器づくりを今のうちから準備しておく必要があると考え、去年の8月からベトナム人の技能実習生を2名受け入れています。技能だけでなく語学を習得すれば彼らの将来に役に立つと考え、毎週月曜日の午前中は日本語学校に通わせています。当社では国籍に関わらず、他の社員と同様に扱いますので、努力した分は給与に反映させます。二人の実習生もすでに昇給しており、組合の方も驚いていました。今後法改正されて日本で就労ビザが取れるようになるのであれば、少しでも長く当社で働いてほしいと考えています。
――将来の展望は
数値目標としては、今の人数で現在3億の売り上げを5億まで引き上げます。よく他の経営者から、「社長はもっと大きな目標を掲げるべきだ」とご指摘を受けますが、まずは近い目標を設定し、それを達成したあとに自信をもって新しいステージに進みたいと考えています。先代の遺志を踏襲しつつ、業界内の連携など新しいことにも挑戦していきます。「会社は社員のもの」という気持ちを常に忘れずに、中小企業だからこそできる〝身の丈に合った〟経営改革を推進していきます。
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